ソーマがミチハナ世界に飛ばされて、クルルシアに出逢って大変なことに
おの はるか 様の作品
道に咲く華 https://ncode.syosetu.com/n7718du/ #narou #narouN7718DU
に登場する クルルシアと うちのソーマの『うちよそ』です。
こちらの最後の部分はソーマ視点です。
最後の部分のクルルシア視点にはコチラ↓から、どうぞ。
道に咲く華 クロスオーバー『クルルシア×屋久達蒼真(ビーーズ~無職なおれが異世界に来たら、ビキニアーマーの美少女に守られて大変なことに~)』 https://ncode.syosetu.com/n2146ep/2/ #narou #narouN2146EP
【注意書き】
※Twitterのリプライで会話したため、
一部話の運びがあまりスムーズになっていない箇所があります。
ソーマがラティという女性を暴漢から助けた日――
彼は加工屋のおやっさんに頼まれ、
冒険者斡旋所に、おやっさんの屋子であるアインと一緒に来ていた。
「なんだかんだで、今まで ここに来たことなかったんですよ。」
アインに世間話をした彼は、
おやっさんからの用事をアインが済ませている間に、斡旋所内部を探検し、
そして――
――――――
――――
――
*
―― ……あれ?
なんか冒険者斡旋所の中、なんだか違うんじゃないか?
さっきまでアインさんと一緒にいた受付の中の内装も 何か違うみたいだし、
ここにいる冒険者の人とかも、皆どことなく服装とか違うみたいだし……
アインさん、どこに行ったんだろう?
まわりを見渡しても見当たらないし、困ったなぁ……
*
いつもどおり、依頼をこなす。魔物討伐の証明を済ませ、報酬をもらう。
うん、これだけあればソルトにもなにか買ってあげれるね。
今日の夕飯はどうしようかと考えながら私は冒険者斡旋所から寮に戻ろうとした。
その時だった。
(困ったなぁ…)
ん?男の人の声?
しかし見回しても周りにいるのは女性だけ……ん? 違う。
私の視界に冒険者の中では珍しい、上品な服を着た黒髪の女性が映る。いや、女性ではないか。さっきの声は彼のものだ。
『君?どうかしたのかい?』
*
『君?どうかしたのかい?』
「えっ!? 」
頭の中で声がして、驚いて思わず声に出てしまった。
慌てて片手で口を覆って 周囲を見回したら、
桃色の服に茶色いコート、黄色いスカーフを首に巻いた女性が、
おれをじっと見つめていた。
おれと同じ黒い髪……
自分と同じ黒の髪色に目がいってしまったけど、
(さっきのは、もしかして頭の中で声がしたように思っただけかもしれない。)
そう思って、おれは恐る恐る その人のもとへ近づいて――
「あ、あの……もしかして、さっきの声は……? 」
―― その人に、声を掛けることにしてみた。
違ってたらどうしよう……
*
『うん、私だよ。其れよりなにか困った声が聞こえたが大丈夫かい?ここは君のような少年には似つかわしくないと思うのだが……』
不安そうに私を見つめる目の前の人物。うん、やはり少年だ。だが、女装云々を抜いても彼は目立つ。
見る限り腕っぷしが強い風にも見えない。
*
やっぱり、また 頭の中で声が……けど、少年か……
成人男性には見えないと言われたことに思うところはあるけれど、
彼女はどうやら おれを助けてくれるみたいだった。
「あの、ここって冒険者斡旋所で合ってますか?
それとアインさんを探しているんですけど……」
おれは彼女に、アインさんについて聞いてみることにした。
*
『おおっと、すまない。年上だったようだね。失礼した。冒険者斡旋所? ここのことなんだろうけど……アインさんは知らないな……どこのクランに入っているとかわかるかい?』
しまった……。どうやら地雷を踏んでしまったようだ。私としたことが。
しかしどうやら、彼は人を探しているらしい。アイン……はて、そんな人物がいただろうか。
*
ここ、本当にドコなんだろう?
