第二十話 「戻れない噺」
※本作はオリジナル作品です。
※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。
※次回も三日以内に更新予定です。
人の気持ちっていうのは、不思議なもんでねぇ……。
私はね、ずっと前から思っていたんです。
“おかしいなー、おかしいなー”って。
なぜか、噛み合わない。
話をしていても、どこかがずれている。
“変だな〜、変だな〜”って。
だから一度、ちゃんと会話をしてみようと思ったんです。
するとね……
向こうのほうから、すーっと、すーっと。
彼が来るんですよ。
そして彼は、こう言ったんです。
「婚約を解消してくれ」
……って。
私はね。
これはチャンスだと思ったんです。
やっと解放される。
やっと自由になれる。
だから、快く受け入れたんですよ。
…ところが。
何故だか。
どういうわけか。
紆余曲折ありましてね……。
——無かったことになってしまったんです。
あるんですよねぇ、こういうことって……。
私は、前世でかなり有名だった“あの口調”を借りて、怖い話風にここまでを振り返ってみた。
誰に向かって話しているのかって?
……野暮なことは聞かないでくださいまし。
私もね。
もう、いっぱいいっぱいなんです。
現実逃避をしている場合ではない。
そう思い、私はようやく我に返った。
あの直後、家に着いた瞬間——
ピカピカ笑顔のうゆくんに、
根掘り葉掘り聞かれたので、渋々一部始終を話した。
すると。
この世の終わりみたいな顔で、
なにやらぶつぶつと呟きながら、静かに去っていってしまったのだ。
その背中は、やけに萎んで見えた。
……え、待って。
推しに、そんな顔させたくなかったんですけどォ!?
申し訳ない。
けれど私の怒りと恨みと嫉みは、
すべてあの男——白水の元へと旅立っていった。
とりあえず。
タンスの角に、足の小指をぶつければいい。
できれば三回ほど。
翌日。
学校に着けば、目の前に大悪魔こと白水が現れる。
「やぁ、鈴乃」
「げっ……」
思わず声に出てしまう。
しかし、背後には天使・うゆくん。
——のはずなのに。
そんな天使から一瞬、舌打ちのような音が聞こえた気がした。
当分関わる気はない。
「それでは〜」と言って、私は逃げようとした。
——パシッ。
次の瞬間、私の腕は捕まっていた。
「な…なんでしょう……?」
「今日の放課後は暇?」
「え、と……なにか?」
白水は、ゆっくりと口角を上げた。
「RaB itsの新作が手に入ったから、
せっかくなら君の義弟も連れてお茶でもしようと思ったんだが…」
(なぬ!?)
まさかの推しカプとのお茶会だなんてそれは見逃せないッ!
それに——
実はRaB itsのお菓子は、私の大好物なのである。
正体不明のパティシエが生み出す繊細な逸品。
それは、権力でも金でも手に入らない。
新作など、なおさらだ。
……新作。
……しかも義弟付きお茶会。
……これは、行くしかないわね☆
——煩悩には抗えない。
私は観念し、できるだけ平静を装った。
「こほん……」
「そ、そういうことなら……
義弟のためにも、是非参加させていただくわ」
白水は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
……ぐっ。腹立たしい。
けれど。
推しカプの交流は、ファンとして見逃せない。
全力で、だらしない笑みを押し殺す。
放課後。
いざ尋常に、お手合わせ願うわ!
——戻れないとも知らずに。
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ついに推しカプとのティーパーティです☺︎




