猫辰君、放射性排気物質には要注意だぞ?
久々に投下
走る。
ひたすらに走り続ける。
遥か後ろには妹紅さんとお燐が派手な弾幕バトルを展開している。
どのくらいは走っていたのか、気が付けば俺の体からは猛烈な汗が噴き出していた。
「…暑い。」
「そりゃあ地底の最深部だからね。」
顔をあげると…いた。
核持ち八咫烏、お空。
「なんで、こんなところに君みたいな奴がいるのかな?」
「少し追いかけられているんだ。さとりさんと、お燐の助けを借りてここまで逃げてきた。」
そういって俺はお燐のリボンを見せる。
「なるほどね。そういうこと。」
お空はなるほど分かったというように頷いた。
「で、どういうこと?」
…分かってなかった。
「とりあえず、助けてほしい。」
「君を助ければいいの?」
「そういうこと。」
「なるほど、そういうこと。」
すっげー不安。
しかし、今度の不安は杞憂に終わった。
だって俺の後ろで爆発音がしたから。
「猫辰! いい加減に戻ってこい!」
うっわー…めっちゃ怒ってる…
「お空さん、あの人から守ってもらえる?」
「合点承知!」
うわーお空さんマジイケメン。
「お前はまたそうやって逃げるのか?」
「すいませんがこれは俺の意地です。それに…」
「慧音が、お前のことをどれだけ心配してるのかお前は知っているのか?」
不気味なくらい静かな口調で妹紅さんは問いかける。
あまりの威圧感に俺は黙り込むことしかできなかった。
「正邪、あいつがどんだけ落ち込んでるのかお前は知ってるか?」
「……。」
「答えろ猫辰! 私だって心配してる! お前はあと何人心配させれば気が済むんだ!?」
「そこまで。」
会話を遮ったのはお空だ。
「はいはい、君が侵入者かな?」
「私は慧音の為にこいつを連れ戻しに来ただけだ。烏ごときが出しゃばるな。」
「ふぅ…君も厄介な奴に襲われたんだねぇ。ここまでお話が通じない相手は博麗の巫女以来だよ。」
お空は肩をすくめる。
ただし、その右腕はいつの間にか第三の足に変化している。
戦闘態勢はばっちりだ。
「改めて聞くよ、猫辰君とやら。襲ってくるのはあいつ?」
「…追ってきた人ではあります。」
「連れ戻しに来た蓬莱人だ!」
「分かった分かった。じゃあ、蓬莱人さんとやら。君も私の核でフュージョンしてあげるよ。猫辰君、放射性排気物質には要注意だぞ?」
「…無理です。」
だがそんな言葉が通じる筈もない。
突如として耳をつんざくようなアラームが響き渡る。
『Coution!!Coution!!灼熱地獄における大規模な核反応を探知しました!!核物質の暴走により大量の放射性物質が発生する可能性があります!!灼熱地獄にいる職員は至急退避してください!!Coution!!Coution!!』
機械じみた音声が灼熱地獄内に響き渡る。
そんな警告を気にする様子もなくお空は弾幕を撃ち始めた。
「《核熱「ニュークリアフュージョン」》!」
暑ッ!
とんでもない熱気がお空から放たれる。
これにはさすがの妹紅さんも驚いたようで目を見開いた。
でも、目を見開いたらいけない。
俺も目を見開いていたから後悔した。
熱で涙が沸騰しそうなくらい熱い!
すぐさま目を閉じたけどそれでも目は悲鳴を上げている。
痛いよ!
なるほど、これは一番持っちゃダメなキャラが持ってるわ、この能力。
恨むぞ神奈子様に神主!
身が焼けそうな、というか半分焼けてる熱がさらに強くなる。
駄目…こっちの身が持たない!
俺は急いで猫辰から竜人に体を変化させて鱗を出現させる。
焼けていた体はリセットされたものの、竜人の体でもじりじりと煙が出てくる。
嘘だろ霊夢さん、こんな化け物にあなた勝っちゃったの!?
恐るべし博麗の巫女。
今度あったらちゃんとおもてなししなきゃ。
そんなこと言いだしたら魔理沙もか。
あれで普通の魔法使いってのもやっぱり無理がある気がする。
そんなこと考えても熱が消えるわけではないけど。
とりあえず…逃げないとまずい。
お空は放射性物質って言ってたけどレベルが違う。
これは熱で溶ける。
事実人間よりも数百倍強い筈の竜人の肌が鱗も含めて解けてきているのがその証拠だ。
クッソ熱いです。
本当に…あの…熱い。
気温にはこの漢字を使わないんだろうけどあえて使いたい。
熱い。
というか、人間なら平気で溶けてるよね。
俺は走ってお空から距離を取る。
妹紅さんはお空に釘付けだ。
無論敵対的にだけど。
それでも目を開けて近づいていくのは不死っていう属性があるからだろうな。
ほぼほぼ捨て身の特攻だ。
「《不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」》!」
嘘やん。
この状況で普通更に熱くするかぁ!?
小さい弾幕と火の玉が不死鳥の姿を見せてお空に近づく。
俺は必死に逃げた。
あれは無理です。
一般人(?)がいていい場所じゃありません。
俺は命からがら灼熱地獄から地霊殿に避難してきた。




