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東方夢創伝  作者: 寝起きのねこ
そして気づけば幻想郷
12/56

天邪鬼1名様ご案内で~す。

悲報

作者ルーミアの説得シーンの執筆をあきらめる。

だって難しいもん。

なんとか成功したってことで認識しといてください(泣)。

その日、慧音さんの寺子屋に天邪鬼がやってきた。

いやどういうことよ?

答えは簡単。

授業をしていたら天邪鬼が乗り込んできて授業は急遽中止。

その後、怒った慧音さんに捕縛されたという訳だ。

「どうしてやろうか。」

慧音さんは怒りが収まらないらしく鬼人 正邪という天邪鬼を見ている。

「なんでもひっくり返す程度の能力」を持っているらしいが怒った慧音さんの前では手も足も出なかったということか…

まあいいや。

これ以上慧音さんを怒らせても意味はなさそうだ。

まだ制裁を加えようとする慧音さんを俺は慌てて止めた。

「待ってください。すこし、正邪さんと一対一で話したいんですがいいですか?」

「しかし猫辰。そいつは天邪鬼だぞ? 聞く耳なんて持たないだろう。」

まさにその通り。

なので俺は説得するのではなく交渉することにした。

そのことを話すと慧音さんは渋々だが俺に許可をくれた。

その代わり、俺の部屋で話すように言われた。

まあ、そっちの方が都合がいい。

俺は縛り上げられた正邪を連れて自分の部屋に入った。

「で、何の用だ人間?」

部屋の襖を閉めた途端、正邪は俺に荒々しい口調で話しかけてきた。

舐められてるな。

「まあ、落ち着きなさいな。」

そう言いながら正邪の縄を解いてやる。

縄を解かれた意味が分からず正邪は眼を白黒させた。

「逃げたいなら逃げればいい。」

俺は言ってやる。

「に、逃げないさ。」

流石は天邪鬼、俺のやってほしいことの反対のことをやってくれる。

もちろん正邪を逃がさない為の釘だ。

「そう、そこに座りな。お茶ぐらいは出してやるよ。」

俺は座布団を正邪に放り投げるとお茶の準備を始めた。

「ほれ。」

「ん。」

正邪に湯飲みを差し出すと案外素直に受け取った。

俺は正邪の真ん前に座布団を置き、そこに腰かけてお茶を啜る。

「さて、まずどうしてこの寺子屋に襲撃してきたのかを聞かせてもらおうか。」

まるで刑事みたいだな。

それか学校だから生徒指導か。

どちらにせよやることは似たようなものだ。

「理由なんかねぇよ。」

「そうかい。」

俺はそう答えると湯飲みを傾けた。

「そうだな。じゃあ、お前さんの身の上話でもしてもらおうか。特に理由はないから何話してもいいぞ。」

「はぁ!?なんでそんなことをしなくちゃなんねえんだ!?」

正邪が素っ頓狂な声を上げる。

まあそうだろうな。

俺も同じ反応をする自信がある。

「ここに襲撃した理由は『特にない』んだろ? 俺があんたの身の上話を聞く理由も特にない。」

「……。」

鬼人 正邪、絶句。

天邪鬼を絶句させるって俺もなかなか鬼だな。

その気になれば本当になれるけど。

話を戻しましてと。

「まぁ気が向いたら話してくれよ。自慢話とかでも全然聞くぞ?」

「誰がお前なんかに話すか!」

正邪は意地になって湯飲みを置くと腕を組む。

ありゃりゃ、失敗したか。

俺は無言で湯飲みを傾けた。

さて、どうするかな。

そんなことを考えながら俺は正邪に目をやる。

「どうしても聞きたいんだがダメか?」

「ダメだ。」

「そうか。」

人間は自分のことを話したがるもんだが天邪鬼には聞かないのか…

「じゃあ、俺の身の上話でもしようかな。」

「はぁ!?なんで私がお前の話なんてしなくちゃいけないんだよ!?」

「誰も聞けとは言ってないぞ?」

「あっ…」

簡単に引っかかったぞ。

ちょろいなこの天邪鬼。

この際面白がってこの天邪鬼をからかうことにした。

「まあ、聞けとは言ってないし。俺も授業の手伝いがあるんだ。ほれ帰った帰った。」

「はぁ? 説教するつもりじゃねえの?」

「説教とは一言も言ってない。」

「うぐっ…」

「どうした? 帰らないのか?」

「帰らないよ!」

「そりゃまたどうして?」

「それはっ…」

なにこの子面白い。

異変を起こして更に逃げたって話を聞いたけど本当に異変の首謀者なのかね?

