第二十六話 「歯車」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※次回も三日以内に更新予定です。
「で?
何故あんなことになった」
鋭い眼孔で私を睨みながら、ドス黒いオーラを放つ白水。
私はだらだらと冷や汗が止まらず、青ざめた顔で萎縮した。
「ええと……
その、実は……」
「は?
あの二人は実は両思いだと?」
私は観念して、あの二人についての全てを白水に話した。
そう。
あの二人は……歯車一つさえ違えば、結ばれていたはずの二人なのだ。
遡ること——10年前。
これは、幼い頃の野くんと雅ちゃんの話だ。
野くんは、それはそれは可愛らしい男の子だった。
けれど、野財閥として生まれた長男は嫌味なほどに優秀であり、その次男である野くんは当然のように比較の対象となった。
“長男に比べれば出来損ない”
そんなレッテルを貼られ、妬みや嫉みを持つ者たちから虐められていたのだ。
あるパーティでのこと。
いつも通り、野くんは虐められていた。
そこに現れたのは、まるで童話のお姫様のような少女——雅ちゃんだった。
彼女はいじめっ子たちを、見事に撃退してみせた。
その時、彼女はこう言ったのだった。
「あなたの涙は綺麗なんだから、あんな奴らのために流す必要なんてないのよ」
「どうか……負けないで」と。
その瞬間、野くんは彼女に心を奪われたのだった。
そして——雅ちゃんもまた。
「ありがとう……君は強くてかっこいいね」
泣きながら優しく微笑む彼に、雅ちゃんも一目惚れしてしまうのだ。
直後、二人の婚約の話が持ち上がる。
当然のことながら、雅ちゃんは喜んだ。
思い切って野くんに会いに行こうと決心し、野家を訪れた時のことだった。
その時、たまたま——
野くんと幼い私が二人でいる姿を目撃してしまう。
そして、彼が見せたのは。
自分には向けられたことのない、心からの笑顔だった。
その瞬間……雅ちゃんは失恋した。
傷心のあまり、暴飲暴食。
つまり、やけ食いである。
失恋の傷を忘れるかのように、それはしばらく続いた。
さらに時は流れ、三年後。
改めて正式に婚約者となった野くんが、雅ちゃんに会いに来た。
けれど。
彼女はやけ食いのせいで、あまりにも太ってしまっていた。
そんな雅ちゃんの姿を見て、野くんは幻滅してしまう。
さらに追い打ちをかけるように、
野くんは好きな人がいる、と言った。
しかし、それは——
昔、虐められていた時に助けてくれた女の子だった。
雅ちゃんはぬか喜びし、それは自分だと伝えた。
けれども……
あの時の面影とは、あまりにもかけ離れていた。
野くんは、一切信じなかった。
それどころか——
「嘘つきのブタは嫌いだ。
二度と近づくな」
そう言い放ち、雅ちゃんを突き放したのだった。
そして、なんとも悲しいことに——
野くんは今でも……
あの時、助けてくれた少女を“私”だと勘違いしている。
やたら私に話しかけてくるのも、そのせいである。
原作でもそうだったが、彼は鈴乃を心から尊敬していた。
虐められて泣いていた彼は、
あの時、相手の姿をはっきり見ていなかった。
覚えていたのは、シルエットと雰囲気だけ。
だからこそ——
雅ちゃんがあの光景を目撃した、まさにその瞬間。
ちょうどその時、野家を訪れていた西園寺家の娘——
つまり、雰囲気の似ていた私を見て。
まあ、悪役令嬢同士だし……仕方ないのかもしれないが。
彼は、あの時の少女を“私”だと思い込んだのだった。
もちろん、彼女が今こうして美しくなったのは、好きな人に“ブタ”と言われたことが原因である。
私に攻撃的なのも、まあ……そのせいだ。
「……なるほどな」
「だからこそ、二人には誤解を解いて幸せになってほしいのよ!
分かるでしょう!?」
私はオタク全開で、白水に二人について熱く語ってしまった。
ここまで話してしまった以上、なりふり構っていられない。
この気持ちを誰かに分かってもらい、分かち合いたかったのだ。
それがオタクの性である。
「それで、お前はあんな行動に出たというわけか……」
「事情は分かった。
これからどうするつもりなんだ?」
「えっと……
実はまだ何も考えてなくて……」
えへへ、と誤魔化す私に、
白水は「はあ……」とため息をつき、私を見た。
「仕方ない。
俺も協力しよう」
「え、ほんと!?いいの?」
「お前一人では何をやらかすか、分かったもんじゃないからな」
ギクっ。
「それより鈴乃。
お前、口調がいつもとだいぶ違うぞ」
「えっっ、気をつけていたのに……」
白水は珍しく柔らかな笑みを浮かべ、
「俺はそっちの方が好きだがな」
と笑った。
少しだけ……
ほんの少しだけドキッとしたのは、私だけの秘密である。
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二人の過去が明かされました!!
この二人には結ばれてほしい☺︎




