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東方夢創伝  作者: 寝起きのねこ
地底で隠居したいお年頃
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元人間で、妖怪化して、更に神になるとか一体どんな究極生命体だよッ!

宴会の次の日。

俺は朝早くに目を覚ました。

結局ユイ君には挨拶しなかったな。

少し残念。

そして俺は準備を始めた。

この里を出るための準備だ。

宴会後、人里に戻ると人々から怪異の目で見られた。

正直それが1番つらい。

俺だって好きで妖怪化した訳じゃないのに!

理不尽な視線に耐えられる気がしない。

そんな訳で俺は手紙を置いて人里を出ていくことにした。

慧音さんには、ハル姐の喫茶店で値引きをしてもらうよう根回ししておいたことを告げる手紙を。

ハル姐には慧音さんが来たら値引きしておくようお願いする手紙を。

正邪には一緒に戦ってくれたことを感謝する手紙を。

そらには説得に感謝する手紙を。

それぞれ、慧音さんの枕元、喫茶店の入口、俺の部屋、里長の家の前に置いておいた。

正邪がどこにいるのかは分からないのでとりあえずは俺の部屋に置いておくことにした。

慧音さんが発見してくれることを願うばかりだ。

万能ちゃんリュックに大体の物を詰め込むと俺は寺子屋を出て行った。

人里でも忘れられた頃に戻ってくるとしよう。

実際に俺を見た輩が生きている以上あまり戻りたいとは思えない。

人里を出て向かうのは妖怪の山の麓だ。

とは言え妖怪の山が目的地ではない。

目指すのは嫌われ者の聖地、「旧地獄」だ。

嫌われ者ではないが、必要以上に恐れられたり、祀られたりする可能性は高い。

恐れられるのは別にいいんだが祀られる柄ではないのでさっさか雲隠れして信仰心を無くそうという訳だ。

元人間で、妖怪化して、更に神になるとか一体どんな究極生命体だよッ!?

とまあ、突っ込まれること間違いなしなので表舞台から消えるのが俺の中では1番の最良策だ。

人間は霊力、妖怪は妖力、神は神力を持っていてそれら全部を持ち合わせるとは…本当に何者だよ。

そんなことを自らに突っ込みながら妖怪の山にたどり着く。

確か、妖怪の山の領地内にあるんだよな。

そうなると白狼天狗の監視網を突破して地底に潜る必要がある。

いきなり難易度高くないですか?

さすが伊達に危険度高を名乗っていない。

普通ならあっという間にゲームオーバーだ。

普通なら。

おあいにく様、私はなんにでも化けられるんだよ!

独りで謎のどや顔をしながら白狼天狗に化ける。

服は普段着だけど仕方がない。

という訳でいざ地底へ。

木から木へ跳び回って地底の入り口を探す。

こういうときに役に立つのが外の世界の作者権限。

ユイ君を地底に放り込んだので大体の位置は把握している。

10分程探し回っていると件の地底の入り口を見つけた。

これでよし。

白狼天狗に見つからなかっただけでも儲けものだ。

「あやや? 見かけない方ですね? 地底に入ろうとする馬鹿な白狼天狗はいないと思っていましたがそういう訳でもなさそうですね。」

んん~?

めんどくさい奴に目をつけられた気がするぞ?

顔を変えて振り返ると案の定幻想郷で1番知的好奇心が強い天狗がカメラを手にしているのを見た。

流石は天狗のルポライター、スクープの嗅覚は犬以上じゃないだろうか。

そこには射命丸 文が立っていた。

「えっと、誰ですか?」

とりあえず知らない振りをしてやり過ごすとしよう。

私は地底に入るのだ!

「清く正しい新聞記者、射命丸 文です! ではあなたに質問しましょう! なぜ地底に入ろうとしたのですか?」

答えたくねえ。

「いや、少し迷っちゃいまして。」

「そうですか。ではなぜこんな早朝から地底に来たんですか?」

「地底なんですか!?」

ワザとらしく驚く。

その様子に文は呆れたように首をかしげる。

「すぐに分かりますよ。何か感じませんでした? こう…なんか『危ないぞ』みたいな感じが。」

そんなん言われても分からん。

そもそも妖怪だから分からないのかね?

「分かりません。」

「『地底』って聞いても驚いた様子がありませんね…では改めてお聞きしましょう。なぜこんな早朝からここに来たんですか?」

「山菜取りに来たんです。早朝はキリッとして空気が冷え込んでいるのでいい山菜や薬草が取れるかなと。」

「なるほど。でも朝に山菜や薬草を取りに来る人は限られているんですよね。」

「父が体調を崩していまして。」

「でもその穴には山菜や薬草はありませんよ?」

「少し天候が怪しいじゃないですか?」

「天気を知らせる龍神像が白狼天狗の拠点にもあるのですが今日の天気は晴れでしたよ?」

「……」

非常にまずい。

確実に怪しんでいる。

逆に襲い掛かってこないのが不思議なくらいだ。

「あなた…妖怪の山の天狗じゃありませんね? 野良という点も考えられません。幻想郷で白狼天狗がいるのは妖怪の山だけですから。」

別の妖怪であることはバレていない様だ。

「さて、ここで押し問答をするのもいいのですがここに哨戒班が向かってきています。おとなしく投降することをお勧めしますよ。」

俺は無言で戦闘態勢に切り替えた。

「お前さんみたいな知りたがりとは会いたくなかったんだがな。」

「あやや? 何を言っているんですか? 私とあなたが会うのは確実でしたよ? 麓にいた時点で既に目をつけていましたから。」

自然とため息が零れ落ちる。

恐らく、白狼天狗に化けた時点でバレていたようだ。

しょうがない、地底に行くのはもう少し後のことになりそうだ。

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