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語り部は、夢に遊ぶ ①

 こちらは、かつて一時期つけていた「夢日記」の内容の一部です。

 私は「夢を見る」ことに異様に凝っていた時期があって、その時には、

「夢の中で『これは夢だから!』と強引にストーリーを変更できる」

「夢を見ていて途中で起きた場合、すぐに二度寝すれば、それまでの続きを見ることができる」

 といった謎の技を使いこなすことができました(今は、もうできません)。

 いつも、物語のことばかり考えていたからか、夢の内容も、けっこうドラマティックなものが多かったです。

 もちろん、意味不明なものも、多々ありましたが……


 8月11日の夢。


 かつて通っていた小学校と中学校の建物が混ざり合ったような学校が舞台。

 私は「図書館の追い出し係」になっていた。それは何だろう?

 それはさておき、図書館は小学校のでも中学校のでもなかった。

 その場にいた先生が、なぜか中学校の体育のS先生だった。

 私と、同僚の係員(友人の誰かだった)は、カバン等を置く棚の、底の板を取り外して、 その板に、黒のマジックペンで何事かを懸命に書き込んでいた。


 8月12日の夢。


 なぜか知らんが、空中(しかもめっちゃ上空)にて、猛スピードで上昇、そして下降を繰り返す。

 飛行機に乗ってるわけでも、パラシュート等を着けてるわけでもない、全くのまんまで、ジェットコースターのごとき急上昇&急降下の連続!

 眼下には米粒のような大きさの民家や、道路、緑が見えた。

 降下の時の、全身の血がフッと重さを失うような気持ち悪い感覚がめちゃくちゃリアルだった。

 私は、

(気持ち悪ぃ――――っ!)

 と思いつつも、

(こんなことでへばってちゃ、まともなパイロットにはなれん!)

 と思っていた。

 パイロットって……一体何のだ?


 8月13日の夢。


 舞台は、外壁が全面ガラスばりになっているしゃれたオフィスビル。

 その内部の、天井まである吹き抜けを中空で貫く空中回廊の上で、私は友人M、S、Dらと共にパフェを食べていた。

 テーブルやスツール、観葉植物なども置いてあって、とにかく洒落た空間。

 辺りは少し薄暗い。

 外は明るいのだが、ビル内には照明はない。

 と、ここでいきなり友人たちは消え、「スキンヘッドで長身の男」と私が、

「2000人の重装歩兵をいかに配置するか」

 について、激論を闘わせる。

 と、場所は同じだが、急に話が変わり、私は、私の宿敵である「緑の女」を見つけてしまったらしい。

 その「緑の女」は、同じ回廊の、ソファがたくさん置いてある、ラウンジのようなコーナーにいたようだ。

 だが、結局、直接顔を見た覚えはない。

 そのとき、私の頭の中には、こんなテロップが流れていた。

『愚か者! 愚か者! ヤツがここにいることは分かっていたのだ。愚か者! 愚か者!』

 ――イメージの中の彼女の髪は、不気味に波打っていて、緑色だった。

 意味不明な上に、なんか、気持ち悪……


 8月14日の夢。


 私は、小学校で、山へ遠足に行き、遭難したらしい。

 しかし自力で下山し、何とか仲間たちと合流することができた。

 下山した私はすっかり野生化していて、

「ちょっと、危ない!」

 と皆が止めているにもかかわらず、

「大丈夫だって」

 などと言いながら、サルのように急斜面を駆け抜ける。

 斜面の上に見える空がとてもきれいだった。

 

