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反乱組織、総攻撃開始!!




-前線基地 反乱組織サイド-


2人の司令官が地図を見ながら作戦を練っていた。その時兵士が駆け込んで報告する。


「何!?またB1地点に送った部隊が全滅しただと!?」

「はい、連絡が途絶えました」

「ううむ…そこに敵部隊がいるのは確実だな。それもかなり強力な」

「はい、送った部隊はそれなりの練度を誇っていましたし」


その時ふと、一つの疑問が浮かんだ。なぜ相手は前線に後ろから攻撃しない?挟撃すれば直ぐに前線を破壊できる。そして連合軍の勝利となるというのに。


2つの可能性が浮かんだ。

・1つ目は戦力は有るが、何らかの理由で動けない。

・2つ目はどちらにも属していない。迎撃しているだけ。

の2つである。


どちらにしろ、手を出すと痛い目に会うのは理解出来た。しかし、もし1つ目なら時間が経つと動けるようになるかもしれなかった。2つ目なら放置が良いが、1つ目なら不味い状況に成る。



どちらにしろ、虎の子を出すしかない。そう決意を固め、兵士に告げた。

「機甲部隊を出せ!一気に片付ける!」






-ヒースサイド-


「うーん。遠いな…」

ヒースは悩んでいた。もちろん恋の悩みなんかでは無い。

基地までの距離の事だった。

徒歩で歩いたら、1日ぐらいかかる。

体力的には能力のおかげで問題ないが、精神的に来るものがある。


その時、脳内に声が聞こえた。

『風を使えば、早く走れるぞ』

「そうか、その手があったか」

そう言うと、ヒースは走り出した。最初はいつも通りの速さだが、念じると、まるで車に乗っているかのようになった。


そのスピードでしばらく進んでいると前から車両が来るのが千里眼で気づいた。

「また来たか…いくら出しても無駄なのに」

右手を前に突き出して唱えた。

「炎よ。前の敵を燃やし尽くせ!」







-反乱組織 機甲部隊-


目標はB1地点の占拠か。相手が何だろうと、これだけの戦車と装甲車があれば木っ端みじんだろうと思っていた。わざわざ我々が出る必要が有るのかという疑問すら抱いていた。


だが予想は基地を出て、直ぐに裏切られた。


遠くに民間人らしき人を確認した。


正面に民間人が立ち、右手を突き出すと、戦闘車両が燃えた。


「なぜ装甲車が燃え始める!?可燃物など無いのに!?」

「とりあえず、奴が何かしているかもしれません。攻撃許可を!」

「う、撃てー!」


各車両は慌てて民間人に対し、発砲した。その火力はビルを一瞬で廃墟にするぐらいだった。1人に撃たれた火力では今までに例を見ないだろう。

民間人の居た場所からものすごい爆炎と轟音を発した。

もはや何もも残らないだろう。

ヒースではなければ…


「ふっ…やったか?」

と呆気なさを感じて煙が晴れるのを待っていたら…上から声が聞こえてきたのである。


「危ないねぇ…人に撃つ火力じゃ無いよね?僕は化け物かい?」

不適に笑うヒースがそこに居た。


「なぜ生きてる…それになぜ空に浮いている!?」

「質問を一気にしないでくれ。まず、1つ目の答えは避けた。2つ目の答えは風で飛んでるから」


奴の言っていることはぶっ飛んでいた。しかし、嘘を言ってるとも思えなかった。


ふと疑問に思った。そもそも奴は連合軍所属なのか?と。

もし連合軍ならなぜ今出てきたのか?

普通ならもっと早く出てくるはずだろう。


「なぜ、我々を攻撃する?お前は連合軍なのか?」

「いや、違うよ」

「ではなぜ攻撃する?」

「それは君達が戦争をしてるから」

「そんなの連合軍もしているじゃないか!理不尽だ!」

「理不尽?じゃあ僕の母さんは何で死ななきゃいけなかったの?民間人なのになんで?何かした?」

「…」

「分かったでしょ?君達が罰を受ける理由が。じゃあ喜んで死んでよ」


そう言うと、呪文を唱えた。

「炎よ。全てを焼き尽くせ」


すると、全車両が燃え始めた。

あっちこっちで悲鳴が聞こえてきて、阿鼻叫喚となった。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁー!!…力で抑えても…いつか…はお前も同じ目に…」

そう言うと男は事切れた。


ここに機甲部隊は全滅した。


「僕に勝てる人なんかいないよ?」

ヒースはあざ笑うかのように言った。


その目は遠く、前線基地の方角を見ていた…





-反乱組織 前線基地-


「何だ…これは…」

基地から望遠鏡で見ると、全車両が火の海に呑まれていた。


その中に立つ、1人の民間人。その民間人はこちらを見て目があった気がした。不適に笑っていた。

そのあまりの強さに司令官は恐怖した。


「…官…司令官!」

そう呼ばれて、はっとした。

あまりの恐怖に呼ばれていた事を気付かなかったらしい。

副官が要請する。


「司令官!直ぐに基地に第一種戦闘配備を!」

「あ、ああ」

だが、あの化け物に勝てるというのか?