少し頭の中がパニックになる。
でも、今はそれどころじゃないのはわかっている。
「クラン……アインさんは冒険者じゃなくて、
武器とか防具とか作ってる職人のお弟子さんなんです。
今日はココに納品しに来てて、それで……」
それで おれは、また『飛ばされた』のか……
*
ふむ……冒険者ではなく鍛冶屋……だがそうだとしても今日は武器納品の予定はなかったはず。そんな人物が来るはずがない。それに……『飛ばされた』ねぇ。
『まあ、とにかく落ち着いて。まずアインという人はここにいない。それに今日は武器の納品の予定もない。君は……別の世界から来たのかな?』
念のため、確認を取っておこう。
*
彼女の言葉を聞いて、確信に変わった。
ここは やっぱり異世界なのか……
でもこの人、別の世界から って言ってたな……
「……そうみたいです。あの……」
これからどうすれば良いか 助けてもらおう――と思ったけど、
斡旋所(ハロワではない)にいる他の人の視線が気になったし、
異世界について大っぴらに話すのもどうかと思ったので、
「どこか……二人っきりで話ができるところ、ありませんか? 」
おれは彼女に、それを尋ねることにした。
自分がいた異世界で慣れてはいるけど、
やっぱり他の人にジロジロ見られるのは恥ずかしいな……
改めて、自分が女性物のドレスを着ていることを意識しちゃったよ……
*
もとの世界に返そうと思ったら返せるが……すぐにできるほど気軽な魔法ではないからね……。それに彼が神に連れてこられた異世界人であるならば……。よし、
『うん、わかった。じゃあ私の部屋に来なよ。そこなら誰も来ないしね。なにか事情があるようだしいくらでも聞こうじゃないか』
周りの視線を気にしているようだったので、そっと幻惑魔法で彼を周りから見えないようにしつつそう、提案してみる。
*
まさか 女性に、部屋に誘われることになるなんて……
でも、彼女は善意で おれを助けてくれてるんだし……
そう思い、おれは自分の中の邪な感情を抑さえて、
「お願いします。」
その提案を呑むことにした。
変なことをして、
彼女の機嫌を損ねるわけには いかないんだし……
*
ふむ……いじりがいがありそうだね……。彼の表層心理を聞きながら(これは勝手に聞こえてしまうので仕方がない)私は学園の寮まで戻る。魔法で姿を消しているのでばれることもない。
あっという間に部屋につくと緊張した様子の彼を座らせることにする。
『まあ、そこに座ってくれ。飲み物は準備するよ。あまいほうがすきかい? それとも苦いもの?』
*
「甘い方でお願いします。」
初めて……ではないけど女性の部屋で、
椅子に座って おれは彼女が飲み物を持ってくるのを待つことにした。
どこの世界でも、どことなく似たような感じだよなぁ……
人間が生活する空間だから、そういう物なのかもしれないけど……
「あっ、おれは―― 屋久達蒼真って言います。」
自己紹介をしていないことを思い出して、
おれは自分から名乗ることにした。
どこまで彼女に読まれてるかはわからないけど、
自分から名乗っておきたかったんだ。
「よく、異世界から人が来るんですか? 」
この世界には おれと同じ世界から来た人がいるのか、
アルテナたちのいる世界や、元の世界に帰る方法があるのか、
おれは、おれは知りたかった――
*
『はい、どうぞ。
私はクルルシア・パレード・ファミーユ。訳あって話せないからこうやって魔法で会話させて貰うよ。』
注いできた飲み物を出しながら、私も名乗り返す。
『そうだね……この前は四十人近くまとめてやって来たところだよ。転生者とかもいるしね』
つい先日やってきた異世界勇者を思い出しながら口にする。
*
「よ、四十人!? それに転生者っ!? 」
以前読んだラノベとかだと、
その手の人間って 片手に数えるほどしかいなかったけど、それどころじゃない。
ここは、そういう世界なんだ――で、分けないと頭がパンクしそうだ……
けど、
訳あって話せない――
彼女の首に巻かれたスカーフを見て、
おれは それについては聞かないことにした。
それに魔法が使えるってことは――
「もしかして、元の世界に帰れる魔法があるんですか?
というか、そもそも どうしておれはこの世界に来てしまったんでしょうか?
