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勝手に見てろ、これが男の生きる道  作者: 北の大地は寒い
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魔力

魔法を覚えなければならないと決意した日からすでに1ヶ月が経った。

その間に魔法に関する進歩は全く無かった。


当然だが、不貞寝をした次の日にはカカリーン隊長にも質問してみたんだが



「魔法を使うには魔力を感じ、魔力を取り出し、魔力を操作する。操作可能な魔力に意思を通す事で魔法となる。精霊と違い人は己の体にしか現象をおこせないがね」


「自分には魔力というものが感じられないのですが、隊長はどの様な訓練で魔力を感じれるようになったのですか?」


「魔力を感じれられない・・・?ふむ、困ったな。人間というものは無意識でも多少の魔力が移動する。力を込めればその部分にな。それの移動している僅かな魔力を感じる訓練をするのだが・・・お前ら奴隷はその僅かな魔力の移動が首輪によって阻害されている」


「そうですか・・・ありがとうございます。あと、魔力を取り出すとはどういうことでしょうか?」


「魔力というのはへそ辺りに自分の全魔力がある。そこにある魔力は意思を通すには多すぎるのでな。そこから意思を通せる量かつ、強化に必要な魔力を取り出すということが必要なのだ」


「取り出した魔力を任意の場所に移動させ、意思を通すことで肉体強化という現象をおこすわけですね」


「そういうことだ」



俺は魔法の入り口で躓いた。

そもそも首輪は魔力を取り出す所を阻害してるわけだが、魔力を感じる事ができないうちに首輪を付けられた俺はまったく魔力の存在を感知できないでいるわけだ。

恐らくここにいるカカリーン小隊の奴隷兵はみんなそうだろう。

皆少なくとも6歳には奴隷になっているのだから。


この1ヶ月俺は魔法の訓練として筋トレをしていた。

カカリーン隊長がいう無意識の魔力の移動を首輪が阻害していても

魔力が移動しようとする気配、もしくは無意識下で魔力を動かそうとするシグナルを

感じることができるかもしれないからだ。


ついでにいえば筋トレってのは対兵士用の対策として必要だからだ。


結果として筋肉はついた。

恐らく体を鍛える方法、筋肉が強くなる仕組みは前世とかわらない事が

証明された。多分・・・とつくが。



「カーイーンー、お前さー、夜中に筋トレするのやめてくれない?別にうるさいって事は無いんだけどやっぱ気になるんだよね。あとお前寝なくてよく訓練もつよね」


隣で寝てるアラベルには悪いと思っていたのだが、ついに文句を言われてしまった。


「ああ、悪いとは思ってたんだ。寝ないのは慣れかな」


「いやまぁ、お前がやりたいなら別にいいんだけどさ。なんで急に筋トレなんてはじめたんだよ?」


「んー、別に筋トレが重要じゃないんだよ。魔法が使いたくてな、魔力を感じれないか色々と試してたんだよ。カカリーン隊長によると力を込めると無意識で魔力が動くらしくて、それで筋トレしてたってわけさ」


「おー!それで感じ取れたのか?」


「いや・・・どうも首輪の力で魔力が動かないらしくてな、1ヶ月やってみたけど全然ダメだ」


「そうか・・・俺もちょっとやってみたけど魔力ってのはわかんないよな。あ、俺は筋トレはしてないぞ」


そういってアラベルは笑った。


「しかし、首輪で魔力を止められてるから感じられないのか・・・そういやお前はカカリーン隊長になんか質問してたもんな。やっぱ奴隷で魔法を使うってのは無理なのかな」


「俺は諦めちゃいないけどな。首輪の力で魔力を取り出せないっていっても、取り出しにくくしてるっていうレベルなんだ。きっとなにか方法はあるはずさ」


「おう、俺もなんか考えてみるからカインもいい方法見つかったら教えてくれよ!あ、筋トレの時は静かに頼むぜ」




アラベルと話した夜、筋トレはせずに考え事に集中していた。

別にアラベルに言われたからではない。いや、アラベルと話した事で気になる所があったからだからそのせいともいえる。


カカリーン隊長に教えてもらった奴隷の首輪の力は3つ

1.魔力を吸う

2.魔力をかき回して操作をしにくくする

3.装着者にあわせて可動する

これに後から聞いた居場所を特定するという力で4つだ。

1に関しては寝ている間は止まるらしい。

しかし1は何故付いているのだろうか?


