デスティニー
「汝、之を見つけたりしは勇者とならん。然し命、長くなし。」
頭がグラっときた。この手紙に何の価値があるのだろうか?
これだけ?
裏面を見ても、宝の地図さえ載っていない。
勇者になった?
そんな事はどうでもいい。それよりも眩暈がする、、
頭を少し持ち上げると姉の姿があった。浅はかな目をした姉が巨木のように立っている。手には僕のビデオカメラを持ち、撮影をしている。
「な……ば、んで?」口から泡が吐き出す。意識が遠のいていく。姉から包丁で背中を刺されてしまった。
「能ある鷹は爪を隠す……先代の人はうまくいったよね。あんたは昔から目立ちたがり屋で、人からちやほやされたいと思っていた。自分が舞台の主役で脚光を浴びたい、そんな弟だった。でも私はそれ以上に目立ちたかったのよ。こんな田舎育ちの暮らしに嫌気が差した。称賛されるのは親戚や友達と会った時に言われる可愛いというしょーもないくそ言葉。私はそれだけで満足する器じゃないのよ。だから私の名を、私という人間がより多くの人に知られるようにどうすればいいかって考えた。その時にあなたが動画サイトを通じて面白いものを発信すると知った」
姉は僕の顔を屈んで見る。
「あんたがこの世から生を失う姿を動画へ投稿して、私は有名になる!! 玉手箱の話なんか真っ赤な嘘よ。私がこの日を迎えるために家族へ流した嘘話。でも実際に玉手箱に付着した赤褐色は私が殺した家族の血なんだけどね」
握り閉めた包丁の手が真っ黒になっていく。もう識別も判断出来ないのか。
「皆さん、裏庭の玉手箱いかがでしたか? 玉手箱を開けたら死ぬという真実は本当でしたー。本当に怖いですよねー、でもこの映像は事実なんだから仕方ないんです。この動画を通じて皆さんが身近で人が死ぬっていうのはどういう事か感じて頂いたらいいと思います。プロデュースはトゥモローに代わり、わたくしデスティニーがお送りしました」