魔法のせい? 魔法が使えれば、おれは帰れるんですか? 」
アルテナたちが心配しているだろうし、
元の世界がどうなってるのかも、おれは――
*
ん? どうやらかなり余裕がないみたいだけど……それに異世界人とかの概念は知っているのか……
『ふむ……どうして、か。神様には会っていないのかい?神に会っているなら私では少々荷が重いし。返せる保証はない。会っていないなら今からでも準備して今日の夜には帰れるようにしてあげよう』
*
「か、神様……? 」
いるなら会ってみたいものだけど……
「会ってないです、けど……やっぱり準備に時間かかるんですか? 」
言い終えてから窓の外を見た。……今、何時頃だろう?
でも、帰れる―― それが聞けて、少し落ち着いてきた。
用意された飲み物を飲むと、自分の注文通りにおいしく、
でも少し甘かった。
*
『そうか。よし、それなら準備は進めておくよ』
神に会ったことがないという少年の言葉に安心しながら私はこっそりと起動していた魔法を消す。
神の手先でないなら殺す必要もない。転移の門の準備だけしておけばいい。
沈んでいく夕日を見ながらソーマ君に声をかける。
『そうだね……あと二時間ほどかな。できる限り急いで準備させてもらうよ。ところで、君のいた世界はどんなところだったんだい?是非私にも聞かせておくれ』
あそこで会ったのも何かの縁だろう。私はこの少年にも見える彼と話をすることにする
*
後 二時間で帰れるんだ……
そう思うと、ここに飛ばされて慌ててた自分が なんだかおかしく思えてしまう。
クルルシアさんに聞かれて、おれは……
アルテナと初めて出会った時のことから、
今まで起きたことを話すことにした。
もしかしたら 誰かに……
いや、彼女に聞いてほしかったのかもしれない……
突然 異世界に来て、アルテナの旅に同行するようになったこと。
二人で野宿して、初めて魔物と出逢ったこと。
クモの魔物と遭遇したり、山を越えた先の街で……嫌がらせされたこと。
……その次の街でシアンさんやブラウさんが旅の仲間になって、
『母さん』と出逢って声が出なくなったこと。
バーントさんやジョン達と出逢って女装させられて……
それから……それから……
思い出したくないようなことも、いっぱいあった……
町がほとんど潰れて 沈むようになるなんて思ってみなかった。
髪が黒いのは、生まれ育った世界では当たり前のことなのに、
異世界に来たら 当たり前じゃないから って、
嫌な目に遭うなんて思ってなかった……
おれは……おれは どうして異世界に……
*
『大変だったね……』
涙を見せ始めたので流石にまずいと判断。私はそっと彼の首に腕を回す。
戸惑いの感情がつたわってくるがまあ、その程度問題ない。ぎゅっと、彼を抱きしめる。
『大丈夫だよ。思い出してみなさい。貴方の周り、いつも誰かいるじゃないか。』
震える彼の背中をさする。
『思い出しなさい。君は一人じゃないだろう?』
*
抱きしめられるとは思ってなくて、おれはビックリした……けど、
―― でも、おれは……一人じゃない……
そうだ、異世界にきてからのおれには、誰かしら傍にいてくれた……
孤独だったのは、元の世界に居た時だけだったんだから……
今だけは……抱き返しても良いよね……?
そう思いながら、
宙を彷徨い震えていたおれの両手は、
彼女を抱き返そうとして――
彼女の首に巻かれていたスカーフに触れてしまった――
*
手が引っかかってしまったのか、
結び目が弱かったのか、
理由はわからない。
だが結果として、
『え?』
抱擁を解いた私の首から黄色のスカーフが零れ落ち、その下にあるものがはっきりとソーマに見られた。
*
「あっ!? 」
気づいた時には遅かった。
偶然 触れてしまったスカーフがはらり と落ちて――
―― 訳あって話せないから――
―― クルルシアさんに、ぐいっ と押し離されてしまって
そのせいで余計に おれの目には、
彼女の首についた『ソレ』が 焼き付いてしまっていた。
「ご、ごめん―― 」
*
(見られた見られた見られた見られた)
『あ……う……』
伝達魔法すらまともに使うことができない。視界が暗い。本能のままに部屋の外に逃走を試みる。だが、その足はもつれすぐに転んでしまう。
『み、みないで……』
辛うじて伝えられたのはその言葉のみ。すっかりその場にへたり込んでしまう
*
ど、どうしよう……
『アレ』を見られたクルルシアさんがこんなに取り乱して……
って、そりゃそうだよな……見られたくないから
スカーフ巻いてるんだもんな……
見ないで、か。
なら、おれができることと言えば―― !!