機甲部隊を一瞬で壊滅させ、3小隊もやられた。


もちろん、基地には他にも機甲部隊が存在し、歩兵も1大隊いるのであった。

しかし、これだけの戦力があっても全く安心出来なかった。もはや奇跡を祈っていた。


サイレンが基地中に鳴り響く。


「各員、第一種戦闘配備!各員、第一種戦闘配備!目標は正面から民間人。弾を惜しみなく使え。全火力を持って殲滅せよ!」


この発言に兵士達はざわめきだした。

それは当然だった。相手は1人、それも民間人である。一個小隊でもいれば瞬殺である。


すぐにその考えを打ち消すように放送が流れた。


「相手は民間人では無い。三個小隊、機甲部隊を倒した化け物だ。

そしてこの基地に1人で向かって来るほど、自信を持っている。

その馬鹿げた自信を我々が砕こうじゃないか!化け物に勝てば連合軍など烏合の衆だ!我々の理想郷の為に!」

「「「我々の理想郷の為に!」」」

さあ、化け物よ。最終決戦だ!





-ヒースサイド-


機甲部隊を倒したのに刃向かって来るなんて、馬鹿なのか?

まだ戦力が有るわけか…それすらうち破いて、僕に刃向かう事が無駄って事を教えてあげるよ。


ヒースは基地に向かって、高速で走りだした。





-反乱組織 前線基地-


「敵が高速で接近中!」

「入口のバリケード前で集中放火!戦闘ヘリ、ガトリング、バズーカなど全火力を集中放火せよ!」


基地の全員がトリガーに手を掛ける…

緊張が兵士の中に流れる…

ヒースがバリケードの前に現れる!


「撃てー!」

無数の火砲から火が噴く。

また、記録が更新された。1人対最大火力が。

空からはミサイルとバルカンの雨、地上からはロケット砲、戦車砲、バズーカ、ガトリング、アサルトライフル、グレネード、スナイパーライフル、がヒースに降り注ぐ。


そしてものすごい爆炎と轟音を発した。基地全体に衝撃波が来るほどに。


司令官は期待した。この攻撃で倒せなかったらもう集中放火は出来ない。現状の最大火力である。

奇跡を信じた。






その期待は容易く崩れた…

最悪な結果だった。

ヒースは避けて居なかった。防いでいたのだ。

WBN:ウルツァイト窒化ホウ素によって。

これはダイヤモンドより固い素材である。

それを周りにバリアみたいに覆い、防いだのである。避ける必要すらなかったらしい。

この防御はもはや現代兵器では太刀打ち出来なかった。核でも使わない限り。


司令官は絶望した。もはや、勝ち目は無いと察したのだろう。


そして、ヒースはこちらにゆっくりと歩き始めた。だが、誰も撃たない。そう皆、呆然としているのだ。あれだけの攻撃で死なないなんて、どうやって倒せば良いのか…分からないのであった。


