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東方夢創伝  作者: 寝起きのねこ
急展開過ぎる竜人戦争
20/56

信州のビールは世界一ィィ!

「では! 幻想郷の平和を記念して! そしてこれ以上の幻想郷の侵略がないことを祈念して! 乾杯!」

「乾杯!」

ここは博麗神社。

異変、というか侵略を何とか食い止め、首謀者を倒したということで宴会が行われることになった。

俺は人里を2人で守ったということが評価され宴会にお呼ばれされた。

正邪も一緒だ。

ちなみに音頭を取っているのは我らがユイ君だ。

「なぁ、猫辰。」

正邪が俺の服の袖を引っ張っている。

ん、怯えてる?

「私は天邪鬼だけど…」

「大丈夫だろ。だってまごうことなきあんたは英雄なんだからな。」

ちらちらと視線を向ける奴はいても露骨に絡んでくる奴はいない。

正邪からしたら針の筵に座らせているようなもんか。

「別に無理なら帰ってもいいぞ。そうなったら俺も帰るから。」

「…いや、まだここにいるさ。」

「そう。」

俺はそういうと饕餮に化けた。

とはいっても中身だけだ。

流石に格好まで化けるとこちらが退治されてしまう。

そして饕餮の元来の力が「相手の恐怖を嗅ぎ取る」と「相手に恐怖心を与える」だ。

伊達に四凶は名乗っていない。

虎の威を借りる狐だがまあいっか。

案の定正邪に視線を向けていた連中は俺に目を引き付けた後、慌てて視線を外した。

これで良し。

俺は適当に飯を喰らう。

その時慧音さんが神社の入り口に現れた。

俺の姿を見るなり駆け寄ってくる。

「猫辰!」

そのまま突進されて俺は地面に転がる。

「ちょっ、慧音さん!?」

「死んだとばかり思ってたぞ! 生きててよかった…」

心の底から安堵したように慧音さんは涙腺を緩める。

すぐそばに一度死んだ天邪鬼がいますよ~。

当の天邪鬼は我関せずといった様子で酒を呑んでいる。

こら正邪 さっきの恩を 忘れたか。

そんな俳句が出来上がったところでもう1人死んでも死なない人間が慧音さんのそばにいることを思い出した。

慧音さんの周りって下手したら危険度極高の連中がゴロゴロいるんだな…

「分かったから、慧音さん! 首がきついから!」

慧音さんは俺の首に腕を回しているので息が出来なくなってる。

えまーじぇんしー!

その後、説教と安堵のコンボを喰らいまくってやっと解放してもらった。

まだかすかに残る息苦しさでぼんやりとしていると霊夢が近寄ってきた。

「あんた、人間じゃなかったのね。」

組まれた腕からは大幣が覗いている。

「能力だけだったんだけど…里の人たちの畏怖の念で妖獣になったのかな?」

「分かってないの?」

「原因は不明。でも人間でないことは確か。」

「……。」

霊夢さんは目を閉じて軽く考えている。

「…今度会ったら容赦なく退治してあげるわ。」

謎の宣言をして霊夢さんは去っていった。

…何がしたかったの?

分からん。

人間をやめた所為で人間の思考が分からなくなってきた気がする。

俺は、人間をやめるぞー!

俺は人間を超越する!

幻想郷にはいない吸血鬼の台詞を思い出す。

あの吸血鬼は幻想入りはしないだろうな…

その時、隙間が開いて隙間妖怪の紫さんが上から顔を出した。

「貴方が猫辰ね。」

「はい、人間をやめた猫辰といいます。」

「『人間をやめた猫辰』? 面白い名前ね。」

おい隙間さん、ワザと言ってるよね?

仮に本当に言ってるなら妖怪の賢者の名が泣くぞ。

俺が黙ってると流石に気まずかったのか素直に紫が謝罪してきた。

「で、人里をあの鬼人 正邪と一緒に守ったっていうのは本当?」

「えぇ、こう見えて奇人変人の1人ですから。」

紫はそれが面白かったのかクスクスと笑った。

「えぇ、知ってるわよ。神主が言ってたもの。」

ZUNさんから聞いたのかい!

というかZUNさん見てたんかい!

「東方鬼形獣」の発表おめでとうございます!

新キャラおよび新曲楽しみにしてます!

