わおう、プレッシャーがすごい。
資料とにらめっこしながらの執筆でした。
ルーミアってどんなしゃべり方なの?
チルノが公式で⑨ってホントなの?
小3ってどのあたりをやってるの?
等々…
「あなたは食べてもいい人間さんなのかー?」
「えっ?」
箒を動かしていると、急に声をかけられた。
声のする方に顔を向けると黒い洋服に金髪、赤目の少女が両手を左右に伸ばしていた。
頭には赤いリボンが乗っている。
ルーミア、だったかな?
そういう質問をしてくることは知っていたが実際に聞くと驚くというかなんというか…
「ルーミア、おはよう。」
俺が返事をする前に、妹紅さんと話を終えたのか部屋から出てきた慧音さんがルーミアに挨拶した。
「おはようなのだー。」
ルーミアも挨拶を返す。
「おっ! ルーミアか。おはよう。」
慧音さんの部屋から出てきた妹紅さんもルーミアに気づき挨拶をする。
「妹紅さんもおはようなのだー。」
「それじゃ、私はこれで失礼しようかな。」
妹紅さんはそう言って手を振ると、寺子屋を出て行った。
「先生。この人は誰なのだ?」
「猫辰というこの寺子屋の副担任だ。」
「副担任?」
ルーミアが首を傾げる。
そりゃそうだろう。
慧音さん1人でやってきたのにいきなり2人になるんだ。
簡単に理解するのは難しいだろう。
「よろしくなのだー。副担任さん。」
「うーん。名前じゃないのか…」
「名前?」
「さっきも言ったけど『猫辰』っていうんだ。」
「よろしくなのだー猫辰先生。」
おおう。
昨日慧音さんに言った事を俺が言われることになるとは…
「う、うん…まぁいいか。お願いね、ルーミア。」
そういうと、俺はルーミアに手を差し出す。
あれ、でも俺の中のルーミアって、ずっと手を左右に伸ばしている感じだったが大丈夫か?
しかし、当の闇少女は普通に腕を前に出して俺の手を握った。
「また朝の挨拶で紹介するからそれまで自分の席でおとなしくしてなさい。」
それを聞くとルーミアは靴を脱いで畳に上がると長机まで歩いていき、そこに座った。
「そろそろ、ほかの子も登校してくる頃だろう。ルーミアは寺子屋の中では一番早いんだ。準備を手伝ってくれるか?」
「分かりました。」
そんなこんなで、授業の直前まで俺はバリバリと働かされることになった。
いや、教員の仕事って大変すぎやしませんか…
日本人の働き者ぶりがよく分かる。
俺が怠け者なのかね?
準備を終えると慧音さんが教壇に立った。
おぉ、それっぽい。
実際先生だけどね。
その間に生徒たちはみんな登校していたらしく、座席はほぼほぼ埋まっていた。
目立つとしたら、右の真ん中あたりにある席が2つ空席であることくらいか…
「おはようございます!」
『おはようございます!』
慧音さんの挨拶に生徒たちが続く。
平均年齢は小学校中学年くらいだろうか…
他の子たちはどうしているんだろうな。
そんなことを考えていると慧音さんの朝礼が始まった。
「今日は新しい先生を紹介したいと思おう。猫辰先生だ。」
あいえー?
俺、先生なの?
ちょいちょい、アシスタント程度かなと思いきやまさか先生とは…
「猫辰先生、挨拶を。」
こっちに話を振らないでぇ!
「え、えーっと。猫辰といいます。主に慧音先生やみんなのお手伝いをしていきます。よろしくお願いします。」
真っ白な頭の中で何とかそれだけをはじき出し、挨拶する。
『よろしくお願いします!』
お、おう。
よろしく…
この年代の子供とはあまり触れあったことがないからどう接したものか…
俺がこの年齢だった頃はとんでもないクソガキだったからな…
「では、これから算数の授業を始める。」
慧音さんがそんなことを言って教材を配り始める。
なるほど。
みんな持っているのはノートだけで教科書とかは慧音さんの方で管理しているのか。
まあ当然っちゃ当然か。
教科書配りを手伝いながらそんなことを考える。
「よし、始めようか。では、前回の復習から。」
そういって慧音さんは黒板に文字を書き始める。
60÷5=
そんな問題が黒板に書かれる。
みんな、ノートを必死でめくって割り算の単元について思い出そうとしている。
真面目だなぁ。
その時、寺子屋の扉がガラガラと騒がしく鳴り響いた。
「は~間に合った間に合った。」
「間に合ってないよ~遅刻だよ~」
ガヤガヤとやってきたのは氷の翼とthe・妖精の羽を持った2人組だ。
あぁ、どおりで何かが足りないと思ったら。
チルノと大妖精か。
「チルノ、大妖精、また遅刻か?」
「遅刻じゃないよ~だ! 時間が進むのが早すぎるだけだよ~だ!」
「チルノちゃんそれを遅刻っていうんだよ。」
なるほど、チルノの認識はほぼほぼ間違っていないらしい。
「放課後までに反省の原稿を10枚書いて提出しなさい! これで10日連続で遅刻だ!」
あはは…10日で済んでるのか。
「すいませんでした!」
大妖精は頭を下げると空いていた席にチルノを引きずっていく。
「こほん…では、復習を再開しよう。この問題が分かる奴はいるか?」
「はいはーい!」
手を上げたのはチルノだ。
怒られた事なんて気にも留めていないみたいだな。
「チルノ。」
「答えは、10だ!」
惜しい!
惜しいよ!
「外れだ。他に分かる奴は?」
「はい。」
手を上げたのは鳥の翼を持った子だ。
「ミスティア。」
「12です。」
「正解。」
そういうと慧音さんは=の横に「12」と付け加えた。
「割り算は大きい数を小さい数に分けると何になるのか、というのを求める問題だ。例えば…」
こんな風に授業は進んでいった。
およそ30分ほどで授業は終わった。
しかしチルノよ。
お主はわざと間違えているのか?
そうとしか思えないほど、惜しい回答が多かった。
ワザと⑨を演じているのか?
そして、3時間目。
俺に災難が降りかかった。
慧音さんに呼び出される。
「猫辰、次の授業は社会なんだがやってみないか?」
「えっ?」
「授業の補助を見てみたところお前は教えるのが上手そうじゃないか。」
「いやいや、そんなことないですよ。」
「ダメか?」
あぁぁぁぁぁ!
そんな上目遣いでこっちを見ないで!
ねこさんの心が痛いよ!
「…分かりました。」
結局なんやかんやで授業をすることになった。
「社会の単元は何でもいいんですか?」
「構わない。」
「分かりました。」
そして、3時間目の開始。
「今日は猫辰先生が授業を担当してくださる。しっかり話を聞くように。」
『はい!』
わおう、プレッシャーがすごい。
改めてどうしてこうなった…
こうして俺は、内心頭を抱えながら教壇に上がることとなった。