『お嬢様とお呼び!』
題名だけで、全てが分かる話。
ストーリーの整合性もくそもなく、思いついたエピソードを思うがままにルーズリーフに書きとめていった、まるで瞬間一発芸のごとき物語でしたが、友人たちの間では、妙に人気がありました。
何しろ、この物語を書いていた時期というのが、中学受験の直前だったのですよね……!
ストーリーの無茶苦茶さから、「ああ、とにかく、苦しい現実から逃れたい一心で書いたんだなぁ」ということがひしひしと伝わってきます。
さて。
ヒロインの名は、姫宮嵐。
さりげなくゲルマンの血を引く(意味もなく、祖母がドイツ人という設定)大金持ちのお嬢様です。
一般常識が完全に欠落していて、勝気でわがままで大胆不敵!
気の向くままに暴走しては、その度に周囲に甚大な迷惑をかけ倒す、まさに「嵐」の名にふさわしいカオスの落とし子でした。
ちなみに高校一年生。
そして、彼女だけでもじゅうぶん迷惑なところに、彼女の13人のイトコたちがついてくるから、もう大騒ぎです。
名前、全員分思い出せるか……?
衛、翔、潤、築、雷、涼、弓、冴、光……まだ足りませんね……
ちなみに弓、冴、光が女で、あとはみんな男です。
あ、思い出した! 剣、満、そして竜。あと、敬!
よし、これで、13人そろったぞ!
(そろったからといって、どうなるものでもないが……時間が経っても、意外と覚えているものですね!)
これがもし、今の私だったら、嵐さんに揃えて名前は全部「音読み・二音」で統一するか、一番年上の衛さんに揃えて「訓読み・三音」で統一したと思いますが、当時の私は、そのへんを全く気にしていなかったようです。
まあ、そもそもの内容がしっちゃかめっちゃかなので、小さなことですが。
この話は、嵐が、さる名門私立高校に入学するところから始まります。
今までは家庭教師をつけて勉強していたのに、急に学校に行くことになったのです。
確か理由は、単なる「嵐の気紛れ」でした。
この急な決定に慌てふためいたのが、嵐を溺愛しているイトコたち。
大事な彼女にもしものことがあっては――一体、高校で何があるつもりだったのか?――一大事! と、年齢が比較的近い六人が、我先にお目付け役を買って出て、そろって彼女と同じ学年に入学することを決意します。(オイ)
年齢が足りない者は、天才的な学力で合格をもぎ取り、
年齢が上すぎる者は、年齢を詐称し(おい)、
学力が足りなければ、金を積んで黙らせ(おいおい)と、まさにやりたい放題!
そんな事、できるわけがあるかッ! と大喝したいところですが、この作品に常識を求めてはいけません。
もはや現在の私にさえ理解できない次元を、登場人物たちは突っ走っていきます。
入学した嵐を台風の目として、次々と巻き起こる珍騒動!
あるときは、カン違いしたキザ男が彼女にプロポーズし、イトコたちにしばき倒されたかと思うと、またあるときは嵐みずから、中国マフィアの跡目争いに首を突っ込みます。
ときには嵐の忠実なボディガード・守屋さんにホレた女の子が現れるなど、甘く切ない(?)エピソードもあるものの、嵐の暴走ぶりは相も変わらず、
ライバルの純和風お嬢様・城ヶ峰ゆかりさんと白熱のお茶会バトルを繰り広げるわ、
某国の王女の駆け落ちには加担するわ、
あげくの果てには、ひょんな事から、中華風ファンタジー異世界にまで飛んでいってしまうという、まさに縦横無尽の暴れぶり。
とにかくひたすら色々ありましたが、ここでそれらの全てを語り尽くすことは到底できません。
というか、原稿もデータも現存していないので、細かいところは忘れました。
暴走お嬢様よ、永遠なれ……




