人の裏を掻くのが天邪鬼だぞ?
俺は頭痛とともに目を覚ました。
「あー畜生。完全にグロッキーじゃないか…」
完全な二日酔いだ。
隣を見ると正邪が俺に抱き着いてぐっすりと眠っていた。
酒が入っている様子はない。
「これがほんとの鬼畜ってか?」
俺達が出来ちゃった婚なのは周知の事実だったのはかなりショックだったが問題は宴会だ。
正邪が妊娠していることを知っていた鬼どもは俺をターゲットにした。
勇儀さんに脅されて飲み比べをすることになり酒豪でもない俺は…まあそこは皆様のご想像通りだ。
今のグロッキーが何よりの証拠だろう。
丑三つ時になって俺が目を覚ました頃には鬼どもはすっかり帰宅し俺は痛む頭を押さえながら宴会の片づけを手伝う事となった。
正邪は片付けながらお説教をするというかなり器用なことをやってのけ、眠りについた。
俺もその後ベッドに入り、目を覚まし、今に至る。
ちなみに小鈴は9時くらいには眠い目を擦りながら寝室に引っ込んだ。
…めっちゃ気持ち悪い、吐きたい。
正邪が起きるまでの間俺はそのことばかりを考え続けていた。
しばらくして正邪が身じろぎした。
「猫辰、起きてるか?」
「…あぁ、起きてるよ。」
「結局、バレてたな。」
「そうだったね…正邪。」
「なんだ?」
「あれでよかった?」
「どういう意味だ?」
「うーんと…正邪が望んだ祝言にはなった?」
「…望んだかと言われれば嘘になるな。でも楽しかったのは本当だ。」
正邪は俺に回している腕に力を込めた。
「私はすごく幸せだ。異変を起こした時とは真反対の穏やかで、温かい気持ち。なんでもっと早く気付かなかったんだろうな…」
「天邪鬼だからかな。」
「そこは即答するなよ…」
正邪の抱擁が暴力へとシフトする。
「正邪さん! ギブ! ギブアップ!」
「なに? まだやりたいのか?」
「こんの~」
後ろの正邪さんは今頃超絶ニヤニヤしてるに違いない。
「くそう、一方的に…」
「人の裏を掻くのが天邪鬼だぞ? そこらへんも用意周到だっての。」
笑いながら正邪は腕の力を緩めた。
「まったく、割と痛かったし…」
「あはは、悪かったって。」
「小鈴が起きるぞ?」
「私は起きない方に賭けるね。」
「…人の寝付きを賭博に使わないでください。」
正邪の更に後ろから小鈴の声が聞こえた。
「お、起きたのか、小鈴ちゃん。」
「朝からあんなに騒がれたら誰だって起きますよ…」
眠たげに目を擦りながら小鈴が正邪の上から顔を覗かせた。
「ちなみにいつから起きてたの?」
「猫辰さんが降参したところです。」
「結構ついさっきだな。」
「なので本当に寝起きの瞬間ですね…もう少し寝てていいですか?」
「ダメ、ちゃんと起きなさい。」
小鈴の問いかけに即答したのは俺じゃなくて正邪だった。
「毎度起こすの大変なんだよ?」
「うぐぅ…」
痛いところを突かれたように小鈴は唸った。
「まあまあ、早起きは三文の徳。今日はみんなで何か飯作ろうよ。」
「おっ、それいいな! 何作るんだ?」
「そーだなあ…それは起きてから考えよっか。」
俺は布団を跳ね除けて大きく伸びをするのだった…




