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勝手に見てろ、これが男の生きる道  作者: 北の大地は寒い
4/6

魔法

夕方の訓練時間を使ってカカリーン隊長の講義を受けていた。

初めは軍組織についての講義だったが、後半は魔法=魔力利用法の話だった。



「カカリーン隊長は騎士ですので当然体内外の身体強化が可能なのですよね?今までの訓練で使っておられたのでしょうか?」


「使うことはできるが、お前たちとの訓練では一度も使っておらんよ。魔法による強化は足し算だからな、普段は基礎体力の向上と魔法の錬度は別で鍛えているよ。お前たちが昼の作業中に俺は他の騎士と魔法を含めた訓練を行っているからな」


「一度、魔法を使って手合わせをしていただけないでしょうか?万が一騎士と戦わなければならない場合に初見では戸惑ってしまうと思います」


「ふむ、カインの言う事ももっともか。相手をしてやろう、思いっきりこい」



俺は横に置いてあった訓練用の槍を手に立ち上がり、小隊の皆の間を抜けてカカリーン隊長の横に進み出た。

隊長までの距離は5m程、隊長も訓練用の槍なので先が潰れているものだ。長さは共に1.5m程で互いに一足で間合いに飛び込める。


「では魔法を使っての騎士の戦闘を見せよう」


カカリーン隊長が全身に力を込めると隊長の全身がうっすらと湯気がたっているように揺らぎだした。

魔力を纏ったってことかな・・・?


隊長は構えもとらず攻めても来ないようなので、一気に飛び込んだ。

訓練の通り心臓に向かって威力よりも速度を重視した突きを放つ。


隊長は全く動かない。勢いがつきすぎて途中で止めるなんてできないぞ・・・

隊長に槍が当たると思った俺の槍は空を裂いた。いつの間にか隊長は半身になっていて、

片手で槍を操って踏み出した俺の左脚を払った。


非常にゆっくりな動作で太もも辺りを払うというより押す感じだったが、すごい力で俺の脚はあっさりと刈取られ尻餅をついてしまった。

そして、そのまま槍を俺の顔の前に突きつけてきた。


小隊の誰もが声を発せ無かった。

多分槍をかわした動きが誰も見えなかったんだろう。俺だってみえなかった。



「槍が当たったと思ったか?騎士の反射速度は非常に早い、そして動きも当然機敏になる。兵士との違いは兵士では反射速度が上げれないためと、肉体の保護ができないために急制動急発進ができない。騎士と兵士に肉体強度的差はそんなにない。しかし、カインは槍がゆっくりだったから槍を足で受け止めたな。力では圧倒的に兵士や騎士の方が上なのだからこけてしまった、というわけだ。つまり最後の足払いは兵士であればだれでもできる」


負けた理由はわかった・・・・・・

技術うんぬんではなく基本性能が段違いだった。


「カカリーン隊長は自分の突きが当たる所でかわす余裕があったんですか?」


「もちろんしっかり見てかわしたよ。止まって見えるとは言わんが見失う様な速度でもないな」


「自分には隊長の動きがまるで見えませんでした・・・」


「まぁ、そうだろうな。みんなもわかったと思うが騎士と戦うのは犠牲が必要となる。これはお前らが奴隷で魔法が使えないからじゃない。兵士だって騎士と戦う場合は複数であたり隙を突くのだ、その過程での犠牲はある程度覚悟の上だ。それほど騎士の反射速度は強化できないものにとっては脅威なのだ」