その間にもヒースは呪文を唱え始めた。

「炎よ。前の車両と人を燃やし尽くせ」

「雷よ。ヘリに天罰を与えよ」

その瞬間地上は火の海になり、空は曇り始め、雷鳴が鳴り響いた。そして、ヘリは雷に撃たれ墜ちていく…


基地全体も機甲部隊と同じく地獄となった…


司令官は泣きながら笑っていた。

「ははは…ははっ…」

もはや、狂ってるように笑っていた。

これは夢なのか…それとも天罰なのか…多くの命を奪ったからだろうか…そう思いながら炎の海に飲まれた。






-ヒースサイド-

「終わったか…いや、これは始まりに過ぎない。次は連合軍だ」

そう言うと、踵を返し炎の海を背に連合軍に向かって歩き始めた…


-連合軍 前線基地-


連合軍の基地は慌ただしかった。

兵士の報告を聞いた司令官は吠えた。


「何!?反乱組織が撤退し始めただと!?」

「ええ、順次撤退を始めています。まだ確証は有りませんが、どうやら前線基地が壊滅したみたいですな」

「いったい何が起こったのだ…味方の増援なのか」

「分かりません。情報が錯誤しています」


その時、気になる言葉が耳に入った。


「あいつが…あいつがやったんだ…あいつならやれる」


その言葉を聞き、司令官は近づいて尋ねた。


「君、あいつとは誰の事だ?」


声を掛けられたら兵士は一瞬驚いた顔をして、慌てて敬礼した。


「失礼しました!あいつとは民間人の事です!」

「気にしなくていい。民間人?民間人が基地を潰したというのか?」

「はっ。確証は有りませんが、魔法のような物を使って反乱組織と戦っていたのを目撃しました」

「魔法だと?あれはおとぎ話の中だけでは無いのか?」

「司令官、もしこの話が本当なら基地が潰されるのも納得いきます」

「そこまで強力なのか魔法は」

「昔話では勝利に導いたり、呪い殺す事も可能でした。なので何が起こっても不思議は無いです」

「そうか…こちらに被害が無ければ良いが」


その時、基地の入り口付近で爆発が起きた。

司令官は叫ぶ。

「何だ!?何が起きた!?」

放送が流れる。同時にサイレンも鳴る。

「敵が入り口に接近、戦闘状態に入りました!各員第一種戦闘配備!」


それを聞いた瞬間、司令官は入り口に駆け出した。

「司令官!どちらに!?」

「民間人の所だ!話に行く!」



そして、入り口に行くとそこは地獄だった。あちらこちらに死体があり、火の海だった。

「くっ、1人でこんな事が…」


ふと目の前にヒースが現れた。

「まだやるの?無駄なのに…」


司令官は怒りを抑え、ヒースに尋ねた。

「なぜ、君は戦う?反乱組織の基地を潰したのは君だろう?」


ヒースは笑いながら答えた。

「そうだよ。僕が全部やったよ。なぜ?それは復讐だよ。母さんの」


それを聞いた司令官は目を伏せ、頭を下げた。

「申し訳ない。我々は民間人を巻き込まないように戦ってきた。それでも巻き込んだのは我々の責任だ」


ヒースは顔を歪めながら叫んだ。

「僕は同情して欲しい訳じゃない!母さんと同じ目にあわせたいんだ!」


それを聞いた、司令官は叫んだ。

「ふざけるな!」


ヒースは驚いた。

殺そうとして来た奴はたくさんいたのに怒られた事はなかった。


司令官はゆっくりとこちらに向かって来た。

ヒースはなぜまっすぐ向かって来るのか分からなかった。

相手は死ぬ気なのかと思った。

考える間にヒースの前に立った。

ヒースは構えた。どんな攻撃が来ても避けれるように。


だが、ヒースは避けれなかった。

乾いた音が響いた。

ヒースは司令官に頬を叩かれたのであった。

ヒースは呆然とした。なぜ僕は防げなかった。避けれなかったと。


その時、司令官はヒースの目をまっすぐ見つめてこう言った。

「お前が辛かったのは分かった。だが、それを他人にも押し付けるのは自己満足だ!殺された人の家族はお前と同じ境遇になるのだぞ!それでもまだ殺すか!?」


その言葉を聞いた瞬間、ヒースは思い出した。自分は何の為力を手に入れたかを。

「戦争を…止める…為」

「お前は戦争を止める為に力を手に入れたなら、その為に使え!」

ヒースは震えた声で呟いた。

「俺はどうすれば…」 


司令官はヒースの肩を叩いた。

「力は抑止力になることもある!お前にはその役目がある!手伝ってくれるか!?」

「はい!…宜しくお願いします!」


ユーリは力強く頷いた。




だがこの事に不満を持つ者も多かった。化け物を身内に置くことは常に恐怖に晒される事になる。だが戦争終結に向けて、動く事は誰も異論はなかった。


一方、反乱組織も終結に向けて、動いていた。なぜなら、化け物が連合軍に存在すると判明したからであった。

いくら戦力があっても、一方的に潰されるだけであった。

また連合国もかなりの譲歩があったのも理由の一つである。


こうして長きに渡る戦争は終結した。

ヒースが覚醒してから1ヶ月後の事だった…





-----------


ヒースは故郷に帰って来ていた。ヒースはゆっくりしたかった。この1ヶ月まともに休んでいなかった。なので、ゆっくりしようと故郷に帰って来て来たのだが、住民の熱烈な歓迎を受けて、それ所ではなかった。

「「「英雄ヒース万歳!英雄ヒース万歳!」」」

道は観衆で埋め尽くされていた。

戦争を終わらした英雄を一目見ようと集まったのである。

「「「キャー、ヒースこっち向いてー!!」」」

などファンクラブまで出来る始末だった。

ヒースはヘロヘロになるまで歓迎された。


ヒースの家は焼かれてしまったが、新しい家が連合国から与えられていた。街からは少し外れるがとても大きく、豪邸だった。

敷地は学校のグラウンド並みにあり、野球が出来るぐらいだった。

もちろん豪邸としては狭い方だが、ヒースには十分過ぎた。

いや、ヒース達には。


ヒースがフラフラしながら門から入ると、多くの人に頭を下げられた。

「お帰りなさいませ!ヒース様!」

そこには、多くの使用人がいた。

ヒースは呆気に取られていた。


その時、突然背後から強い衝撃を受けた。

ヒースは受け身を取れず、意識を失った…





----





「ううん…」

ヒースは気が付いた。目の前には見知らぬ天井だった。

そして思い出した。後ろから衝撃を受けた事を。

ヒースは右手を向けて…





弟の頭を叩いた。

「痛いよ…兄ちゃん」

弟は頭を抑えて、ヒースを睨んだ。

ヒースは呆れながら、答えた。

「カイル…ダメじゃないか、全速力飛びつきは」

カイルはしぶしぶ頷いた。


その時、扉が勢い良く開いた。

「ヒース!大丈夫か!?」

と父さんが飛んで来た。

父さんはヒースに抱きつこうとするがヒースは手で抑える。


「ああ、大丈夫だよ。あの時は疲れて反応出来なかったよ」

ヒースは笑いながら、そういった。

父さんは安心したようだった。



ヒースは幸せに暮らした。今までの生活を取り戻すように…






次の新月が来るまでは…




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