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リュボーヴィ クローリク  作者: 西瀬 零真


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16/29

第十五話 「存在しても良い子」

※本作はオリジナル作品です。

※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。

※次回も三日以内に更新予定です。


「……彼らは、私の古い親友でね」



お父様は、静かに言った。



「君は——ちゃんと祝福されて、愛されて生まれてきた子なんだ」



一瞬、空気が止まったように感じた。



「だが、君がまだ小さい頃……事故に遭ってしまってね。

そのまま、還らぬ人となってしまった」


「本当は、その時に君をうちで引き取る予定だったんだ」



けれど、と。

お父様は苦い表情で続ける。



「あの男は……君の実の父親の兄だった。

親権を持っていかれてしまったんだ」


「血の繋がりがある人間のもとにいた方がいい。

私は……そう判断してしまった」


「君が、そこで幸せになれるのなら……それでいいと、信じてしまった」



……でも。



「結果として、君には返って辛い思いを強いてしまった」



お父様の声が、ほんの少しだけ揺れた。



「あの時、無理矢理にでも……

私が権力を行使して、君をうちで引き取るべきだった」


「……本当に、すまなかった」


「お父様……」



気づけば、うゆくんの頬には

ぽろぽろと涙が溢れていた。


けれど——その瞳は、今までとは違った。



「……いえ」



うゆくんは涙を拭わずに、首を振った。



「僕は……このことが知れただけで、十分幸せです」



そして、かすれる声で、けれど確かに言った。



「僕は、ちゃんと……

“存在しても良い子”だったんですね」



その瞬間。


私は、初めて——

彼の心からの笑顔を、確かに見た。


よかった。


そんな安心感とともに、

もう一つ、私の中に小さな疑問が芽生えた。


うゆくんが、いくら“主人公”だからといって。

果たして、四大財閥の当主たちが総出で協力するだろうか。

もちろん、お父様が声をかけたのは大きい。

けれど——それだけで、ここまで動くものなのだろうか。


……うゆくんは、ひょっとして。

私がまだ知らない()()を持っているのではないか。


なんて考えていると、

お父様が、私に部屋へ戻るよう促した。



「鈴乃。

今日はよく頑張ったね。

もう部屋に戻って、ゆっくり休みなさい」


「お父様……

本日は、本当にありがとうございました。

私一人では、どうにもなりませんでしたから」


「そんなことはない。

鈴乃は、しっかりやれていたよ」



その言葉に、胸の奥がすっと軽くなる。



「……それは、なによりですわ」


「あ、あの……(まこと)様、鈴乃お姉様……

僕からも、改めてお礼を言わせてください……

本当に、ありがとうございます」



誠とは、私の父の名前である。

私はすぐに口を開いた。



「これまでの分も、これから先も。

あなたの人生が幸せであるように——

私は、全力で力を貸すわ」



父は、特に口を挟む様子もなかった。



「……それでは、失礼いたします」



そう言い残し、私は父の部屋をあとにした。



。.ꕤ……………………………………………..ꕤ.。



「悪いが少しだけ、私の昔話に付き合ってくれないか」



誠は結真に許可を得ると、昔話を始めた。



「結真くん。

君は——()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだ」


「えっ…」


「君の父親の生家が榊原(さかきばら)家なのは、知っているね。

だから君は、父の弟がいる榊原家に引き取られた」


「はい」


「けれど、母方・有栖(ありす)家は“全てを統べる一家”だ」



その言葉の意味を、結真はすぐに理解できなかった。



「……それは、どういう……」



誠は一度、息を整えた。

さらに衝撃の事実を述べた。



「簡単に言えば——

有栖家は、この国の“表”にも“裏”にも名が通る一族だ。


政治や経済といった、表の世界だけじゃない。

国の秩序そのものに、深く関わっている。


いや——

“関わっている”というより、

物事を動かせる立場にある、と言った方が正しい」



そのまま言葉を続けた。



「だからこそ、

我々、()()()()が動いた。

鈴乃の願いだから、という理由だけではない。

“君が何者であるか”を、皆が理解していたからこそ、

容易に協力を取り付けることができたという方が正しい」



結真は、無意識に背筋を伸ばしていた。