考えるに4はともかくとして2と3については1で吸った俺の魔力を使っているからなんじゃないだろうか?


つまりだ、『2.魔力をかき回してる』は恐らくへそ付近にある魔力に現象を起こしているのだろうからわからんが、

『3.装着者にあわせて可動する』という方は起きている現象は首輪のわけだから、俺の魔力は首輪で働いているという事になる。


そこで俺は『魔力はへそから首輪まで移動している』という仮説を立てた。



今日はこの仮説を元に魔力を感じることに挑戦する事にする。


いつもの筋トレと違い最初の頃の瞑想のように胡坐で座ることにする。

魔力はへそから首輪に流れるわけだ。俺の仮説ではだが。

魔力が引力に引かれるのかはしらんが、もし引力に引かれるのであれば

横になっている場合より座っている場合の方が引力により抵抗を受けることになる。


その抵抗が違和感として魔力を感じるきっかけになるかもしれないからだ。



どれくらいそうしていただろう・・・


へそから首輪に流れるとして直線で動くとは限らない。

それを失念していてずっと腹付近から首の辺りをぼんやりと意識していたが魔力はわからなかった。


そこでこれ見よがしについている首輪の石と首の接地点に集中して

何かが流れるのを意識してみる。

ここならばきっと魔力が通るはずだからだ。


・・・!

感じる・・・

首輪の石の部分に俺の体から何かが流れ込んでいる。

これを魔力と思うことにする。


そうするとどうだろう・・・

今まで感じられなかったのが嘘のように魔力を感じることができる。


「おおぅ・・・・・」


感嘆の声が漏れてしまった。


すでに真夜中を過ぎていたのだろう、誰も反応する者はいなかった。

本来ならばそろそろ寝なければならない時間なのだが、今日は延長戦だ!



首輪付近で感じた自分の魔力をへそ方向へ辿っていく事にする。

首輪に流れる魔力は非常に細いようだ。小指・・・よりも細いな。


糸の様な魔力が胸の辺りに来たところで途端に左右に振られている。


むむむ・・・前後左右に魔力は動き回っていて、非常に捕まえにくい。

法則とかってあるのか?かなりランダムに動いている。


見逃しては捕まえる、もしくは首まで戻って辿る。

これを繰り返した結果、徐々に広い範囲を感知する事ができるようになってきた。


ジワリと汗をかいてきて、本当に寝ないと不味い時間になった頃

へそ下の魔力の塊にたどり着いた。一度感知できれば、次からは自然と其処にあることがわかる。


よし・・・これで明日起きたらまるでわからないとかだったら泣くな。


へそ下にある魔力の塊は感覚的には拳大、そこから釣り糸程度の魔力が蛇のように首輪に向かって登っている。その動きは非常に複雑で正確に捉えるのは未だに難しい。


もう寝るなければ明日が大変なのだが、最後に魔力の塊から取り出す事を試してみる。

取り出す量は首輪に流れている量と同じ程度にしてみる。


ん?取り出すってどうやるんだ???


魔力の塊の状態を感じると首輪に向かう魔力と同じようにランダムに回転してるようだ。

と、言うよりは塊の回転によって糸が動き回ってる感じのようだ・・・


魔法の発動は意思の力なのだから魔力の移動も意思でできるはずだ。

順番があるはずだ・・・

まずは塊の回転を止める・・・


止まれ・・・

止まれ・・・

止ま・・れ・・・

と・・ま・・・・れぇ・・・・


無意識に呼吸が止まって、へそ付近に力が篭っていった。

恐らく首輪によってであろう塊の回転は俺の意思の力で徐々に速度が遅くなっていく、


んーーー

んーーーーー

んーーーーーーー


そしてついに完全に回転を止められた!


