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「わ、分かりたく無いけど元の世界には全く問題が無いと言うことは分かりました……それで、私は何故ここに呼ばれたのですか?」
夢と思うほど可愛げのある性格でもない私は、考えても何も分からない状況で投げやりになるしかなかった。
「おお、もっと説明が大変かと思いましたが、すんなり受け入れていただけたようでよかったです!
とりあえずここではなんですので、応接間にお茶の準備がございます。そちらへ移動して詳しい話しはいたしましょう。
おい、マーリン大丈夫か?力を使いすぎたようだな……お主は少し休んでおれ」
マーリンと呼ばれた長い髭の魔法使いみたいな男性は、ガタイのいい熊みたいなおじちゃんに支えられてなんとか立っていると言う有り様だった。
「いや……髪と贅肉を媒体に本体をコピーしたが、まだ何があるか分からん。何かあった時のために近くに待機する。
外にいる弟子も一緒に連れていくから心配するな」
「そうか……もう若く無いのだから
無理するなよ。
では、行きましょうか」
そうして部屋を出ると腰に剣を下げた騎士のような人達が10人くらいと、魔法使いっぽい服装の人が5人頭を下げていた。
ああ、うん、間違い無く異世界だね。剣と魔法のファンタジーって感じかな?普通もっと若い子を召喚すると思うんだけどな~……
案内されたのは日当たりのいい、アンティークな雰囲気でいかにも高級そうな家具で揃えられた部屋だった。
座るよう促されたが、こんな高級そうなソファに安物のガウチョで座っていいんだろうか……しかも裸足にサンダル……
歩いている時に思ったが、LLサイズの服が大きくなったらしく、ガウチョがずり落ちそうで非常に困った。
ずっとカットソーの上からウエスト部分を握って歩いたため、カットソーもしわくちゃだ。
部屋の雰囲気に全く合わず、1人みすぼらしく浮いていていたたまれない……
「どうされました?具合でも悪いのですか?」
いつまでも座らずにいたせいで、髭の魔法使いに要らぬ心配をかけてしまったようだ。
「大丈夫です!何だか家具も見知ったものと全然違って……当たり前に騎士様やメイドさんがいる光景に圧倒されていました。
そして、何だか服が大きくなったようで……髪も伸びていますし、自分が自分じゃなくなった気がして……」
「申し訳無い……媒体が少なかったせいで、完全に本体をコピーすることが出来なかったのです。
年齢もずいぶん若くなってしまったように見えます……おそらく成人前でしょうな……おい、誰か鏡を出してくれ」
後ろに控えていたお弟子さんの一人らしい……ローブで隠れて年齢性別不詳の魔法使いが、私の前に大きな鏡を魔法で出した。
「ほわっっ!え?え?これ誰ー!?」
鏡に写ったのは、どう見ても元のおばちゃんとは全く別の高校生位の少女だった。
まてまてまてまて!いや、よく見れば顔は私か?この目に鼻に口……うん、私だ。
でも細い!自慢じゃないが、中1の途中からぶくぶく太ってずっとぽっちゃりキャラだったんだぞ!この位の年齢でこの細さは初めて見た!
しかも学生時代はずっとショートかボブだったのに……日本人形もビックリな艶々の黒髪が腰まであるし……
若い頃の自分って訳でもなさそうだけど、これはいったい……
「驚かれるのも無理ありませんな……なんせずいぶん若くおなりですもんな」
「いや、それもですが、若い頃もこんなに細くなかったので驚いて……髪もこんなに長くなかったし……」
「ああ、それは媒体が少なかったので少々細くなってしまったのです。髪はおそらく媒体が髪だったので長くなったのではないかと思われます。
その……あちらの世界では、細くない方が美しいのですか?」
申し訳なさそうに髭の魔法使いに問いかけられた。
「え……?いえ、細い方が……そうですね、細い方が綺麗なので問題無いですね!
若返ってお肌もピチピチだし、むしろラッキー!」
「おお、そうですか!それはよかったです!年などはステータスと言うと目の前に浮かびますので、そちらでご覧になれると思います。
オープンと付けなければ、自分以外見えませんので。どうぞお試しください」
「……ステータス」
目の前に透明なスクリーンが出てきた。
田中 麻衣 勇者の番
【種族】 人間
【性別】 女
【年齢】 19(精神年齢37)
【魔力】 無し
【魔法属性】 無し
【ユニークスキル】通販
「ん……?勇者の番!?」
「はい……実はお呼びした理由は、勇者と結婚していただきたいからなのです」
「は……?」