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24 奥の手

 青と薄緑の二人の少年──レークスとケーニッヒの前で、モルゴーンは木剣を構えていた。


「──エレインがあっちなら俺はこっちだな」

「……正直助かった」

「エレインさんはまだ少し……いやかなり怖いからな……」

「よそ見してる場合か?」

「──っ!」


 岩を放ったモルゴーンは、エレインに引けを取らぬほどの速度で移動する。魔法を避けたレークスに木剣を突き出す。


「──ふっ!」


 木剣を斜めにして、レークスは木剣を受け流した。

 体制を立て直すために後ろへ下がるモルゴーンに、すかさずケーニッヒが木剣での追撃。

 ──モルゴーンもレークスと同様に、真っ直ぐ出された木剣の威力を横にずらす。


「ふむ……さすがに何度も見られてるからな。剣技を見破ったか」

「剣技は剣技じゃなきゃ返せないですからね」


 剣を受けるのではなく流したり、相手の剣を絡め落とす技など、三年の間にレークスは剣技を独学で習得していた。


「──センスはずば抜けているな」

「それなら俺も使えるぞ!」

「……二人ともか」

「おいケーニッヒ! なに手の内明かしてんだよ!」

「別にそれぐらいいいじゃねぇか」


 ケーニッヒが真剣な表情で木剣を構え、レークスも同様に前を向く。

 そんな二人を見てモルゴーンは笑った。


「──安心したよ。俺も全力でいかせてもらう」


 モルゴーンが空に手をかざすと、上空から無数の岩が降り注ぐ。

 〈岩降ロックレイン〉によってレークスとケーニッヒは周りを囲まれ、見動きが取れなくなった。

 上が閉ざさせる前に脱出しようと、ケーニッヒはレークスを抱えて足元にてのひらを向ける。


「〈突風ストーム〉」


 ビュンと空中まで飛んだ二人に、モルゴーンが岩の弾をドンドンと撃つ。


「──うおっ!」

「あっぶねぇ……」

「……ふむ……よく避けたな」


 着地した二人へ砂の弾が向かう。横に飛んで躱すが、間髪入れずに〈砂降サンドレイン〉が発動される。

 避けきれないと判断したケーニッヒは、突風で砂を吹き飛ばそうと試みる。

 しかし量が多すぎるため飛ばしきれず、砂を被り二人共々視界を奪われた。

 モルゴーンは容赦することなく岩を放つ。


「──がはっ!」

「──ぐふっ!」


 砂によって視界を奪われた上、身動きもしづらくなっている二人に、高速で飛んでくる岩を回避などできなかった。


「……さすがに岩が相手じゃ剣技も意味をなさないからな」


 ぐるぐると目を回して倒れている二人の頭を、モルゴーンが木剣で叩く。

 ──コンッといい音を鳴らして、二人の意識は遠ざかった。




◇◆◇◆◇




 連撃を繰り出してくるエレイン相手に防戦一方だったグェネヴィアだが、雷を身にまとうことで速度を上げて食らいつく。


「なかなかやるじゃん」

「──ちっ……」

「私の動きについてくるとはさすが雷属性だね〜」


 ただの身体強化のみで木剣を振るうエレインに対し、グェネヴィアは雷属性の強化魔法で自らの反応速度を上げている。にも関わらずついていくのがやっとなのだ。


「じゃあ私も魔法使っちゃおっかな〜」

「──っ!」


 あえて先に宣言し、エレインは〈炎矢フレイムアロー〉を使う。

 炎の矢が当たる直前──グェネヴィアが呟くように詠唱する。


「〈雷速移動ライトニングムーブ〉」


 ──パリッと電気が走ると同時に、グェネヴィアの姿が消えた。


「──えっ」


 不意をつかれたエレインはグェネヴィアを見失う。次に移動する場所を予測し振り向く。

 だが現れたのは正面──今は背後だった。

 魔力を感知し後ろに来たと気付くエレインだが、すでに振り下ろされている木剣を防げないと判断し、自分の木剣を後ろに投げつける。

 すぐさま弾くグェネヴィアだが、立ち止まった一瞬の隙にエレインは前方に転がり込む。


「……まさかそんな奥の手があったとはね〜」

「──防がれた……」

「お礼にこっちも奥の手を見してあげる」


 初めて真剣な表情になったエレインが炎に包まれていく。〈炎化オーバーヒート〉で自らの体を炎と化した。

 刹那──首筋に強い衝撃を受けたグェネヴィアの意識は暗転する。

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