妖怪は炎によって駆逐させる。
なんやかんやで鬼たちは地底に撤退した。
焼け野原に俺達は立っている。
隣には正邪が。
「正邪…本当に来る気か?」
「私もあいつには借りがあるからね。倒す気でいるよ。」
「上々だな。でもあくまで幻想郷的には俺達は悪者だ。その汚名を被ろうってかい?」
「命あっての物種さ。生きてりゃいいことある。」
「さいでっか。」
「そういうこった。」
正邪は満面の笑みを俺に向けた。
なんかズルい。
「それ見ろ。博麗の巫女様のお越しだぞ。」
空を指さすと赤い点が急接近してきた。
博麗の巫女は地面に足を付けると俺をにらみつけた。
「よくもやってくれたわね。本当に、よくも…」
霊夢の目には凄まじい怒気が宿っていた。
「まあ、ちょっとした外の世界の恥を駆逐しようとしたらこうなってな。わりぃ。」
「里の人間たちの住処まで奪って! どうするつもりよ!」
「別に何も。」
霊夢が大幣を握りしめるのが分かった。
「…なら後悔させてあげる。博麗の巫女として!」
「へっ、抜かすじゃないの! 私ら二人相手に勝てるとでも?」
正邪が思いっきり悪い顔で訊く。
「ところがどっこい、これが一人じゃないんだな。」
後ろから声が聞こえた。
「私、参上!」
魔理沙が八卦炉片手に笑っていた。
「これで二対二だな。」
「そう来たかぁ…」
わざとらしく額に手を当てて驚いて見せる。
「白々しい演技を…ッ!」
霊夢さんの怒りのボルテージが上がっていくのが手に取るように分かる。
「さて、弾幕と拳闘。部類は違うがあんたらのルールにはまった方がいいか?」
「その必要は、ないぜ。」
魔理沙が八卦炉にエネルギーをため込み始めた。
「はぁ、しゃーないな。焼け野原からは何も生まれないぞ。」
「かつて人類は炎から生まれた。妖怪は炎によって駆逐させる。」
「なら、その日暮らしの俺達は精々華やかに鳴いてみるさ。」
俺は魔理沙に、正邪は霊夢に向かって同時に飛び出した。
えぐい量の星弾の網を何とか躱しながら接近する。
それも中央まで接近すれば弾幕はスッカスカだ。
思い切って接近すると不意に周りの弾幕が消えた。
「《魔符「ミルキーウェイ」》!」
再び展開される星の網。
唯一違うのはそこに星弾の川が出来たこと位だろうか。
それでもメッチャ鬼畜なんだけどね!
猫辰の鱗を出してごり押しているけどこのペースが続くと確実にピチュる。
俺はスカイフィッシュに変化した。
所謂UMRだけど細い体と恐ろしいその速度は接近するにはちょうどいい。
勢いあまって弾幕に突っ込まない事だけを気を付ければ、だけど。
今回は上手くいって魔理沙の目の前に姿を現すことに成功した。
「まずは一発。」
拳を振り上げたところで魔理沙が八卦炉を構えた。
「ッ!?」
「マスター…スパークッ!」
スペカ詠唱じゃなくてレーザー単体でそれを撃つのは正直予想だにしなかった。
慌ててレーザーを避ける。
魔理沙から距離を取ろうとした瞬間、背中に衝撃が走った。
まさか被弾した!?
後ろを振り返ると確かに星弾が辺りを漂っていた。
「知ってたか? スペルカードってのは自分でキャンセルしない限り消えないんだぜ?」
「だから弾幕『ごっこ』、か…」
「侮れないだろ?」
「盲点だな。」
俺はベルゼブブに化けると弾幕を食い荒らした。
「もっとも、発動するのなら食い尽くせばいいだけだがな。」
「んじゃ、次のスペルだ! 《魔符「スターダストレヴァリエ」》!」
魔法陣が展開されて弾幕がらせん状に放出される。
何とか隙間を縫って広いところに出る。
「かかったな! マスタースパークッ!」
また単体のレーザーが飛び出す。
何とか隙間を抜けようとするも常に動き続ける弾幕に隙間はない。
「なるほどねぇ…」
一本取られたと認めざるを得ないか。
俺は紫さんに化けると隙間に潜り込んだ。
そのまま魔理沙の後ろを取ってパンチを放つ。
「霊夢、任せたぜ!」
魔理沙は箒をぐるりと反転させると俺に蹴りを喰らわせた。
丁度正邪も吹っ飛ばされたのか空中で俺とすれ違いになる。
後ろから高速で札が飛んでくる。
「あの天邪鬼は歯ごたえが無かったわね。あなたは楽しませてくれる?」
霊夢さんがお札と大幣を構えながら訊く。
「愚問だな。遊んでたのはお互い様だろ?」
霊夢さんに向き直る体の一部を剣に変化させた。
円谷プロに出てきそうなマグマな怪人になってしまったがまあしょうがない。
ちなみに俺は初代と2番目なのに7なのが好きです。
「第二試合と行こうか。それとも第三試合かな?」
俺は霊夢に向かって飛び出した。




