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 そのままの勢いで何やら紙にサインをさせられ、結婚が成立した。あ、もちろん中身は読んだよ!普通に結婚することを神に誓いますって感じの内容だった。

 あと、番だから絶対浮気されることはないんだって。それだけでもう十分な気がする。

 何だかんだで出会いがあっても、また浮気されるんじゃないかと思ってちょっぴり恋愛恐怖症気味になってたんだよね。

 それにアラフォーのぽっちゃりおばちゃんなんて、需要がないしね~と色々諦めていた。色々諦めるとどんどんおばちゃん化して、あっという間にLLサイズ……

 

 となり同士でソファに座ってガッチリ腰を抱かれてしまって、動きにくいし恥ずかしい……

 ライアンはみんなに祝福されて満面の笑みでワンコみたいでちょっと可愛い。

 とりあえずマーリンが言うには、ライアンの狂化の傾向は綺麗さっぱり無くなったらしい!よかったよかった。


「そう言えば、麻衣さんは何属性なのかしら?」


 ふと思い出したようにアリアさんに問いかけられた。属性とはあれかな?魔法属性ってやつの事かな?


「えっと、魔法属性のことでしたら、無しって書いてあります」


「え……?あ、あらあら……おかしいわね……魔力はなんて書いてあるののかしら?」


「……無しって書いてあります」


 みんなが固まってしまった。え?何かおかしいの?

 マーリンに色々調べて貰ったが、どうやら私に魔力は全く無いらしい。そりゃそうだ、地球に魔法は存在しないんだから。

 ただ困ったことに、この世界に魔力が全く存在しない人間はいないそうだ。

 灯りをつけるのも水を出すのも全て微弱だが魔力を流す必要があるらしく、そのどれも私には反応しなかった。


 実際何が出来ないのかよく分からず、とりあえずまた明日ゆっくり調べようと解散となり、今夜泊まる部屋に案内された。

 そこで魔力が無いことで様々な現実を叩きつけられた。


 まずトイレが流せないのだ。ピッと魔石に触れると流れるらしいのだが全く反応せず、結局メイドさんに流して貰い、死ぬほど恥ずかしかった。

 次にお風呂だ。もちろんシャワーのお湯が出ず、メイドさんに出して貰い、上がるときに止めて貰った……

 歯磨きをしようと洗面台に行くも、またメイドさんに水を出して貰うことになった。

 起きていたら何かしら手を貸して貰わないといけないので、早々に寝ることにした。

 

 眠れない……今朝まで当たり前に家族と一緒にいたのに、もう会えないと思うとたまらなく寂しく感じた。

 水でも飲もうか……あ、でも夜中にトイレに行きたくなるかも。もしトイレに行っても自分じゃ流せない……

 う、ううう……お風呂も1人じゃ入れない、トイレも1人じゃ行けない……この先ずっと誰かの手を借りなきゃトイレさえ行けないの?

 もう嫌……こんな世界もう嫌!帰りたいよ……たとえ若返って痩せてお肌つるつるになったって、トイレさえ1人で行けないんじゃ全然嬉しくないよ。

 寂しい……帰りたい……


「麻衣、大丈夫か?」


 突然ドアが開いてライアンが入ってきた。麻衣が泣いていたからか、ベッドに駆け寄り優しく抱き締めてくれた。

 突然抱き締められて驚いたが、何も言わずに子供をあやすように背中を撫でられているうちに、麻衣はポツリポツリと話し始めた。


「家族にもう二度と会えないなんて……寂しい……いつも相談に乗ってくれた親友にも会えないし……可愛い甥っ子姪っ子にも……

 向こうではさ、1人の人間として当たり前に何不自由無く生活してたの……なのにこっちじゃ魔力が無いからトイレも1人じゃ行けない。

 3歳の甥っ子だって1人でトイレ行ってたのに……ぅぅぅ

 眠れないからお水飲もうかなと思っても、夜中トイレに行っても流せないと思うと飲めない……

 この先ずっと誰かにトイレを流して貰わなきゃ生活できないなんて……耐えられない!」


「大丈夫だ……俺がずっと一緒にいるから」


「嫌よ!同性でも辛いのに、男性にトイレを流して貰うなんて……絶対嫌!最悪小さい方はいいけど、大きい方なんて絶対無理!ぅぅぅ、トイレ行きたくなるからごはん食べるのも怖い」


「だ、大丈夫だ!俺は魔力が強いからトイレに入らなくてもドアの外から水が流せる!だから気にするな」


「ううう、ドアの外から流せるのはありがたいけど、トイレ行ったのバレバレなのが辛い~!

 それに写真も無くなったの!携帯にたくさん入ってたはずの家族や親友や甥っ子姪っ子の写真が1枚も無いの…ぅっうぅぅ」


 そう、携帯の画面に通販以外のアイコンが無いと言うことは、どんなにいじくり回しても撮ったはずの写真を見ることが出来なかったのだ。


「見てよこれ!通販の1個しか……1個しか無いの!他の機能は何一つ出てこないの!時計でさえも!」


「お、落ち着け。そもそもこの通販とは何なんだ?この魔道具はどうやって使うんだ?」


 ライアンは麻衣が携帯を振り回して投げようとしていた手を捕まえて、不思議そうに携帯の画面を覗いた。


「ひっく……これ?携帯って言うの……そう言えばスキル通販ってどうやって使うんだろう?とりあえず通販見てみるね」


 そう言って麻衣はベッドに座りなおし、通販のアイコンをタップしてみた。


「おお、見慣れた通販サイト……ん?左上にショップリストって出てる……ふおっ!ネットスーパーにコンビニにマク○ナルド、ファミレスにケン○ッキーにパン屋さんにケーキ屋さんまで……最高!

 どうやって買うの?右上の0円ってのが今入ってる金額ってことかな?どうやって増やすの?

 ほぇっ、なんか出てきた!」


 0円と書いてある所をタップすると、前回利用料金ー、残金0円、一番下にチャージと出てきたのでチャージをタップすると、画面からホログラムの四角い箱が出てきた。


「なっ、これはどんな魔法なんだ?」


 ライアンが驚いてホログラムの箱をつかもうとするが、すかっすかっと掴めずに空を切った。


「え?どう言うこと?チャージって言うからにはここにお金を置けってことかな?でも掴めないってことは落ちちゃうんじゃない?」


「試しに置いてみよう。アイテムボックス……このくらいでいいか?」


 そう言って、ライアンがどこからともなく金色のコインを10枚出して渡してきた。


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