模擬戦が終わると講義は終了となり、カカリーン隊長は帰っていった。


小隊の皆は全員で隊舎へ移動し飯を食べる事になるのだが、先ほどの結果がショックだったのは俺だけじゃなかったのか皆だんまりだった。


クラブ農耕隊は3階建ての建物に奴隷だけで住んでいる。1階は全員が入れる食堂と調理場で2.3階が各小隊毎の10人部屋が5部屋ずつある。

灯りは1階にしかなく、それも夕食の時しか使えない。具体的には各小隊で蝋燭1本だけだ。

それが消えるまでに皆が食べ終わらなければならないので同時に食べ初めてできるだけ早く食べ終わるようにする。

残った蝋燭は部屋で灯りに使えるからだ。



部屋には窓はなく入り口は1つ。鍵がかけられることはないが、外側から鍵がかけられるようにはなっている。

建物の入り口も1つしかなく、そこには兵士が1人見張りがいる。逃亡防止と騒ぎが起きた時の仲裁役だ。

奴隷の待遇としては軍は破格だから逃げる奴はいないし、逃げても首輪の機能で場所がわかるそうだ。



飯の後部屋に移動した俺は夕方のカカリーン隊長との模擬戦について考えていた。

俺は何が何でも生き残りたい。

正直今居るところがどこなのか知らない。奴隷にそんな知識はないし、戦争がどうのとかもわからない。

しかし、生まれ変わったからには生きたいし、ただ生きるだけじゃなく奴隷から解放されて自由に世界をまわってみたい。


俺達は成人して奴隷兵となれば、15年程真面目に仕事をすれば解放されるらしい。

それが俺達の購入金額に対する対価を稼ぐまでの年数だ。前世だと小作農家は儲からない。

多分年収だと200万もいかないだろう。更にこの世界の奴隷の給金なんて前世と比べられない程安いはず。

ざっくり年収40万として15年で600万。うん、推定としても憂鬱になる俺の価格だな。

カカリーン隊長の話が本当なら口減らしの意味もあるみたいだからそんなもんかもな。


解放されるといっても希望制で、解放されても仕事がなくて奴隷落ちしそうだと思ってずっと奴隷兵として

生きていく人も多いそうだが。俺はそこまで生き残れれば解放してもらうつもりだ。


13歳から15年だから前世の年齢よりは若い時に解放されることはわかっているが、それまでに

戦争が起きれば前線に立たねばならない。そうなれば今のままでは生存は難しい。

だってカカリーン隊長クラスの実力者は、それこそ騎士の数だけいるわけだ。

対峙したら即死亡だ。


対兵士は力と技を鍛えればいい。

俺には神から貰った、他よりちょっと強い体と、超回復の能力がある。

この2つがあわされば筋力はアップは他人に比べて有利なはずだ。前世と同じ理屈で鍛えなれるならば、筋肉を酷使し、そこからの回復段階でより筋繊維は太くなり強い力を出せるようになる。

俺には超回復があるから筋肉痛の期間が短い。具体的に言えば数時間寝れば治る。まぁ、前世と筋肉が強化される原理が違ったら話しは別だけどね。


技についても超記憶と超感覚により習得が早くなる。これはそういう意図で貰った特典なんだから間違いない。

今までの感じだと、ただ漫然とやってもだめだがきちんと考えながらやれば、体が早く覚えい言ってくれる。


だが、これだけでは騎士以上と戦うのは無謀すぎる。

騎士との対決に兵士以下のものが出合った場合、犠牲を覚悟に戦うのであれば

最初に犠牲になるのは間違いなく奴隷だろう。


だから俺が確実に生き残るためには騎士を単独で倒すだけの実力が必要だ。

犠牲として最初にぶつけられる場合も十分に考えられるのだから。

カカリーン隊長が見せた反射速度を俺も手に入れなければならない。


つまり、魔法だ・・・少なくとも体内での身体能力強化が必要だ。

カカリーン隊長は難しいと言ったが、やらねばならん。

俺には超感覚があるし、他の奴隷よりは有利なはずだ。



とりあえず自分の布団に包まって考えをまとめると、周りの皆はもう寝息をたてていた。


布団といっても日本にあるようなふかふかのふとんではない。

1.5m4方の布を2枚支給されていて、1枚を2つ折にして敷き1枚をかける。

もしくは寒ければ2枚重ねで包まり丸まって寝る。


前世であればこんなもので寝ていたら、次の日おきたときに体がかちこちだっただろうが

今はそんなことない。

しかも超回復の効果なんだろうが、大体4時間程の睡眠で十分に次の日の活動が可能だ。


今まではこの夜の時間は槍のイメージトレーニングに使っていたが今日からは魔法の訓練だ!




思いたったが吉日とはいうが、俺の場合は即座に躓いた。


だって魔法=魔力利用法なわけだが、俺は魔力なるものがまったくわからん。

そもそもカインは生まれてすぐに奴隷の首輪を付けられたんだが、

魔力を首輪でかき回されてても特に問題がない。

一度でも外してくれれば違和感なんかを感じられて、それが突破口になると思うんだが・・・


武道の始業とかで良くある瞑想とか、自然体でとか、体の奥にあるものを意識とか、前世で見た感じのことを試そうと思ったんだが


そもそも俺は瞑想なんてしたことがなかったから目を瞑ってボーっとしてみたが、これで瞑想というやつができてるかわからなかった。

が、結果として魔力なんてものは感じられなかった。


自然体にしても、胡坐をかいて親指同士をあわせ残りの8本を組んで、所謂座禅っぽい事をしてみたが、

これもやっぱり特別な感じはわからなかった。


体の奥にあるものを意識とかいっても、へそのちょい下を意識してうんうんしてみたが、これもやっぱり全く意味がなかった。


そもそも感じれないものを意識するっていうのが矛盾してる。


体力を限界まで使えばもしかしたら何かわかるかと思って腹筋しまくっていたが、1000回を越えたあたりで疲れはするが一向にわからない。

飽きるまでやってみたがそれでも何もわからなくて、不貞腐れて寝ることにした。



まだ初日だ、仮に戦争が起きたとしても訓練兵の間はよっぽどの事が無い限り戦闘に出ることは無い。

つまり後3年程は時間があることになる。


魔法を覚える事を決意した初日に何も成果があがらなかったが、自分への言い訳しつつ俺は眠りについた。



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