 ここでまったく話は変わり、私の実家。

 なぜか「おじ」が二人も増えていた。

 イトコたちもいたように思う。


 8月16日の夢。


 私はなぜか魔法使いになっていた。

 仲間たちと共に、船に乗り組むのだが、その船は空中を進む。

 雨こそ降っていないが、空は鉛色の雲に厚く覆われ、地平線近くは血のような赤、硫黄の黄……と嵐の航海だ。風が強い。

 と、突然、船体の真横に、ラピュタの『龍の巣』のような、巨大な雲の柱が出現する。

 巻き込まれたらバラバラだ。

 私は、船縁から両手を突き出して渦巻く雲の表面を押さえ、船がこれ以上そちらに近づかないようにする。

 雲すれすれ、わずか1メートル足らずの距離を隔てて、船は進んでゆく――


 昼寝編。

 舞台は、実家の近所――のはずだが、実際には存在しない場所。

 倉庫(?)のシャッターの前に、男の子と女の子がいる。

 私は、彼らに用があるらしい。

 私は、男の子のほうを見て、

(ああ、この子は、Yさんの弟だな) 

 と、なぜか確信する。面識はないのだが。

 彼は地面に、カラフルな、おもちゃのような電卓と印刷機を置いて、むちゃくちゃ複雑な計算をしている。私は、

(難しすぎて、わけが分からん……)

 と思う。

 関係ないが、彼らと会う前には、私は床屋の前を猛スピードでダッシュしていた。何の意図があったのかは不明。


 そして話変わって、私たちは家の中にいる。

 家族だけではなく、関係ない人々もいた。

 何か、家の斜向かいのマンションに「狙撃犯」がいて、家の中の誰かを狙っているらしい。

「マンションから見える角度のところには出るな」

 と、皆で隠れる。

 ちなみに、多くの人が「どんぶりばち」をかぶって頭をガードしていた。

 私もかぶっていたかどうかは定かではない。

 とにかく警察に電話しよう、ということになり、代表で私がかける。

 そのとき、誰かが、

「狙撃犯はウソくさいから、変質者ってことにしとけ」

 と言う。

 その通り電話するが、警察は、

「それはウチの仕事じゃないんでねぇ」

 と取り合わない。何故だ。

 それから、昔の家庭教師さんが晩御飯を食べていたり、真犯人が明らかになったり、と色々なことがあった気がするが、定かでない。

 何か、デザートにアップルパイが出てきていたような……?

 ちなみに真犯人は、黒服にサングラスの男だった。


 8月17日の夢。


「妹と大ゲンカ」と「私のマンションが……(以下忘れた)」。

 あまり面白くなかったためか、ほとんど記憶に残っていない。


 8月18日の夢。


 小学校の校庭が舞台。

 運動会で、私は「白木組」に配属される。

「白」は分かるが「木」って何だろう……?

 そしてその後、私は、なぜか友人Mに肩車してブランコに乗っている。

 こぎながら、友人Mが言う。

「なあ、これってさ、何かみたいやんなぁ」

「ああ、『フリーク・ザ・マイティ』やろ?」

 映画の内容を思い出し、私は答える。

 しかし友人Mはかぶりを振って、

「いや、怪物くん」

 ……怪物くん……? 何か、昔、そんな漫画があったような……?

 しかし、肩車してるヤツなんていただろうか? 謎である。


 そして2度寝編、順不同。(まず起きたのが6時、それから7、8、9時と1度ずつ目を覚まし、活動開始したのは10時だった……)


 まず、フラッシュ・バックのように、立て続けに映像がひらめく。

 拷問部屋で泣き叫んでいる少女たちの顔――中国人だな、と私は直感する――それが延々続いた後、私はどこかの薄暗い部屋の中にいる。

 窓があって、外が明るい。塔の最上階だな、と直感する。

 その部屋には、巨大な壁掛け時計があり、そこから下がった何本かの振り子(?)に、一人の少女が手足を固定されている。

 少女はうつろな表情をしている。

 そのそばに、ひとりのおっさんが立っている。

 私は、その光景を第三者的に眺めている。

 と、おっさんがリモコンを取り出し、操作すると、振り子がゆっくりと動いて、少女の手足が操り人形のように動く。私は、

(下らん仕掛けやな)

