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東方夢創伝  作者: 寝起きのねこ
やっぱり騒がしい平和な地底
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それを『あちゃー』で済ませられるのはお前だけだよ…

「猫辰さん。」

「ん? どしたよ小鈴?」

「猫辰さんって能力を応用すれば怪我を治せるんですよね?」

「うん、まあそうだな。」

「それって腕を斬り落とされてもですか?」

「…へ?」

確かに言われてみれば同じ理屈で俺の腕は治ることになるな。

「実験してみるか? 俺もこれは気になるし。」

そう、言われずともこれは俺の失態である…

 「…うあ。」

自分の呻き声に目を覚ます。

次の瞬間、激痛が左腕を襲った。

「ぐっっっっっあぁぁぁぁぁ!!!」

痛みに目を見開く。

「落ち着け!」

そんな声と共に痛みが引いた。

「はぁ…はぁ…」

半狂乱の頭を何とか叩いて落ち着かせる。

どうやらベッドで寝てたらしい。

声が聞こえた方を見ると正邪が涙目で俺を見つめていた。

ってことはさっきの奴は正邪がやってくれたのか。

「…ありがとう。」

「馬鹿野郎! なんでそんな危険なことをしたんだ! 痛みでまともな判断が出来なくなるのは分かってることだろ!」

「…ごめん。」

「ごめんじゃない! ごめんで済むならお前は――」

「まあ、今回は俺の軽率な考えだったな。ちゃんと考えていれば分かったはずなのに。」

そういって左腕で頭を掻こうとして呆然とする。

「…え?」

見事なくらい左腕は切断されていた。

包帯で巻いてあるが、応急処置であることくらいは滲んでる血の量を見れば分かる。

「…あっちゃー。」

「それを『あちゃー』で済ませられるのはお前だけだよ…」

「まあ理論上は化けて戻ればなんとかなる筈だし。」

そういって俺はベッドから足を降ろす。

正邪が何か言おうとしたがそれよりも先に元の姿に戻る。

「……。」

左前脚は欠如したままだった。

人間の体に戻ってみる。

相変わらず左腕がない。

「…これはちょっと予想外。できれば夢であってほしい…」

「…それは私も同じだよ。だけどばっちり現実だ。」

大き過ぎる欠落はどうやら変化にも影響が出るっぽい。

「マジかよ…」

これ普通にしてれば治るか?

いや、分からん。

切り口を見てみる。

「ふむ、開いていた傷は閉じてるな。腕は生えてないけど。」

ってことはあくまで表面上に付いた傷だけを変化は治すことが出来るのであってこういった物は治すことはできないと。

「にしても腕一本はさすがにやりすぎたな…」

「指一本でも大きすぎるわ!」

ポツリと呟いた言葉は拳と共に俺に返ってきたのであった。

正邪さん、病み上がり早々に拳を叩き込むのはやめて欲しい…

「そういえば小鈴は?」

「…罪悪感で地霊殿に行っちまったよ。」

「ありゃまあ。」

別に小鈴が悪いわけじゃないのにねぇ…

「後、預かってるものを守るためだってさ。」

「預かってるもの?」

「お前が気絶する寸前に『腕を保管してほしい』って言ってたんだってさ。」

「俺は一般人の女の子になんとエグイことを注文してるんだ…」

そういって頭を抱えたが実をいうと記憶があやふやだ。

しかし、なんで腕を?

とりあえず小鈴ちゃんと腕を取りに行くか。

俺はため息と共に扉を開けた。

地霊殿に行くと、お燐が迷惑そうな顔で俺を出迎えた。

「よっす、小鈴を迎えに来ました。」

「頼むから早く連れ帰ってくれよ。こちらとしてもあの子の対応には困ってるんだ。」

「悪いね。」

中に入ると小鈴が細長い箱を抱えて立っていた。

「よっ。」

「えっと、その…」

「ん? どうかしたかい?」

「本当にすみませんでした!」

そういって小鈴は頭を直角に下げた。

「おいおい別に俺は怒ってなんか…」

「私の所為で正邪さんにも心配をおかけしてしまって…」

あぁなるほど。

正邪にめちゃくちゃ怒られた感じか。

「正邪には俺から言っとくから。だからあんまり気にすんなよ。」

「ですが…」

「ですがもへちまもない。それよりもここに居座ってる方が地霊殿のみんなに迷惑だ。」

「うぅ…ごめんなさい…」

「あぁもう、泣くなっての。」

俺は小鈴の頭を撫でると箱を受け取った。

「こんなかに俺の腕が入ってるのか?」

「はい…」

箱を開けて中身を確認する。

「おっふ…」

中々に香ばしい腐臭が俺の鼻を直撃した。

これはなんとまぁ…

改めて小鈴には随分と酷なことを頼んだもんだ。

「なんか…悪かったなこんな物保管してもらって。」

「ホントだよ。」

そう言ったのはお燐だ。

「それを何度運ぼうとしてもその子は手放そうとしないんだ。」

お燐が腕を組んで小鈴の隣に立つ。

「渡しませんよ! 猫辰さんの腕なんですから!」

「まったく…そんな腐臭を地霊殿に置いておくなんて前代未聞だよ。妖怪の腕ってのは腐らないんじゃないのかい?」

「まあ、正確な分類は妖獣だからな。獣である以上腐ることもあるのかもしれんな。」

俺は箱を閉めて肩に担ぐと外に向けて歩き出した。

「帰ろうぜ、小鈴。今日は足がないから歩いてだがな。」

「はい!」

小鈴はトテトテと俺についてきた。

ったく…いろいろ大変なことになりそうだな。

なんで腕を保管する様に頼んだのかも我が事ながら分かってないし。

帰ってからいろいろ考える必要が出てきたな。

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[一言] いでででで……!Σ(×_×;)! 色々と無策ですな?(汗) 干からびる? ん?ん?(-""-;)
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