床に落ちた黄色いスカーフで目隠しをして、
クルルシアさんのことだけを思って、
彼女のそばへと、ゆっくり近づいていった。
目隠しで周りが見えない。
四つん這いになって手探りで進んでいくのは正直 怖い。
けど、今度はおれがクルルシアさんに伝えるんだ!
大丈夫だよ。君は一人じゃないだろう? ―― って!!
*
(あ……ああ……ん?)
首を見られたことに私は動転した。同情なんて欲しくない。可愛そうだなんて思ってほしくない。
だが彼から伝わってくるのはそのどちらでもなくあたたかいものだった。
どうなっているのかと目を開けた私は目の前の光景を見て……
『え……きゃ!?』
*
目隠しをしてるから何がなんだかわからない。
でも手はクルルシアさんに触れて、
指先が 彼女の肌の柔らかさを伝えてくれる。
彼女を思って抱きしめようとして のばした手は、
驚き遠ざかろうとするクルルシアさんを追いかけ、
それに引きずられるように おれは態勢を崩していた。
見えてないから、咄嗟に身を守るために
両手を顔の前でパーに広げていて、
ちょうど その手に納まり、また指の間からムニッと溢れ出るような何かを
おれは掴んでしまっていた。
手に感じるやわらかさと服の質感と、
見えないからこそわかる女性特有の甘い匂いが強く鼻をくすぐった。
こ、これは……薄い本でよく見た……!?
直感した。
自分が今、何をしているのかを。
サーッと自分の表情が青ざめていくのがわかる。
おれはすぐにクルルシアさんから、
「ご、ごめんなさいっ!! 」
勢い良く後退って土下座し、
ゴンッ! と音を立てて、床におでこをぶつけていた。
見えてないから勢いを止めれなくて、すげぇ痛かった……
*
一瞬、何が起こったか、理解できなかった。
そして、理解する。してしまう。
耳まで真っ赤になるのが自分でも分かる。
『き、き、君は』
動揺してすっかり声も伝えられない。だが、彼の顔から流れ出る血が視界に入る。
『きみ、大丈夫かい!?』
慌てて駆け寄り治癒の魔法を彼に施した。
*
土下座したまま頭をぶつけた痛みに耐えていると、
クルルシアさんに抱き起され、痛みがすぐに消えていった。
さっきまでの取り乱した様子も、
胸を触ってしまって恥じらってる様子もなくなり、
ただただ おれを心配してくれているのが伝わってきていた。
こっちはまだ恥ずかしさと申し訳なさとで顔を合わせられないし、
まだ彼女を見て大丈夫なのかどうかが わからないのもあったから、
おれは黙ったまま、クルルシアさんを抱きしめた。
もし心の中が読めるのなら、全部読んでくれ。
恥ずかしさも申し訳なさも 嫌われるかもしれない不安も、
クルルシアさんのことを思っていることも全部、全部。
それで彼女に嫌われても、しょうがないんだから……
*
『きゃっ』
いきなり抱きしめられ、私は驚く。
だけどすぐに落ち着いた。
伝わってくる……彼の気持ち……
ああ……とても温かい……
これだから……人と心でふれあうことがやめられない。
どれくらいこうしていただろう。
数秒かも知れない。
数分かも知れない。
すっかり私の心は落ち着き、そして同時に彼の心も十分に伝わった。
『ありがとう……』
私が彼に届けた言葉はそれだけ。だけど……まだこのままでいさせてもらおう……。彼の腕の中はとても心地よい……
*
―― ありがとう……
伝わった。
おれの心が、彼女の心が。
目隠しをしたまま彼女を抱きしめていると、
クルルシアさんの温度が 鼓動が 匂いが 想いが、
体を通して伝わってきている気がしていた。
なぜ、おれはこの世界に来てしまったのかはわからない。
けど、この時のために来たのだとしたら――
この世界に来させた神様とやらに、少しだけ感謝しても良いのかもしれない。
おれはそう思っていた。
アルテナ達、突然いなくなったおれを心配しているのかもしれない。
おれだって、誰かが突然いなくなったら心配するし。
