第二十九話 「強制イベント発生」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※次回も三日以内に更新予定です。
私と白水の目論見通り——お茶会は決行された。
ちなみに場所は宝来邸である。
しかし……
二人は始まりから一向に口を開かない。
重たい沈黙が、その場を支配していた。
そのうえ、雅ちゃんは私を怪訝そうに見つめている。
——ついに、耐えきれなくなったのか。
「あの〜……
今日ってなんで俺、呼ばれたんですかね?」
「………」
「………」
「………」
「こ、この紅茶美味しいですね……」
(き、気まずい……)
気まずすぎて、野くんが一人で会話を回している。どうしよう……
私は恐る恐る、他の二人へ視線を向けるが、白水と雅ちゃんは至って普通にしている。
このふたり、心臓が強すぎる……
私も、おそらく野くんと同じで沈黙が苦手なのよね。
そう嘆いていると——
驚くことに、雅ちゃんが野くんの問いに答えた。
「あら、私たちは四大財閥の子息女よ。
四人で集まったからって、何ら問題ないと思うけど」
「それに……
い、一応……みんな婚約者同士なのだし」
野くんは、そんなことは分かっていると言いたげに「はぁ……」と息を漏らした。
そんな彼の反応に、雅ちゃんは一瞬だけ不安そうに表情を揺らしたものの、
すぐにいつもの表情へと戻る。
そして、再び沈黙が訪れる。
「あー、もうダメだ!
お前の言ってることは間違ってないんだけど、そうじゃないっていうか……」
「“なぜ四人で集まる必要があったのかが知りたい”ということだろ?」
「そう!
あ、いや……そうです。はい」
野くんは、勢いよく沈黙を破った。
「理由か。
……そんなものは、特に考えていない」
「え?」
「……え?」
「………」
白水なら何か考えていると思っていた分、思わず野くんと声が重なってしまった。
雅ちゃんはというと、まるで何も問題ないかのように平然としている。
そして、紅茶のカップをソーサーに戻し、雅ちゃんが口を開いた。
「そういうことでしたら、私は帰らせていただきますわ」
そう言うと、スッと席を立ち、そのまま立ち去ろうとする。
「……待て」
白水が静かに声をかける。
「俺が呼び出した理由は特にはないが、
俺の婚約者が、君たち二人のことを心配していてな」
その言葉に、雅ちゃんは一瞬、顔を引き攣らせた。
「あら、少し前まではご婚約者様に何の関心もないように振る舞っていたのに。
随分とお優しくなられたのですね」
「お、おい……」
雅ちゃんはにっこりと微笑みながら、白水へと嫌味を述べる。
どうやら雅ちゃんは、私だけでなく白水のこともよく思っていないらしい。
けれど白水は、何も言わずその言葉を受け止めていた。
野くんが必死に割って入ろうとするが、雅ちゃんは止まらない。
「それに、愛されている方はやはり違いますわね。
他人である私たちの仲まで心配してくださる余裕がおありだなんて……」
雅ちゃんは笑顔を崩さないまま、
目の奥だけは、まったく笑っていない。
さすがは私と並ぶ悪役令嬢なだけあって、覇気すら感じさせるものだった。
「でも——悪いですが、
余計なお世話ですわよ?」
「もう二度と、私たちの関係に口出しなさらないでくださいまし」
「お前いい加減にしろよ。
なんでそんな言い方をするんだよ」
野くんは、苛立ちを滲ませながら雅ちゃんを見つめた。
「でしたら、あなたがもっとしっかりするべきなのでは?」
「家を継ぐのは長男だからと不貞腐れて、遊び歩いて——
やるべきこともきちんと果たしていないから、心配されているのではなくて?」
「お前には関係ない」
「二人とも!
落ち着いてください!」
二人の喧嘩がヒートアップしてしまい、
私は思わず勢いよく二人の間に割って入った。
雅ちゃんは、何か言いたげに唇を噛んだが——…
「もう、結構よ」
そう言って白水に今日のお礼だけを伝え、そのまま帰ってしまった。
私は衝動的に、彼女を追いかけた。
幸い、まだ遠くへは行っていなかった。
私は慌てて、彼女を呼び止めようとした。
——その時。
彼女は、泣いていた……
私は思わず伸ばしかけた手を、ぎゅっと握りしめた。
声も、喉の奥に押し込める。
けれど、どうやら気づかれていたらしい。
「何か用?西園寺 鈴乃。
……それとも、私を笑いにでも来たの?」
「そんなこと、絶対にしないわ」
雅ちゃんは、大粒の涙を流しながらも皮肉を口にした。
「……その、悪かったわね」
「この前の、あんな姿を見たら……
心配になるのも当然よね」
「なのに、私……
ずっと八つ当たりしてしまっていたわ」
「………」
「……あなたが羨ましかったのよ」
「風音様は、あなたのことが好きだし……」
「それは……」
「少し前までは、貴方たちも私たちの関係と似て歪だったから……
それでも、まだ許せたの」
「それに……
片思いしてる姿も、私と似ているって——勝手に思っていたの」
(か、片思い……)
私のそれは、そんなに純粋なものではなかったし、もう好きではないと否定したいのは山々だが——
話の腰を折るわけにはいかず、私は黙って耳を傾けた。
「けど、あなたが溺愛されてることに気づいたら、嫉妬してしまったの。
私の好きな人は、貴方を見てるのにって」
「自分が浅ましかったわ。
本当にごめんなさい……」
「けれど、私たちのことはもう放っておいてほしいの……」
雅ちゃんは、目を少し腫らしながら、痛々しい表情で笑った。
でも——私は、全てを知っている。
だからこそ。
「……それは、できないわ」
「……っ」
「だって——
野くんが私を好きだっていうのは、
全部“勘違い”なんだもの」
その言葉に、雅ちゃんの表情が固まった。
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