って違う、そうじゃない。

突っ込もうと紫さんの方を向こうとしたら隙間妖怪の姿はもう見えなかった。

ふむ、覗いていたというのなら神主さんのところに会いに行くとしましょうか。

俺はそっと宴会の席を離れると饕餮を経由して紫さんに化ける。

隙間妖怪なんて紫さんぐらいしかいない気がするけど念の為だ。

そのまま隙間補開いてごー!

何処にって?

それはついてからのお楽しみ!

てな訳でやってきました神主の家。

神主はPCでプログラミングを作っていた。

「神主さん。」

「おや、猫辰かい。」

紫さんの姿なのにそれを看破するZUNさんすげえ。

「その節はお世話になりました。」

「いえいえ、こちらも楽しませてもらったよ。」

「そうですかい。」

「そうですとも。」

そういうと神主は画面から目を離し俺に目を向ける。

「ひとまずは『竜人戦争』の勝利おめでとう。」

「ありがとうございます。それでいつ家に帰してくれるんですか?」

その質問をしたとき神主は渋い顔をした。

「…幻想入りしたってどういうことか分かるかい?」

唐突にそんな質問を投げかけられる。

その質問を聞いた瞬間俺の頭はフリーズした。

「……。」

「幻想入りの定義は君も知っているよね。具体的な内容は省くけど『外の世界で忘れ去られたもの』。これがどういう意味か分かるかい?」

「…つまり家に帰っても俺は不審者になるってことですよね?」

ZUNさんはその問いに頷いた。

「僕もどうなっているのかは分からない。ひょっとしたら君の代わりがいるのかもしれない。ただ、君の居場所はこの世界には無くなってしまったことは確かだ。」

「じゃあ、1つだけいいですか?」

「ん?」

「『小説家になろう』の方のアカウントはどうなっているんですか?」

その問いに神主は面白そうに笑った。

「そこを気にするのかい?」

「幻想郷に来てもネットに繋がったりアカウントが無事だったことが少し気になりまして。」

「ふむ。なるほどね。ということは君は正体不明の人間(ユーザー)ということだ。」

神主はやや考え込む。

「少し考えたんだけどこんな仮説で納得できないかい?」

神主の話が少し長かったのでまとめるとこんな感じ。

・ネットとは本来情報の劣化を防ぐために作られたものなので、その情報が消えることはない。

・なので外の世界の妖怪たちもそんな風に辛うじて生き残ることは出来ている。

・今でも心霊現象などが起こるのはその所為ではないだろうか。

・結局、劣化しない俺自身の情報は幻想入りすることはなく今でも使えている。

4つの内の2つは完全に道草だが大方そんなものらしい。

「なるほど。それなら非常に納得がいきますね。」

「インターネットが現在の稗田家みたいな役割を担っているんだろうね。何処の世界でも情報を管理する奴はいるものか。」

そういうとZUNさんは冷蔵庫から「Hakuba Black」と書かれたビールとグラスを取り出すとプルタブを空けてビールを注ぐ。

「ふぅ、仕事後のビールは最高だね!」

…キャラが豹変した。

「それ、まだ途中じゃないですか?」

「ひと段落着いたから大丈夫!」

おかしい、俺の知ってる神主はもっと酒に強かった気が…

仕事終わりだから気分がいいのか?

「この冷えたグラスにHakuba Black! 信州のビールは世界一ィィ!」

これは幻想郷に戻ってから調べたことだが「Hakuba Black」は読んだ通り神主の地元、白馬村で作られているビールらしい。

コーヒーとチョコ風味のビールだとか…

なるほど仕事終わりにはピッタリかもしれない。

酔い始めた神主を見ていると扉のノブが動くのが見えた。

「あなた~?」

扉の向こうからただならぬ殺気を感じる!

キトラの竜でもこんなにねっとりとした殺気は感じなかったぞ!

一気に神主の顔が青ざめる。

もとから白い顔の神主が…

て、撤退!

ドアが完全に開け放たれZUNさんが救いを求める目でこっちを見ると同時に俺は隙間の中に逃げ込んだ。

神主、強く生きろ。

嫁の怒りほど怖いものは無いぞ。

結婚はしてないけど。

いざ、幻想郷へ帰還!

神主の悲鳴が聞こえた気がするけど気のせいだ。

今後の展開がありありと予想できるけどきっと気のせいだ。

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