 と思う。

 と、突然そこに、巨大な「鳥と人とのあいのこ」のような、ヘンな生き物が現れる。

 その生き物はリモコンを取り、

「えーっと適当に……12時と、6時と……」

 などと呟きながらボタンを押す。

 するといきなり、振り子の速度が上がる。動きも大きくなる。

 それまで無表情だった少女の顔が恐怖に引きつる。

 あ、やばい。私は顔を背ける。

 肉の千切れる音と共に悲鳴があがる。

 しばらく絶叫が続いているので、私は、

(バラバラになっても声が出せるなんてヘンやな)

 と冷静に思う。そっちを向いて状況を確認する勇気はなかったが。

 それにしても、不吉な夢だった……


 そして話はまったく変わり、私は、実家に向かって、道を歩いている。

 何だかやたらと大人数で、ぞろぞろと。

 小柄なおばあさんが、手押し車を押して歩いているのを追い越す。

 そして――何がどうなったのかよく分からないが、私は、道端で、ひとりの侍と話をしている。

 彼は浪人である。ここは、現代のはずなのだが。

 彼は得意げに、薄汚れた胴着の背中を見せてくれる。

 そこに、紺地に白抜きで、ばーんと書かれた文字は――


 男 命 。


 ……これは……「おとこいのち」と読むのか……!?

 いったい、何の意味があるのか……?

 さまざまな謎を残しつつ、彼は去っていったのだった。


 そして、さらに話は変わる。

 ある女性の回想。

 彼女は昔、兵士だったという。

 大勢の兵士たちが、深そうな川を渡っている絵(セピア色のペン画)のイメージが浮かぶ。その中に、その女性も混じっている。

 女性には、ふたりの親しい仲間がいて、どっちも男である。

 その片方が叫んでいる。

「畜生! 俺たちは、奴らに騙されたんだ!」

 ――どうやら、奴らというのは、軍の上層部の連中らしい。

 兵士たちは、こちらへ来れば気候が穏やか、みたいなことを聞かされていたらしいのだが、実際の自然環境はめっちゃ厳しく、大地は荒れ野。

 ぺんぺん草も生えていなかった。

 とにかく、そんな夢だった。


 8月19日の夢。


 まず、私は家族とともに車に乗って、中学校へ行こうとしている。

 しかし、道が全然違う。

「父上、どこへ行く?」

「近道がある」

 などという会話を交わしつつ、高速の高架下を通る。

 看板があって、確かに『○○中学校⇒』と書いてある。

 そうこうするうちに、神社(実家の近くにあるヤツ)の横を通り、一軒の、やたら大きくて古めかしい家に着く。

 中学校へ行くのではなかったのか……? 

 しかし、夢の中の私は、あまり気にしていなかった。


 ともかく、その家の住人(顔は分からなかった。というか、姿も見ていない)と協力し、私たちは働く。

 どうやらこの家で葬式があるらしく、私たちはその助っ人だ。

 私は、赤ん坊の世話を任される。

 赤ん坊は家の廊下を這い回り、私は、その姿をぼーっと眺めている。

 旧式の日本家屋のため、廊下から、玄関や庭が筒抜けに見える。

 植木などもあって、良い感じの庭。


 ――そして、まったく唐突に話変わって、舞台は、実家の二階の「六畳の和室」となる。

 その部屋の中央に、いきなり、巨大な切り株が、どーんとある。

 畳から直接生えてるらしい。何故?

 それはさておき、問題は「その切り株に私が縛り付けられている」ということだ。

 しかも、洗濯物を干すときのロープで。しょぼいわッ。

 と、そんな私の目の前で、突如として、廊下の窓ガラスが粉々に砕け散る!

 そして、ガラスの破片とともに、飛び込んでくる人影ふたつ。

 うおお、誰っ!?

 すたっ、と床に着地した男たちの姿を見れば、なんと彼らは、往年のTRPG系の名作『ロードス島戦記』の登場人物「アシュラム卿」と「カシュー陛下」だった!

 切り株にはりついている私を完全に無視し、二人はいきなり、一騎打ちを始める。

 剣を抜き、にらみ合うふたり。

 めちゃめちゃカッコいい……!

