日常へ
いくらカギを眺めていても、何も変わらなかった。
そもそも家族全員が玉手箱を開けて死ぬ理由が分からない。実際に自分には何も起きていないし、変化もない。このカギを使ってどこかのドアを開けば、さらなる深まりに近付けると期待はするのだが、どこにカギを使用するか皆目見当がつかなかった。
手が汚れている。そういえば箱を触った時に付いてしまった。血が固まったような色をしている。僕は何気なくボーと見ていると、ふと鏡台に目が入った。
昔から僕の部屋に置かれている鏡台。何度いらないと話をしたが、先祖から伝わるもので捨てるなんてありえないとずっと僕の部屋に置かれている。鏡台の鏡は曇っており、指紋があちらこちらについている。その下には小物を入れるくらいの大きさの引き出しがついている。
「確か……」
吸い寄せられるように引き出しへと向かう。その引き出しは開かなかった記憶しかない。老朽化して開けれないとばかり思っていたが、そこには鍵穴があった。
僕はカメラの存在を忘れ、息を殺して鍵を開ける。カチャと静かになり、ゆっくりと引き出しを開けるとそこには手紙が入っていた。
そこにはこう書かれていた。