気まぐれかな? そろそろ息抜きをしたくてね。
幻想入りした猫辰くんもといねこさんのお話。
目を開けると寂れた神社にいた。
側にはあの変な男もいる。
「さあ、着いた。君はそうだな…慧音のところに行ってもらうか。」
「…え? 慧音? ここってまさか。」
「そう、君のよく知る世界だよ、猫辰くん。」
思い浮かぶのは1つしかなかった。
幻想郷。
ここが…小説に書いてまで俺が愛した世界。
というとこの「BEER」の上着を着たこの人、いや、この方はまさか…
「『方』なんてよしてくれよ。そんな人柄じゃないのは知っているだろう? 僕はただの呑んべえさ。」
「分かりましたよ、ZUNさん。」
そう、彼は「ZUN」さん。
俺がお借りしている世界、「東方Project」を作った人。
みんなからは「神主」の愛称で親しまれているが俺としては「ZUNさん」と呼ぶ方がしっくりくる。
世界に名だたるこの神主が…
「一体なんで俺なんかをここに呼んだんですか?」
「気まぐれかな? そろそろ息抜きをしたくてね。」
「息抜き? 東方物を作るのって仕事だったんですか? まぁ、仕事ですけど。」
「君なら分かるんじゃないか? 『趣味』と『義務』の違いについて。」
「…!」
俺の活動報告のことだ。
とても短い時間だったが、一時期俺の執筆は「義務になっているんじゃないか」と考えてしばらくの間執筆をやめたことがあった。
疲れても気がついたらPCの前に座っているからだ。
そこで休んだ。
結果的には「疲れても楽しくやっているんだ。」と感じて復活したが。
「そういう事ですか。」
「そういう事。」
ZUNさんはそう言って俺に微笑む。
「それに僕の…」
「やめてください。」
こんな事で個人情報を開示されてはたまらない。
「ごめんごめん。ちなみにここは『僕の幻想郷』じゃない。『君の幻想郷』だ。」
「『東方竜人卿』の世界ですね。」
「大・正・解。」
東方永夜抄 EXステージの紫の言葉だ。
「で、博麗の巫女には挨拶した方がいいんじゃないですか?」
「いや、霊夢はちょっと…」
「あら、神主じゃないの。」
丁度良いタイミングで霊夢さんが社務所から出て来ながらZUNさんに声をかけた。
霊夢さんは俺の思った通り「東方永夜抄」の姿をしていた。(自分の想像した幻想郷なので当然だが。)
しかしZUNさんにとっては万事休す(笑)。
あの神主さんが顔を引きつらせているのはなかなか面白かった。
「また新しい奴を連れて来たの?」
「いや…それは」
「言い訳しない! 前連れて来た竜人は異変を起こしたっていうじゃない!」
「紫さんがやっt」
「他人の所為にしない!」
ZUNさんが救いを求める目でこちらを見てくる。
まあ、今後の為にも恩は売っておいた方が良いかな?
実際俺の所為だし。
「霊夢さん。ZUNさんは悪くないですよ。俺がやったんですから。」
案の定霊夢さんはこちらに怒りの矛先を向けた。
まあ、当然だろう。
突然やって来た新人が急に異変の元凶だというのだから。
「あんたが何をやったっていうのかしら?」
いつの間にか大幣を手にしてこちらに向けている。
神器を怖いと思ったのはこれが初めてだ。
「えっと…その…」
なんて言えば良い?
「えっと、実は俺、外の世界から来た人間で『物語を作る程度の能力』を持っていまして。それでここをモデルにした物語を書いているんですよ。」
「何? それがこっちにも影響を出したって事? あの竜人はあんたの創作物っていうのかしら。私の勘にも引っかからずに異変を起こすなんてどんな化け物なのよ。」
「すいません。でも俺が作れるのはあくまでもそう言ったキャラクター…人物だけなんです。なので、異変を起こした責任を取れなんて言わないでくださいよ。」
「あら、残念ね。」
怖ッ!
この人絶対責任を取らせる気だっただろ。
「じゃあ、責任を取れなんて言わないわ。お賽銭でも入れて言って頂戴。」
「すいません。今お金ないんですよ。」
「なんですって!?」
なんだろう、いろんな二次創作を見て来て、霊夢さんがガメツイ性格なのかな、なんて思ってたからそこも反映されているんだろうか。
「猫辰くん。とりあえず慧音の所に行こうか。」
ZUNさんが早口で俺に言う。
「私が行かせると思っているのかしら?」
霊夢さんが凄まじい殺気を放ちながら来ているのが怖いよ~。
「はっ、早く行きましょう!」
「逃がすか!」
霊夢さんが突進して来た!
少女なのに中々の迫力がある。
次の瞬間、俺はどこかの人里に転送していた。
「…危なかったね。」
「…ホントですよ。」
こうして、ZUNさんの力で逃げられなかったら一体どうなっていた事やら…
その後捕まったストーリーを書いても良いけど自分の身が危険な気がするのでそれは遠慮しておくことにしよう。