 次の瞬間、固唾を呑んで見守る私の目の前で、ふたりが同時に動いた。

 剣を振りかぶるアシュラム――

 しかし、カシューが真横に振り抜いた剣のほうが格段に速い!

 というか、マジで速い!

 私は、夢の中でこれほどの高速で動くものを初めて見た。

 あまりの速さに感動して「おおお~っ!」と叫んだ私の目の前で、カシューは、アシュラムの喉元をかき切る寸前の刃をぴたりと止める。

 見事な寸止め――さすがは「剣匠」!

「すっげー、神業! 世界最速~!!」

 と、わけのわからん歓声をあげて盛り上がる私。

 敗れて悔しげなアシュラムには、

「あんたの殺気、私、好き! ぞくぞくする……!」

 と、わけのわからん励まし(?)のことばをかける。

 何の脈絡もなく我が家で一騎打ちを始め、そして勝負を終えたふたりの男は、爽やかな微笑を浮かべてこちらに手を振り、砕け散った窓から消えていった。

 ――って、しまったッ! ロープ、解いてもらいそこなった!

 誰か来てくれ~!!


 そして、またもや話変わって、舞台は寺。

 というか、建物は、確かに寺っぽい。

 しかし本堂からいきなりコンクリート製の橋が伸び、その下は堀、さらに橋の向こうに大門があり、その外が境内、という意味不明なつくりをしている。

 しかも、私は黒装束の忍者スタイル。

 真っ昼間から、参拝客の中で浮きまくっていることは言うまでもない。

 しかし、同じ格好の仲間も何人かいたし、誰も、あまり気にしていないようだった。

 ここは、江戸時代のナントカ寺で、私たちの使命は、本堂にこもる「御屋形様」(だか何だか……後ろ姿をチラッと見たっきり)を守ること!

 しかし、参拝客たちは思いっきり現代の服だった。まあいいけど。

 ――と。

「敵だぁーっ!」

 という叫び声が聞こえ、やはり忍者の格好をした、ただし服の色が私たちよりも青っぽい奴らが、大門からバラバラと駆け込んでくる。

 私たちも駆け出して、迎撃だ!

 ひとまず敵を大門の外に押し返すことに成功し、境内で戦うことになった。

 地面は砂利敷き、松なども植わっていてムード満点。

 私はまだ新米の忍者で、わたわたしながら何とか戦っている。

 と、そんな私の前に、何だかやたらと強そうな、威圧感バリバリの忍者が現れる。

 私はとっさに、

(こいつは、服部半蔵に違いないッ!)

 と思う。

 かなわなさそうなので逃げたいが、逃げたら確実に後ろから刺されるだろう。

 ええい、仕方ない! と私は刀を構える。

 相手も構えた。

 ――と、次の瞬間!

 目にもとまらぬ速さで服部半蔵が斬りかかってきて、私の腕を、一瞬で両方ともへし折った!

 ぎぇ~! あかん、強すぎる~!

 折れただけということは多分「峰打ち」だったのだろうが、刃のほうでやられていたら、絶対、腕がもげていただろう。

 夢の中とはいえ、それだけは嫌だー!


 私は、ばたっとその場に倒れる。

 服部半蔵は、もういいやと思ったのか、そのままどこかに行ってしまった。

 と、私のそばに、誰か味方の忍者がひざまずく。

 私はまたまたとっさに、

(あ……この人は、霧隠才蔵に違いない……)  

 と思う。

「おい、生きてるか?」

「い、生きてます……! うう、でも両腕折られた……」

「そうか。まあ、そうやって死んだふりをしてれば大丈夫だろう」

 そして、彼もどこかに行ってしまう。

 大丈夫……って、多分、とどめは刺されずに済むってことだろうが、よりにもよって死んだふりかよっ!? ああ、情けない。

 というところで、目が覚めた。

 それにしても、本当に情けない夢だったなぁ……


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