そう思ってしまう程に正邪はからかいがいがあった。

その後正邪の顔が真っ赤になるまでからかうと本題に入ることにした。

「さて、じゃあ俺と取引しないか?」

「なんだよ?」

ずっとからかっていたせいで正邪は随分とおとなしくなった。

天邪鬼が災いしたな。

俺は天邪鬼に化ける。

とはいっても正邪に化けたわけじゃない。

どうやら俺の能力は、「ある人物」に絞って化けることはできないらしい。

化けられるのは容姿、身体能力、本能、思考回路、好み、性質までだ。

「うぉ!」

正邪が驚いたような顔をする。

まあ当然か。

さっきまで人間だった者が天邪鬼になっているんだから。

ちなみに、顔はそのままで角だけ生えた感じになっている。

その気になれば顔も変えられるが、すでにこの世にある顔には化けられない。

死んでいた奴の顔に化けることは可能と少しばかりめんどくさい。

昨日は化けられなかった顔も今日は化けられたりするとかなり気まずくなりそうだ。

「今後、襲撃に来ないこと。それで今日の襲撃の慧音さんの制裁が軽くなるように頼んでやる。どうだ?」

「断る。」

これも分かってた。

天邪鬼に化けて分かったがこの種族は妖怪の本能にかなり忠実に生きる種族だ。

人を襲い、嫌われることで存在を忘れずにいてもらうという種族だ。

妖怪というのは意外と不安定な存在で、人々の記憶が存在の媒体となっている。

だから「忘れられること=死」となるのだ。

そのため、驚かすことや恐れてもらうことでで存在を忘れずにいてもらう普通の妖怪とは違い、あえて嫌われるような行動をすることで記憶に焼き付けてもらうというたくましい戦術を生み出している。

要はマイナスに記憶しておいて欲しいのだ。

となれば話は早い。

ここに丁度いいのが1人いるんだから。

「ちなみにこの条件を飲んでくれたら慧音さんの歴史書にお前さんの存在を書き記してもらうよう俺の方からも頼んでやる。」

「……。」

正邪が必死に頭を捻っているのが手に取るように分かる。

もう一押し。

「実は俺は外の世界で記録する仕事をしているんだ。そこにも記しておくけどどうする?」

あながち間違いではない。

幻想郷に来てからもPCのおかげで執筆をしているのだから。

「ぐ~~!」

正邪が唸り始めた。

さてどう出るか。

ここから先は現在、天邪鬼の思考回路を持っている俺でも分からない。

つまり、選択ということ。

天邪鬼個人に委ねられるんだろう。

「分かった! ここにはもう襲撃しない!」

毎度あり~。

天邪鬼1名様ご案内で~す。

という訳で俺は交渉の成功を慧音さんに報告することにした。

「猫辰、その角はどうした!?」

あ、天邪鬼のまま出てきちゃった。

俺は人間に戻る。

「角がなくなった?」

「少し正邪と交渉してて。」

「むう、そうか。」

それで納得してくれるのな。

それで俺は慧音さんに部屋の中で話していたことを伝える。

「そういうことなら…」

そういうと慧音さんはうなずいた。

「こいつの悪評でよければ。」

「少しはいいこと書いてやって。」

その言葉に正邪は何とも言えない表情をした。

いいことを書くのはダメなのか?

正邪に聞いてみた。

「なんというか天邪鬼の性に反しているから何とも…」

「別にいいじゃんか。」

「むう…」

正邪は腕を組んでいる。

「それにお前さん。根はいい奴だろ。」

「はぁ? あんたバカなんじゃないの?」

天邪鬼に露骨に言われた。

天邪鬼に。

なんか悔しい。

なぜかは知らんが。

そんなこんなで、慧音さんに他の点を話すと正邪を見送る。

「また遊びに来いよ~!」

「なんで来なくちゃいけないんだよ!」

「襲撃はダメだが遊びに来るくらいなら歓迎するぜ~!」

「なっ! うっせえ!」

そういうと正邪は走っていった。

寺子屋に戻ると慧音さんが興味深そうな顔でこちらをのぞき込んでいた。

「どうかしましたか?」

「いや、天邪鬼と交渉するなんて面白いなと思って。」

「外の世界の人間だからこそ考え付いた手段ですかね?」

「本来天邪鬼とは倒してなんぼのものだ。それを丸め込むというのは思い浮かぶものではない。」

そうなのか。

人間の頭の固さというのを改めて認識した。

なかなか共存という道を歩めない人間だからこそ、争いあうのだろう。

それが人外であろうと取る対応は同じ。

何より恐ろしいのはその考えの感染だ。

同じように思ってしまい、間違った情報でもそれを本物だと認識する。

それは種族を超えてしまうのだから恐ろしい。

慧音さんがワーハクタクだからというのもあるかもしれないが。

そういう意味では俺は異分子なんだろうな。

そんなことを想いながら俺は午後の慧音さんの手伝いを再開した。

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