第二話「自己アピールと呪文の詠唱は簡潔に!」
フッ…フッ…!本気を出せば三日で更新も…可能ッッ!!ごめんなさい過密スケジュールすぎます
それにしても毎日更新してる人はすごいね!尊敬するね!
転生した世界で俺が最初に見たものは、とてつもないスピードで近づいてくる一面緑の地面である。振り返ると燦々と輝く太陽が見下ろしている。つまり俺は今落下していることになる。
ドゴォーン……
かなりの高度から叩きつけられたにも関わらず、身体にはかすり傷一つ付いていない。転生後の身体の強靭さを期待したのだが、足に絡まるツタで妙に納得した。これはいわば逆さ吊りだ。どこかの森の木に引っかかったんだ。
さて、どうして降りよう?天地が反転した景色にいて血液が逆流しているにも関わらず、不思議と頭は冷静なものだ。
改めて自分の格好を確認する。疑問に思ったのは、今の俺が電車に轢かれて死んだ時の格好ではない事だ。
顔や身体はいつもの冴えない『27歳一般男性』である。しかし着ているものはスーツではなく、RPGで冒険者が最初に着るような麻布の服である。
「これが転生って事か……。」
十五分ほど前を思い起こすと、嫌味な営業スマイルを顔面に貼り付けたようなあの男の顔が思い浮かぶ。アイツの胸には確かに『異世界課』と書かれていた。
異世界。つまりここでは無い世界。
あのハローワークのような空間のことを言っているのだろうか?そんな疑問を一瞬で解決する答えはすぐそこまで近づいて来ていた。
「ガゥルルルル…………」
吊られた俺の前に近づいてきたのは、2メートルは有ろうかという猛獣である。後ろ足を使って立つからには熊なのだろうか?しかしソイツの頭には人間の身体なんて軽々しく貫けるほど巨大な鹿の角がそり立っていた。
「おいおいおいおい……こんな動物見た事ねぇよ……!」
そしてすぐに気づいた。なるほど、ここが『異世界』だ。
ソイツは俺を喰らおうとゆっくり近づいてくる。対してこちらはツタで吊られてバンジー状態だ。圧倒的に不利なのは誰の目にも明らかである。
「グルルルルッッ……!!」
曇った声と共にやってきた捕食者に、そろそろ冷静でもいられなくなる。現に下半身の感覚がもうない。
ざんねん!おれのじんせいはここでおわってしまった!そんな脳内ナレーションを確かに耳に残しながら、俺の意識は再び遠のいてしまう。
「……――……!!」
耳の奥でそんな声が響く。それが脳内に届くのに一抹の時間を要したあと、俺は目を覚ました。
視界にあの化物の姿は映っていない。そして足に絡まるツタの感覚もない。そして俺の前には美しい女性が立っている。
よし、もう一度状況を整理しよう。俺は落下し、森に(逆さ吊りで)着地する。そこで猛獣に襲撃され、目の前に美女が立っている。改めて考えても意味がわからない。ただ、ここが外ではなく民家であること、そして俺の身体に毛布が巻かれていることは辛うじて理解できる。つまり俺は救助されたのか……?
「――!?――…!」
目の前の女性は俺が目を覚ました事を悟ると、近づいて顔を覗き込んだ。
亜麻色のロングヘアーが最初に目に付いた。そしてどことなくあどけなさを残す目鼻立ち。最後に尖った長い耳の順で着目してしまう。立ち姿を見ると、モデル体型というのだろうか?すらっとした華奢な体躯に対してかなりの長身であり、やはりランウェイを歩くモデルを思わせる。
そして神秘性を漂わせたオーラに幼子のような無邪気さが同居している印象である。人間とは思えないほど美しい。
あまりの美しさに息をするのを忘れてしまったために、俺は大きく深呼吸をする。そして無謀にも会話を敢行する。
「あのー……貴女が俺を助けてくれたんですか?」
「――……!」
ダメだ。全く言葉が通じない。これからのグローバル社会のために英語を勉強しておくべきだったな……。多忙で勉強もしなかった自分を省みながら、ふと足下に目を落とす。銀の皿に透き通るような琥珀色のスープが注がれている。現世のコンソメスープに近いだろうか?
食べ物を見ると不思議と食欲が湧きだす。そういえば死ぬ前からほとんど何も口にしていないな……。俺の頭は警戒するよりも欲望を解消する方に働いたようだ。スープ皿に並々注がれたそれを一息で飲み干した。幸福感が喉元を通り、脳内物質にまで染み渡る。こんなにも美味いスープが現世にあるだろうか?空腹というエッセンスが仄かな塩味の中に溶けだし、幾重にも旨味が増したように感じる。
「あっ!良かったです、食欲はあるんですね。」
目の前の女性は驚いたようにそう言った。ん?今俺でもわかる言語で話さなかったか?
「美味しいスープありがとうございます。貴女が俺を?」
俺の口からも聞いたことのない単語がスラスラと出てくる。言いたいことがまるで翻訳機に通したように他言語になる。
「ラーグがご迷惑をおかけしました!私がきつく言っておいたので多分もう襲われないと思います!」
ラーグというのはあの怪物の事か?アイツがこんな少女の言うことを聞くとは思えない……。
「俺をここまで運んだのも貴女なんですか?」
「あっ、はい!こんな風に……“ロ・コモ”」
少女がそう呟いた瞬間、俺のそばに置かれた薪がふわりと宙に浮き、そのまま暖炉に飛び込んだ。
「ね?簡単でしょう?」
俺はこの世界で疑問を持つこと自体が馬鹿馬鹿しい事のように思えた。
とりあえず作品として一区切りついたらMuse nightやります。
次回はいろんなサイドにケンカ売ってくよ!