でも ごめん。
もうしばらくだけ、クルルシアさんに付き合うよ。
彼女がおれの『目隠し』をほどいて、
またスカーフがほどけた時が来ても、
あんな風に取り乱したりしないようになってくれれば、
おれも嬉しく思うから――
こうしてるだけで、そうなってくれるのなら って話だけどね。
*
ありがとう……その心も、思いも、全部伝わっているよ。
ごめんね……まだ……まだ無理そうだよ……怖いんだ……何がってわけじゃないんだけどね。
でも……その時が来たらきちんと君にも教えるよ。
『うん、ありがとう。大分落ち着いたよ』
彼の腕を解きながら私は立ち上がる。もちろん、立ち上げるときに彼の目隠しをしていたスカーフは取り返す。どうやら彼は目隠ししていても目を瞑っていてくれたらしい。気遣いに感謝だ。
『それじゃあ……あ……』
だが、私は気が動転してすっかり忘れていた。
『ごめん……門の準備はもう少し待って貰っていいかな?』
*
おれの目隠しをしていたスカーフが取られた時、
いや、目隠しをしていた時から おれは目を閉じていたんだ。
いくらクルルシアさんが落ち着いたから といって、
スカーフを首に巻き終えるまで 見られるのは嫌だろうから。
それに元はといえば おれが悪いんだから。
「えぇ、待ちますよ。」
おれはクルルシアさんに そう伝えた。
キュッとクルルシアさんがスカーフを首に巻き終えるのを待ってから、
おれは目を開けた。
やっぱりいきなり目を開けたら、ちょっと眩しいね。
さて、待つのは良いんだけど、
それまでココで、じっとしていることになるのかなぁ……?
*
『ふふふ。安心しなさい。これでも私、料理は得意でね』
手早く材料を調理し、机の上に並べていくクルルシア
『さて、今度はお互いに楽しい話でもしようじゃないか。私には弟がいてねーー』
*
さっきまでの事の反動か、というくらいに、
クルルシアさんは楽しそうに喋っていたし、おれの話も聞いてくれていた。
彼女の作る料理は どれもおいしいし、
おれがそれを言葉にしなくても、
おれがおいしく食べてることが伝わっているみたいで、
話をするのが正直 苦手なおれでも、真意を読み取ってくれるから、
うまく言えなくても 変に揉めるようなこともなくて助かっていた。
クルルシアさんと楽しくお喋りをしながらの食事が終わり、
そのまま任せっきりも嫌だったから、
食器洗いとか後片付けも手伝って、さっさと終わらせた。
そして ついに、門の準備ができたらしい――
*
『今日はありがとうね。とっても楽しかったよ』
門を開きながらクルルシアは別れの挨拶をソーマに伝える。
『またこっちに来たら教えておくれ。私の名前をいうだけで迎えに行こう。そのための魔法もかけておいた』
*
「こちらこそありがとうございます、クルルシアさん。」
彼女の魔法で開いた門の前で、
「今度は もっと楽しい話ができるようにしておきます。
それから、自慢の弟さんにも会ってみたいですね。」
彼女がおれに見せた様々な表情を思い返しつつ――
「それでは、また会うことがあれば―― 」
―― おれは笑顔でそう言って、門の中へと入っていった。
次は、ドレスじゃない恰好で会えると良いな――
*
――
――――
――――――
「……あれ? 」
「あぁ、やっと起きたのか。」
気が付くと、おれはアインさんに背負われていた。
周りを見ると、見慣れた街並みに、
見慣れた服装や雰囲気の人々。
どうやら加工屋に戻る途中みたいだった。
……と いうことは、おれは――
「寝てるのを見つけた時は驚いたよ。
まぁなんだかんだで、疲れてたんだろうけどな。」
アインさんの言う通り、ずっと寝てたの……かな?
―― ってことは、あれは夢?
―― 今日はありがとうね。とっても楽しかったよ
クルルシアさんの笑顔が、しっかりと思い出せる。
……うん。
とても楽しい旅だったよ。クルルシアさん。