『林間学校 大そうどう』
この物語は、忘れもしない、私が初めて「書いた」物語です。
原稿用紙ではなく、横罫のノートにシャーペンで書きました。
かわいいウサギのキャラクターもの――今、検索してみたら、マロンク○ームというキャラクターでした――の、ピンクピンクしたノートの表紙に、黒マジックの汚い文字でデカデカと『林間学校 大そうどう』と書いてあるさまは、今にして思えば、ちょっと異様でした。
この物語を書きはじめたきっかけは、『まんぼう塾ものがたり』という本を読んだこと。
検索してみましたら、大好きな斎藤洋さんの作品でした。
個人的に、ちょっと運命を感じました。
さて、この『まんぼう塾ものがたり』、小学生の仲良し二人組の男の子が「まんぼう塾」という、ちょっと謎めいた男の人が経営する塾に通い、まあいろいろあった末にめでたく志望校の中学に入る……という話で、セリフ回しが面白かったので、私もマネして書いてみよう! と思ったのです。
ここで、今の私なら、即座に指導が入るところ!
『他の人の作品を、堂々とマネしてどーする!?』
まったくもってその通り!
その通りなのですが、これまで一度も物語を書いたことのない子供が、初めて物語を書くとなった場合、神のごとき天才でなければ、何らかの「お手本」が必要となるのは仕方がない……(自己弁護)
「これ、私が考えて、私が書いたの!」
と人に見せたらアウトですが、この物語は、誰にも(妹にさえも)見せることなく――横から覗こうとした母上を、猛然とタックルかまして横転させ、すごく怒られたというエピソードもありました――、ただ純粋に「書くという行為が楽しいから書いていた」ものなので、ひとつご勘弁いただきたいと思います。(誰に?)
さて、話を戻して――
物語の舞台は、小学校の宿泊行事、山や森のあるところに泊まりに行く「林間学校」の宿泊先。
仲良しの男子ふたり(明らかにパクっている)に、ちょっと気の強い女子ひとりを加えた三人組が、旅行中にいろいろと起こる事件を解決する、という話になる――予定でした。
途中で終わりましたが。
話は『ぼく』の一人称形式で進みます。
最初の文体として自然と「一人称」を選んだのは、『まんぼう塾ものがたり』の影響か……それとも、初心者にとっても「語りやすい」文体だったからなのか?
冒頭では『ぼく』と母親との会話をまじえつつ、旅行の準備の様子がいろいろと語られます。
着替えはちゃんと入れたか、酔い止め薬は持っていったほうがいいか、うんぬん。
そしてバスに乗り込み、旅行を始めた『ぼく』たちの周囲で、いくつもの事件が起こります。
しかし、事件といっても内容がシッチャカメッチャカなところが、さすが初心者の発想。
たとえば「森林オリエンテーリングからみんなで戻ってみたら、生徒がひとり行方不明になっていた」など!
普通なら、かなりの大騒ぎになるはずなのに、登場人物たちは全く動じません。
先生たちも、ちょっと慌てるだけで、普通に捜索が始まります。
さらに、捜索には、なぜかグループごとに分かれて、生徒たちも加わっています。
どんな危機管理や。二次災害が起こるぞ。
ちなみに行方不明になっていた生徒は、すぐ見つかります。
彼は、ちょっとした崖から滑り落ち、足を挫いていたのでした。
……いくら何でも、周りの奴、落ちたときに気付いたれや!
他の事件として「○○さんの時計(しかも、でっかい目覚まし時計)がなくなった!」というのもありました。
腕時計ならいざ知らず、そんな目立つ代物、誰が盗むんじゃ!?
ていうか、林間学校に、デカい置時計タイプの目覚まし時計を持参していたのか……?
とにかく、この物語は、『ぼく』の仲間の女の子が、
「時計を盗んだ犯人の目星はついた。あとで教えるから、○○時に、旅館の庭の、手水鉢のところに集合ね!」
と言っているところで終わります。
たぶん、犯人を考えるのが面倒くさくなったのでしょう。
犯人も考えず盗難事件を書くとは、なんと行き当たりばったりな……
それにしても『手水鉢』とは、小学生にしては粋な言葉を知っていたものですね。
ていうか、題名の『そうどう』が書けないのに、『手水鉢』は書けたのか!?
本当に、無茶苦茶すぎて、どこからツッコんでよいか分からぬレベル。
これが私の「処女作(完結してない)」です!
うん、なんか……無邪気と言おうか、何と言おうか……




