第三十七話 「生徒会長の秘密①」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※次回も更新は未定です。
ある日。
生徒会室には、珍しく誰もいなかった。
静まり返った室内で、
ふと、生徒会長の机の上に視線が止まる。
そこには、一冊のノートが置かれていた。
——どう考えても、怪しい。
私は警戒しながらも、そっと近づく。
表紙を見て、ふと思った。
——もしかして、日記?
もしそうなら、完全にプライベートということになる。
……だが。
プライベートを覗く罪悪感など、1ミリもない。
これまで散々嫌がらせをされた恨みを今ここで晴らし、
尚且つ、“彼”の弱みを握れるかもしれないのだ。
見ない理由など存在しなかった。
私は迷わずノートを開いた。
「……え?」
意外にも、そこに書かれていたのは、
大量のお菓子のレシピだった。
しかも、そのどれもが妙に見覚えのあるものばかり。
(……どこで見たんだったかしら)
すると——
ノートの隙間から、
ひらりと一枚の紙が床へ落ちた。
「……ん?」
私は反射的に、その紙を拾い上げる。
折り畳まれていたそれは、
どこか丁寧に扱われていた形跡があった。
メモ?
……いや。
(……何これ)
妙に気になる。
私はそっと紙を開こうとした。
——その瞬間だった。
ガチャ。
外から、扉の開く音が聞こえた。
「……誰かおるん?」
ここ最近で聞き慣れたすぎた、あの癖のある話し方。
(っ——!?)
心臓が大きく跳ねる。
まずい。
反射的に、私は紙を握り込んだ。
どう考えても、この状況は言い逃れできない。
慌ててレシピノートを閉じ、
何事もなかったかのように机へ戻す。
だが——
手の中の紙だけは、戻す暇がなかった。
(やば……っ)
足音が近づいてくる。
考えるより先に、
私はその紙を制服のポケットへ突っ込んだ。
その直後、すぐ扉が開いた。
「……鈴乃はん?」
私は咄嗟に振り返り、
できる限り平然を装った。
彼はめざとい男だ。
だからこそ、本当に誤魔化せていたのか。
苦笑いになっていなかったか。
変に挙動不審になっていなかったか。
生徒会の仕事中も、私はずっと気が気ではなかった。
けれど——
結局、最後まで何かを指摘されることはなく。
どうやら、なんとかやり過ごせたらしい。
(……寿命が縮んだわ)
私は自分の家へ帰るなり、奈々にお風呂の準備をしてもらった。
そして、制服から部屋着へ着替え始める。
その時だった。
ポケットに触れた指先に、小さな違和感を覚える。
(……あ)
あの時、咄嗟に突っ込んだ紙。
すっかり忘れていた。
私は何気なくそれを取り出した。
だが——次の瞬間。
思わず、息を呑む。
「……え?」
それは、“紙”ではなかった。
一枚の写真だった。
しかも。
その写真の一部は、
赤く、ぐしゃぐしゃに塗り潰されていた。
まるで、そこだけ何度も何度もペンを走らせたように。
それは、とても異様なものだった。
私は眉をひそめながら、そっと写真を近づける。
すると……塗り潰された赤の部分に、微かに文字が見えた。
(……文字?)
よく目を凝らす。
そこには、「可愛い」という赤い文字が、何度も何度も重ねるように書き込まれていた。
そのせいで、遠目には写真が赤く塗り潰されているように見えたのだ。
けれど。
そこから滲み出る執念は、ぞっとするほど重かった。
背筋が、じわりと冷えた。
それと同時に、得体の知れない恐怖が胸の奥に広がっていく。
(……何、これ)
写真に映っているのは、笑顔の女の子らしき姿。
だが、そのシルエットには見覚えがあった。
長い髪。
華奢な肩。
どこか気品のある立ち姿。
——どう見ても。
(……雅ちゃんよね、これ)
いや、
“っぽい”ではない。
もう、雅ちゃんでしょ。
私は乾いた笑みを浮かべながら、
改めて写真を見つめる。
そして、
ひとつの可能性に思い至った瞬間——
ぞわり、と全身が粟立った。
(……もしかして)
瀬屑 政宗。
あの男。
——雅ちゃんのストーカーなんじゃないかしら。
もし、そうだとしたら。
それはもう、
笑い話では済まされないレベルの一大事である。
私は、その翌日から。
瀬屑 政宗の動向を探ることにした。
……とはいえ。
相手も相手である。
こちらを警戒しているのか、
以前にも増して、やたらと遭遇率が高い。
廊下を歩けば現れる。
食堂へ行けば、いつの間にか視界にいる。
生徒会室でも、気づけば、こちらを見て笑っている。
(……暇なのかしら、あの男)
あまりにも自然に現れるせいで、
段々こちらの感覚まで狂ってくる。
しかも厄介なことに——
観察を始めて数日経っても、
彼が雅ちゃんへ接触している様子は、一切見られなかった。
(……おかしい)
あれほど執着しているように見えたのに。
話しかけているところも。
後を追っているところも。
それらしい行動は、何ひとつ見つからない。
まるで。
“最初からそんな事実など存在しない”
とでも言いたげだった。
私は、生徒会室で書類を整理するふりをしながら、
ちらりと彼へ視線を向ける。
彼はいつも通り、飄々とした笑みを浮かべながら、何事もない顔で仕事をしていた。
……だからこそ、気味が悪い。
(本当に、一体何を考えているの……?)
あの写真を見てからというもの。
私は彼の笑顔を見るたび、背筋にうっすらと冷たいものが走るようになっていた。
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瀬屑の秘密を暴露していくよぉ〜ぅ☺︎




