第八話 「気付かれた?」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※更新は不定期です。
うゆくんとの“甘いひととき”も終わり、あっという間に放課後になった。
帰る家は、うゆくんと一緒だ。
何も起きなければ、そのまま帰る——はずだった。
一緒に車の迎えがある場所まで歩いていると…
そこには、できれば当分会いたくなかった人物が立っていた。
「やあ、鈴乃。
もう帰るのかい?
良かったら、少し話さないか?」
(うわぁ…また出た……)
しかも、その視線は私ではなく、
一瞬だけ、うゆくんに向けられた——そんな気がした。
しばらくは会わないと思っていた白水が目の前に現れ、私は分かりやすく戸惑ってしまう。
その様子を察してくれたのか、
うゆくんが、まさかの行動に出た。
「お姉様…
帰ってから、僕の勉強を見てくれる約束は覚えていますか?」
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ。
うゆくんが白水を見つめる目に、冷たい色が宿ったように見えた気がした。
けれども今は、それどころではない。
私は、この場をどう収めるかに意識を集中させた。
「え…ええ……
…もちろん、覚えているわ。
申し訳ないのだけれど、そういうことですので」
私がそう断ろうとした、その瞬間。
まるで遮るかのように、白水が口を開いた。
「なら、なおさら俺も邪魔させてもらおうかな。
いくら“遠い親戚の義弟”とはいえ、
個室で男女が二人きりというのは——
婚約者として、あまり感心しないな」
(…コイツ、先手を打ってきたわ)
さすがと言うべきか。
名目上とはいえ“婚約者”という立場からそこまで言われてしまえば、
さすがに無碍にはできない。
「ほほほ…
少し、心配しすぎではなくて?」
「…なんとなく、君が俺を避けているような気がしたんだ。
それに前までは俺のことを“呼び捨て”してたじゃないか」
(しまった——!)
本当に迂闊だった。
すっかり忘れていたが、
確かに鈴乃は彼のことを呼び捨てにし、
それなりに馴れ馴れしい距離感で接していたのだ。
まさか、そこを突かれるとは思ってもいなかった。
痛恨のミスである。
私は咄嗟に、もっともらしい言葉を並べることにした。
「さすがに、いつまでも子供の頃のまま
呼び捨てというのも、外聞が良くないと思いまして……
それに、貴方様は私のそういう態度を
あまり良く思われていないのではないか、と感じたものですから。
これを機に、少し改めようと思っただけですわ。
ですから、何も心配なさることはありません」
我ながら、よく咄嗟にここまで台詞を並べたものだ。
「外聞、か…
君がそこまで考えるようになったとは、正直意外だよ。
まあ、冗談さ。
君たちの関係を疑っているわけじゃない。
…今日は、この辺で引いておこう。
また、ゆっくり話そうじゃないか」
(一難去ってまた一難とはこのことね…辛いわ……)
…本当に、食えない男である。
こうもあっさりと引き下がるとは、正直予想外だった。
私は胸の奥に小さな違和感を残したまま、
“これは、もう少し慎重に立ち回るべきかもしれない”
そんな考えが、ふと頭をよぎった。
——そう、
私の視界のすぐ端で、
うゆくんの瞳が、ほんのわずかに冷たく翳っていたことにも気づかないまま。
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鈴乃ちゃんはもう少し推し以外にも目を向けて欲しいものですね☺︎
疑いが晴れるといいのですが…