と、同時に首輪が縮んで首を絞める!!!


「がっ・・・」


首が絞まったせいでうめき声が漏れる

集中力も切れて魔力の制御が外れて感知もできなくなってしまった。


そするといつの間にか首輪は元の太さに戻っていた。


なんだよ・・・今のは・・・・


ダメだ考えるのは明日にしよう。

その後きちんとへそ下の魔力塊を感知できる事を確認して眠ることにした。







次の日は寝不足ではあったが体に不調はなかった。


超回復様様ですね

魔力塊の感知も可能で、今朝も元気にランダム回転してる。


しかし魔法にばかり傾倒していて基礎技量が疎かになっては本末転倒なので、

朝の訓練は体力向上と槍の技術向上を、昼の作業中は槍のイメージトレーニングと筋力アップのために負荷をかけていく。


夕方の訓練はランニングと模擬戦だった。


「カイン、今日は俺が勝たせてもらうぞ!」


「キルビーはいつもそれを言うが、大抵は俺が勝ってるよな」


小隊内でだいたい4戦するのだが対戦はカカリーン隊長が組む。

これは実力が近いもの同士を選ぶ事が多いから、俺、アラベル、キルビーは毎回の様に対戦をする。


キルビーは絶対に先手を取る。

アラベルや俺に比べて瞬発力がないのを知っているからだ


今回も俺の左足を狙ってまっすぐに槍を突き出してきた


突きの場合当然後ろに下がると追撃がしやすいから下がってはダメだ

俺はキルビーの槍に合わせて自分の槍で横から叩き軌道を逸らす。


すぐさまキルビーは槍を引き、距離を詰めながら今度は上半身を狙ってくる

同じく横から槍を合わせて軌道を逸らすのだが、間合いが近い。


槍で突くには当然ある程度距離がないと威力がでない。

上半身の力だけで槍を振るう間合いは当然力の強いキルビーの間合いだ。


毎度この間合いに持ってこようとするキルビーなんだが、やりあうたびにうまくなってる気がする。

俺の場合相手の土俵で戦うことにしてるからわざとなんだが、それでも誘導されてるのはかわらない。


互いに力技になりながら数合打ち合う。

キルビーが腹を狙った突きに対して横からではなく上から叩きつける様に槍を振るい

同時に半歩後ろに下がる。


キルビーの槍は地面に叩きつけられ、体が前に流れた

キルビーが槍を引ききる前に俺は1歩前に出ながら槍をキルビーの首元に突きつける。


「くそっ!」


キルビーが悪態をつく


「力自慢だからって速度重視で握りを甘くするから狙われるんだよ」


今回のキルビーの敗因は近い間合いでの打ち合いになった時に力任せに槍をふるうために

無意識なのだろうが握りが緩くなってきてた。


きちんと握っていれば上から叩きつけられようとも、体勢を崩す事もなく

半歩下がった俺に追撃が可能だったはずだ


「ふむ、お前たちはいい試合もするな。これからも切磋琢磨するんだぞ」


カカリーン隊長から褒められたが、キルビーは悔しそうしてる


「アラベルがカインは寝不足だから今日は勝てるって言ってたんだが、お前は本当に寝不足なのか?」


「まぁ、今日はちょっと寝不足気味だけど、調子が悪いわけじゃないよ。少なくともキルビーに勝てる位だよ」


「くっそー、次は負けん!」


「楽しみにしてるよ」



槍の技術は確実に上がってると思う。

最近じゃキルビーにもアラベルにも負けてない気がする。

しかし慢心してる暇はない。筋力と技術アップで兵士に負けないようにならなければならんのだから。


後は騎士に勝つために魔法を使えるように夜中に訓練だな。

井の中の蛙で天狗になっていて、騎士にあっさり殺されましたじゃ神様に爆笑されて終わるだけだ。



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