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「そう言えばイリーナ嬢はアンドレ様にご執心でしたよね。今日はいるのがばれなくてよかったですね」
「そうだったか?金髪の女は多いからな……どれがイリーナ=ワルイナか分からん」
くはっ!何そのモテ男発言!鳥肌立ったわ!
「まぁ社交界で会う時の彼女は、猫を被っていたのか雰囲気が全然違いましたもんね。
分かりやすく高位貴族の嫡男達に愛想を振り撒いて、俺なんて視界にも入らないような扱いでした」
何その分かりやすすぎるごますりは……てか貴族令嬢って、もっとこう感情を隠して仮面を被るもんじゃないの?
「まぁ、高位貴族でしたらそう言う場面もありますが、あそこの本に書いてあるやつほど酷くはないですよ?この国は結構感情に素直な女性が多いと思います」
顔に出ていたようでハンスが分かりやすく説明してくれた。ってあそこの本を見たのね!?
実は最近悪役令嬢物や異世界転移物が面白くて、コミックや小説をパントリーの漫画スペースに一緒に並べていたのだ……恥ずかしい!
「そ、そう言えばシアタールームの横らへんにバスケの練習スペース作ったらどうかな?って思ってたんだ。
ほら、公園?かどこか外で勝負するシーンあったでしょ?あんな感じ」
「いいですね~、麻衣様私にも出来そうなスポーツとかありませんか?」
喜んでいたアンドレとライアンだったが、ハンスの言葉に気まずそうに黙ってしまった。
「車椅子バスケとかもあるけど……義足つければ一緒に出来ないかな~?まぁ左手使えないとパスとかキツいかな?」
「左手はそえるだけ……」ぼそっ
うん、ライアンそうだね。でもそれシュートの話ね。
「そのギソクとやらは何なんだ?」
「ん~……この本に詳しい仕組みとか載ってるかな?……実物を目の前で見たことないからよく分かんないんだけど、こんな感じだよ。
スポーツ用もあって、上手に走ったりして凄いんだよ!ハンスは膝はあるみたいだし、そんなに作るの難しくなさそうだけど……アンドレ様なら作れるんじゃない?」
あ、そう言えば夕方からうっかりアンドレにかろうじて使ってた敬語が抜けちゃってる……まあ、本人も気にしてないみたいだしいっか。
アンドレとハンスは食い入るように本を読んでいる。てか2人の頭がくっついてる……やっぱりこの2人……BLの本って買えるかな?図書館にこっそりコーナーを作っても良さそう……くふふ
2階のすみに置こう。男性には分からないように、手前に悪役令嬢物や異世界転移物を置いて、奥に少しだけ……好きな人は大好きな世界よね~。
まぁ、私は男女の恋愛の方が好きだから読んだことないんだけどね。
2人は義足の研究をするためにアンドレの家に帰っていった。研究材料になればと思って、めぼしい本とパラリンピックのDVDを渡した。
さ~て、今日は何のコスプレにしようかな~。くふふ
「うい~、おはよ~。お腹すいた~」
風が心地いいからと開けていたリビングの窓からアンドレが入ってきた……いや、普通に怖いんですけど!
てか朝御飯は自分の家で食べてよね!
「麻衣様すみません……アンドレ様は俺のために徹夜で義足の研究をしてくれて……
あのスポーツをしている人達は凄かったです!バスケは出来ないと諦めていましたけど、諦める必要など無いとアンドレ様が言ってくれて……うう、アンドレ様と一緒にバスケをすると言う夢が出来ました!」
お、おおう……熱いな。あ、もしかして修造も出てた?
「そうだね、夢があるのはいいことだね!まずは義足を作って貰って、杖無しで歩けるようになるのが先かな?頑張ってね。
あ、これも空いてる時間にちょこちょこやってみて。握力のリハビリのやつ」
「ありがとうございます!少しでも握力が戻るよう頑張ります!」
相変わらず手抜きな朝食を終え、建設現場へ向かう。今日もたくさんの手伝いが来ていた。
そして今日も面接希望のカレンちゃんのママ友が2人来ていた。1人はカレンちゃんの旦那さんのお兄さんの奥さんで、衣裳部屋担当だったらしい。
もう1人はヘアメイク担当で、2人ともメイドさんじゃなくて侍女さんだったらしい。
そうですかって言ってみたけど、実際何が違うのかよく分からない……まぁいいか。
てことで2人は写真屋さんだね!くふふ、これであと男爵領の3人が来てくれればとりあえず人数は揃う感じかな。
「アンドレ様、勇者様、麻衣様、おはようございます。社宅ですが、陛下よりここから勇者様の家までの土地は、新設する道から両サイド50mは好きなように使っていいとの事でした。
昨晩イリーナ=ワルイナと母親、仲間の男達を捕らえ、囚われていた未亡人と使用人夫婦を救出出来た事への褒美だそうです。
麻衣様の懸念した通り母子でタチの悪い男達を連れて、国外の大商人の現地妻だった未亡人の家に押し掛け、彼女を屋根裏に閉じ込めて家を乗っ取っていました。
使用人の中年夫婦がいたのですが、誰かに話したり逃げ出せば未亡人の命は無いと脅していたようです。
治安のいい場所で安全なお国柄のせいか、護衛などはおらず使用人もその2人だけでした。
未亡人は本妻ではなくこの国に大商人が来ている間だけの妻でしたが、家を与えられ、大商人が亡くなった際も遺産を金貨500枚貰ったそうです。
使用人夫婦と3人で慎ましく暮らしていたようですが、おそらくイリーナ達は男爵家にいる時にでも彼女の事を知ったのでしょう……
未亡人は閉じ込められて衰弱してはいましたが、命に別状はありません。使用人夫婦の妻の方は、痛め付けると家事が出来なくなるからか、疲労困憊ではありましたが無事でした。
夫の方は……未亡人に金を出させるためか、妻に言うことを聞かせるためか、ストレス発散のためか……日々暴行を受けていたようです……3人とも王宮で保護され、医務室の方で王宮医師達が全力で治療をしているところです」
……何とか命が助かりますように……偶然とは言え、事件が明るみに出て本当よかった……




