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はじめに

 突然ですが今ここに、「昔の作品群」について書き記そうと思います。


 遠い昔――具体的には小学校中学年くらいだったころ、私はすでに物語を作ることが大好きでしたが、それを「書く」ということはしていませんでした。

 ではどうしていたのかというと「語って」いたのです。

 唯一にして最大の聴衆は、私の妹。

 彼女が喜んで「おねえちゃん、もっとおはなしして」と言ってくれるので、私も喜んで、次々と新しい物語を生み出しては語り聞かせていました。

 

 そして、小学校高学年になった私は、あるきっかけから、物語を「書く」ことを始めました。

 これが、それ以来一度も途切れたことのない「物語を書く」という最大の趣味の始まりでした。


 これから語るのは、私が物語を「書く」ことを始めた、初期のころの作品たちに関する思い出です。

 

 百貨店の紙袋に、書き溜めた原稿が、袋を突き破るほど詰まっていた、あの輝かしき日々!

 やたらセリフが多く、空白も多く、文章は幼稚なものでしたが、あのすさまじい情熱は、我ながら本当に尊いものだったと思います。


 宿題をしているふりをしながら、プリントを脇へどけ、5ミリ方眼紙の桝目を、0.5ミリの青ペンで埋めていく――

 母上の足音が聞こえたら、さっと方眼紙の上にプリントを重ね、青ペンをシャーペンに持ち替えて、何食わぬ顔で勉強のポーズ。

 

 何十分もやっているはずの宿題が、全く進んでいなかったり、

「ちょっと見せて」

 と持ち上げられたプリントに、物語を書いた方眼紙がくっ付いていってしまったりということが度重なり、母上が泣きながら怒ったこともありました。


 私は中学受験をしたのですが(そして幸運にも成功裏に終わったのですが)、そのための受験勉強の最中でさえも、物語を書くことはやめられませんでした。


「受験が終わるまで、一切書くな!」

 と父上に叱られ、

「はい……」

 とは言ったものの、書きたくてたまらず、夜中、家族全員が寝静まってから、そーっと起き出して勉強部屋の机のライトだけ灯して、ずーっと書いていたこともありました。


 それほど、私は、物語を愛していたのです。


 その情熱は、今でも変わることなく私の胸のうちに宿り、羅針盤のように、私の行く道を指し示します――



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