「それから、君のお父さんとお母さんは、

お互いの生家の“反対”を押し切って結婚した。


ゆえに、君のお父さん——赫真(かくま)は、

周囲に認めてもらうため、必死で頑張ってきた。

生まれてくる君が苦労しないよう、

できる限り多くのものを遺そうとしてね」


「そして、赫真の弟はそれが目当てだった。

君に残したものを全て自分たちのものにするために君を引き取った。

その当時も彼らの会社は傾いていた。

それを立て直したのは、君の両親の布石なんだ」 


「……皮肉なことにな」



誠は悔しそうな表情で拳を握った。

それから、ゴソゴソと自分の机から何かを取り出し、結真に差し出した。



「これはね。

君の母・結璃(ゆいり)さんが生前つけていたペンダントだ。

二人からこれを託された時は本当に困ったもんだよ」



昔のことを思い返しながら、誠は微笑んだ。

その視線の先には、紅くルビーのように輝き、金の刻印が施されたペンダントがあった。



「本来の持ち主である君に返せて私も一安心だ。

そしてこれは、君の“血統の証”でもある。

だが同時に——母親の形見でもある」



結真は、息を呑んだ。



「両親との思い出なんて、何一つ覚えていません。

だから、この写真とペンダントが……

嬉しくて、嬉しくて、たまらないです」



結真は大切にペンダントを握りしめた。

その様子を見た誠は目を細め、静かに話を続けた。



「君の両親と私の妻・秋乃(あきの)とは学生時代本当に色々あってね。

まあ、それを経て親友になったわけだが……

結璃さんと秋乃はお互いの子供が産まれてきたら結婚させるんだって意気込んでたくらいだよ」



誠は懐かしい思い出に、ほんの少し頬を緩めた。

だが、結真は——その一言を、聞き流すことができなかった。



「それは本当ですか…」


「本当だとも。

秋乃は未だに言っているよ」


「それは、まだ有効なのでしょうか」


「え……」



結真は、真剣な表情と眼圧で誠を圧倒した。



「い、今は、鈴乃には婚約者が……」


「ですが、鈴乃お姉様は()()()()()()()()()()()()()()()し、

()()()()()()()()()()()()()と、ハッキリ言っていました」


「え」



誠はおどおどしながらも、

内心ではその言葉に、思わず歓喜していた。

——正直、娘を嫁に出す気など毛頭ない。

そして、咳払いをひとつ。

誠は気を取り直し、結真の問いに真剣に向き合った。



「それは父親としては嬉しいが、

鈴乃はいずれ結婚して、家を出ることになる」



誠は一度、言葉を選ぶように間を置いた。



「結真くんは……その……

鈴乃と、結婚したいのかい?」


「はい」



即答だった。

父親としては、胸中穏やかではない。

それでも……妻と親友だった彼らの願いは、叶えてやりたいと思ってしまう。



「だが、相手は宝来(ほうらい)家だぞ。

もし本気で鈴乃との結婚を望むなら、

君は“立場”を変える必要がある」



誠は、真っ直ぐに結真を見る。



「もしも、正式に“有栖家”に入ることが出来たとしたら……

その未来も、決して不可能ではない」



そして、静かに告げた。



「ただし、そのためには——

有栖家当主に、認めてもらわなくてはならない」


「現在の有栖家当主は……

君の、()()()()だ」


「厳格でだいぶ気難しい方なんだが…」


「分かりました。

お祖父様に認めてもらいに行きます」



あまりの本気さに、誠は思わず驚いた。

鈴乃のためにそこまで言ってもらえることを、父親として悪く思うはずがない。


だが、そう簡単な話ではない。

そもそも、彼らの両親の結婚は認めてもらえていないのだから。

恐らくその子供である結真が、簡単に認められるとは——誠には、とても思えなかった。

少しばかり短いため息をつき、

観念したかのように誠はもう一つの衝撃の事実を述べた。



「正直なところ、君を正式に西園寺(さいおんじ)家の息子として迎え入れると発表してしまった以上、少し…

いや、だいぶ難しいことになるかもしれない……」


「僕がもう西園寺家の人間だからですか?」


「いや、違うんだ。

これも昔話になるんだが……」



誠は一度、視線を落とした。



「結璃さんと僕は——

()()()()だったんだ」


ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

よければ評価・ブクマ・♡で応援していただけると励みになります。

感想など頂けましたら泣いて喜びます…!


まさかの展開となりました☺︎

昔話を外伝として書きたくて書きたくて仕方がありません。

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