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東方夢創伝  作者: 寝起きのねこ
やっぱり騒がしい平和な地底
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『旅の恥は搔き捨て』よ?

腕を振るうとルドはそれを剣一本で食い止めた。

「なんだ、伝説の猫辰君でもこの程度か。」

それには答えず多角から攻撃を仕掛ける。

現状では俺の方が優勢だ。

お世辞にもこいつの剣の扱いは上手とは言い難い。

何か武道を齧っているのか構えに限っては隙が無いが、ちょいとフェイント交えてやればすぐにそれもぼろが出る。

何か奇妙だな。

腕に関してはテンで素人だ。

団栗の背比べだが俺の方が一枚上。

それなのに一向にこいつはほかの手段に頼る気配がない。

何か使うとしたら能力だろうか。

だが時間がかかりすぎている気もする。

となるとかなり時間はかかるが強力な能力なのか。

可能性は否定できない。

足元に潜り込むとアッパーの要領で爪を振り上げた。

「能力発動。」

「ッ!?」

反射的に体を石の鎧で覆う。

「あーあ、防がれたか。」

すかさず剣が振られる。

斬撃をしゃがんで回避すると俺は足払いを掛けた。

ルドは一歩後ろに下がって攻撃を躱す。

「……。」

「俺の能力を知りたそうだね? 俺の能力は『人心掌握』。時間はかかるけどほぼ無制限に人の心を掴む能力だ。」

なるほど、人里の連中を簡単にまとめ上げたのはこれが原因か。

「能力としては鈴仙の能力に近いのかな。そのおかげで人里をまとめ上げることが出来たんだけどね。」

という事は目を見ないように、そしてこいつの波を喰らわない事が前提条件か。

なら上等だ。

ルドに接近すると再び爪を振るう。

俺の攻撃は剣で防がれた。

第二ウェーブ。

鬼に化けると力任せに拳を剣に叩きつける。

ルドは慌てて後ろに下がった。

いくら剣でも圧倒的な力の前ではそんな物は一切役に立たない。

多分、次の一撃を剣で受けただけで剣は木っ端微塵に砕け散る。

その瞬間がルドの最期だ。

拳を乱打してルドに能力発動させる隙を与えさせない。

何の悪運か今のところこいつはすべての攻撃を凌いでいるがそれも時間の問題だろう。

よろめいた所を後ろに回り込んで頭を狙って拳を放つ。

「能力発動!」

拳が髪の毛一本をとらえた瞬間そいつは能力を発動させた。

「ッ!」

バクバクと心臓が嫌な音を立てる。

拳はぴたりと止まった。

不味い、術中にはまったか。

ルドはゆったりとした動作で俺の後ろに立つ。

「これで掌握完了。これからは里の守護者として頑張ってね。まずは攻め込んできた鬼たちを全滅させといてね。」

「…かしこまりました。」

意思とは関係なしに体が動く。

それも確固たる動作で。

このままだと心も乗っ取られる。

無理やり操られているのではなく自然と動かされているように体が向きを変える。

俺は必死に頭を回転させた。

「…ッ!」

思い当たる物があった。

体が動かずとも能力が生きているのなら、俺はやり直しがきく。

俺は不死鳥に化けた。

唐突な変化で地面に衝突しそうだった所を慌てて飛翔して地面との衝突を防ぐ。

『燃えろ!』

体が炎に包まれる。

灰が辺りに飛び散った。

いざリザレクション!

肉体が再構築される。

属性を不死鳥に変えたまま肉体だけを竜人に変化させる。

灰の中から起き上がったのは竜人。

俺はニヤリと笑うと言い放った。

「第二試合。」

「…化け物め。」

ルドが再び能力を発動するのが分かった。

別にもう引っかからないけどね。

気合避けが攻略方法じゃないなら後は簡単だ。

竜の鱗を体に纏って掌握を防ぐ。

剣を振るうがそれも竜の鱗に食い込ませる。

俺も遊ぶような趣味はない。

やるならさくっと終わらせた方がいいか。

じゃあさっきまでの長ったらしい戦闘描写はなんだって言われればそれまでだけど。

刺さったままの刃を叩き折って奪い取りルドの頭に突き刺した。

「がぁ…」

中途半端な叫び声は俺の鼓膜をわずかに揺らして終わった。

「…これで里の連中の洗脳が解けるといいけどな。」

まあ、世の中うまく回るようにできている。

解けなくとも今回の恐怖は叩き込まれただろう。

「あら、あなたがケリを付けてくれたのね。」

隙間から紫さんが顔を覗かせた。

「えぇまあ。同じ外の世界の恥ですから。」

「恥ねぇ…」

紫さんは隙間に腰かけながら艶やかな笑みを浮かべる。

「幻想郷はすべてを受け入れる。それが恥でもね。『旅の恥は搔き捨て』よ?」

「…まだまだ俺は旅人ですか。」

「えぇ。でもあと少しでゴールよ。それをどう捉えるのかはあなた次第。」

「それはどういう――」

「じゃあね。」

紫さんは俺の言葉を遮って隙間に消えていった。

後には俺とルドの死体が残された。

「…うーん、とりあえず着替えないとな。リザレクションの所為で服がボロボロだ。」

ルドの屋敷に上がり込むと俺は衣装を物色し始めた。

「…意外とこっちの服装が多いな。」

郷に入っては郷に従えって奴か。

そこら辺はよく分かっていたみたいだな。

さて、あと一試合。

頑張りますか。

俺は火が回り始めた西側を眺めるとルドの屋敷を後にした。

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