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「け、結婚ですか!?いえ、私、結婚はもう……」
こりごりだとあわてて手を振って全身で拒否してしまった。
「マーリン、そろそろ私達も話していいかしら?えっと、とりあえず座りましょう?
お名前を聞いてもいいかしら?私はアリアよ」
最初に部屋にいた女性がおっとりした笑顔で話しかけてきた。おっとりしているが、とても気品があってオーラが凄い。
「あ、はじめまして……麻衣です」
フルネームで言うべきか悩んで、結局名前だけを言うことにした。
アリアさんも名前だけだったから、これでいいだろう。もしかしたらフルネームを知られることで、何かの魔法契約を無理矢理結ばれないとも限らないしね。
「麻衣さんね、見た目と一緒で名前も可愛らしいわね。ふふふ
突然違う世界に連れてきてしまってごめんなさいね……色々混乱していると思うけど、この世界を救ってほしいの」
なるほど、そっち系ね。聖女として勇者と共に魔王を倒すとかそんなお決まりパターンでしょ?
「世界を救うとは、勇者と共に魔王を倒すとかそう言う事でしょうか?」
何もかもお見通しですよ~とどや感満載で答えてみた。
「ああ、違うの違うの。魔王は80年前に勇者と共に私達5人と各国の騎士団で討伐したから安心してちょうだい」
「うえ!?80年前?……つかぬことをお聞きしますが、この世界の平均寿命はどのくらいなんでしょうか?」
そしてどや感満載で答えたのに、全く違ってちょっと恥ずかしいぞ。
「種族にもよるけど、だいたい200歳位よ。勇者は竜の血を引く一族だから、500歳くらいと聞いたわ」
「ご、500歳!?……は~……ちょっと色々違いすぎてビックリです……ちなみに私の世界では70~80歳だったと思います」
「まぁ、そんなに短いのね!?ちなみに今ステータス上では何歳になってるのかしら?」
「えっと、19歳です」
「まあ!では成人してるのね!安心したわ~!これですぐにでも結婚できるわね!」
アリアさんはよかったよかったとおじちゃんズと一緒にはしゃいでいた。
「えっと~……いきなり結婚と言われましても……そもそも、わざわざ違う世界から連れてくるほどですか?」
「あら、みっともない姿をお見せしてごめんなさいね。さっき勇者は竜の血を引く一族と言ったと思うんだけど、それがちょっと問題なのよ……」
「勇者は特に竜の血が濃いようでな、番以外を受け付けぬのだ。番を探し求めて400年……遂に狂化の傾向が見られてな……
このまま狂化が進めば魔王とは比べ物になら無いくらい強い闇の存在になりそうなのだ。
そこで一緒に魔王討伐をした我々がまた集まり、今度は勇者の番を探したと言うわけだ。
何故か番は違う世界に産まれ、しかも幸せそうに暮らしていると分かったから、今度は2年かけて本体に影響しない部分をこちらに呼び寄せる研究をしていたのだ。
成功して本当によかった……麻衣殿には急な頼みで戸惑われると思うが、なんとか勇者を受け入れて狂化を止めていただきたい!
もちろん、この世界で何不自由無く暮らせるように、欲しいものは何でも揃えよう!
この世界のために……何とぞ……何とぞ……」
おじちゃんズとアリアさん、騎士ズや弟子ズ、メイドさん達もみんなでいっせいに土下座されてしまった。
「ちょっ!ちょっとまだ混乱していて整理できてませんが、頭を上げてください!
とりあえず勇者と結婚すれば世界は救われるんですね?
私、男性は浮気に暴力や借金、賭け事や悪事に手を染めるタイプで無ければそんなにこだわりはありませんので大丈夫だと思います!
生娘でも無いし、何人かとお付き合いの経験も結婚の経験もあるんで、まぁ大丈夫かな?とりあえず会えますか?」
「おお、おお、なんと慈悲深い……さっそく誰か勇者を連れて参れ」
皆さん涙を流して喜んでくれた。おっさんズは鼻水を拭いてください。
それにしても、急に会ったことも無い他人と結婚してくれと言われて勢いで受け入れてしまった……
さすがNOとは言えない日本人!だって世界を救ってくれってみんなに土下座されて断れる?私は無理だったよ……
まあ、普通にフリーの独身だしね。彼氏もいないし、いい人がいたら付き合って結婚するのも普通の流れなのかな……。
貴族だって政略結婚するし、それと全く変わらない気分と言うのが正しいのかな?いい人だといいな……
「おい、急に呼び出して無理矢理風呂に入れてどう言うつもり……」
勢いよく開いた扉から、アッシュグレーの髪のワイルド系イケメンがおっさんズに文句を言いながら入ってきた。
濡れた髪におざなりに下の方だけ閉めたシャツの胸元から覗く胸筋……色気が半端無い!鼻血出そう!いいもの見れたわ~、うふふ
せっかくなので目の保養に上から下までなめ回すように見ていたら、凄い勢いで抱き締められた。
「番……俺の番……うっうう、やっと会えた……」
……抱き締められたまま肩に顔を埋めて泣き出したワイルド系イケメンを、どうしたらいいか分からずに部屋の中をキョロキョロ見回して、目が合ったアリアさんに視線で助けを求めてみた。
「ほらほらライアン、麻衣さんが困っているわ。とりあえずソファに座りなさい。結婚誓約書も書かなきゃなんだから、ちょっと離れなさい」
「結婚!そうだな、急いで結婚しよう!」
おうふ、至近距離のキラキライケメン、破壊力半端無い……結婚?はい、喜んで!