表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リュボーヴィ クローリク  作者: 西瀬 零真


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/29

第十四話 「断罪の刻」

※本作はオリジナル作品です。

※BLゲーム世界が舞台ですが、女性主人公視点で進みます。

※次回も三日以内に更新予定です。

無礼にも声を荒げ、慌ただしく——わざとらしい演技とともに、彼らは会場へ乗り込んできた。

もちろん、招待状など出していない。

だが今日ここで、うゆくんのお披露目が行われるという()は、敢えて流しておいたのだ。

来なければそれまで。

……けれど万が一に備え、警備には“通せ”と指示してある。

ここで、うゆくんと“元ご両親”を対面させるのが酷なのは分かっている。

それでも私は、四大財閥が全員揃うこの場で断罪し、彼らの逃げ道を徹底的に塞ぐことを優先した。

もちろん、現当主たちにはすべてお知らせ済みである。


なぜなら、共犯は()()()なのだから。


驚くべきことに、彼らは入ってくるなり、

迷いなくうゆくんを見つけ出し、縋りついた。

泣き崩れるふりをして懺悔し、「許してほしい」と声を震わせて懇願した。



「結真、私たちはいつだってあなたのことを本当の息子のように思っていたのよ……。

今までだって、仲良くやってきたじゃない」


「そ…そうだぞ。

俺たちは結真のことを、献身的にここまで育ててきたじゃないか。

なのに、なぜこんな酷い仕打ちをするんだ?」



「……はっ」

思わず、乾いた声が漏れてしまった。

本当は、せっかくのうゆくんの晴れ舞台に泥を塗るような真似はしたくなかった。

だが——“今日という日”だからこそ、意味があるのだ。

私は、うゆくんと彼らの間に割って入った。

扇子で口元を覆い、優雅に微笑む。



「あら。部外者の方が、なんの御用かしら?

悪いのだけれど、ここはあなた方が来るような場所ではないのよ?」



あくまでも冷静に——怒りなど欠片も見せずに言った。



「……全部、あなたの仕業でしょう!

私たち親子を会わせることも禁じて、酷いわ!!」



義母は声を荒げた。

私のことなど目にも留めず、必死にうゆくんを説得しようとしている。

彼が頷けば、悪は私たちになると考えたのだろう。

実に愚かである。



「ええ、そうですわ」



私は扇子の奥に微笑みを隠し、頷いた。



「奈々、()()を持ってきてちょうだい」


「はい、かしこまりました。鈴乃お嬢様」



奈々は迷いなく、分厚い封筒を差し出した。

私はそれを受け取り——そのまま義母の目の前へ滑らせた。



「……な、なによ、これ」



封を切った義母の顔色が、目に見えて変わる。



「これはね。あなた方が“大切に育てた”という、その証拠よ」



私は微笑んだまま、問いかける。



「ねぇ……あなたには、“これ”が

大切に育てた子供への愛情に見えるのかしら?」


「こ、こんなの出鱈目よ!!

あんたたちが金の力で全部買収したんじゃないの!?」



義母は喚き散らし、震える指で私を指した。



「なによ……お仲間まで呼んで!

人の息子を奪った分際で偉そうに!!」


「——出鱈目…ですって…?」



私は扇子を閉じた。


パチン。


虚勢を張っていたのだろう。

その音に、義母は肩をびくりと震わせた。



「これは、我が西園寺(さいおんじ)()()で集めたものではありませんの。

宝来(ほうらい)家、(ひばりの)家、そして九条(くじょう)家にもご協力いただき——揃えた“事実”よ?」



私は笑みを浮かべたまま、ただ目だけを細めた。

それだけで、空気が一段冷える。



「まさかとは思うけれど……

我が西園寺家を“馬鹿にしている”のかしら。

言葉には責任が伴いますのよ。

その()()は——おありで?」


「そ、そんな……ッ。嘘よ……」


「嘘?」



私は首を傾げ、やわらかく微笑んだ。



「我々“四大財閥”が、嘘をついているとでも?」



四大財閥の当主たちは、一言も発さず、ただ静かに見守っている。

その沈黙こそが、何よりの圧力だった。


彼らはようやく理解したのだろう。

自分たちが——()()()()()()()()()()()()を敵に回したことを。


私はさらに一歩、前へ踏み出した。



「ねえ……黙っていないで、何か言ったらどうなのかしら」



声音は柔らかい。

けれど、それは優しさではない。



「それに——あなた方が彼を連れ戻したい本当の理由は…美しい“親心”なんかでは、ないのでしょう?」


「……仕方が、なかったんだ」



うゆくんの実父が、苦し紛れに本音を漏らす。



「我々にだって生活がある……!

会社が傾き、金が必要なんだ!

あなた様方みたいな大金持ちに、分かるわけがない!」


「ええ。分からないわね」



私は静かに頷いた。



「……だって。

たかだか、それだけで彼を傷つけていい理由には、ならないもの」



語尾が、少しだけ震える。



「彼は未だに深い傷を背負って生きているのよ!!」



……思わず、感情が溢れた。

目の奥が熱くなるのを感じた。


すると——義母が、突然声を荒げた。



「うるさいのよ!!」



甲高い声が、場の空気を劈くように響いた。



「他の女との子供なんて、あれくらいじゃ足りないわ……!

もっと、もっと傷つけばいいのよ!!」



義母は笑いながら。

醜い感情を隠しもせず、吐き捨てるように言った。



「なのに、すぐ泣きついて……だらしない子。

やっぱり()()()()()()()()()の子供は、色仕掛けがお得意なのね」



——その瞬間。

うゆくんが、私を押し退けるようにして前へ出た。



「お義母さま……もう、やめてください」



少し震えている。

けれど、逃げない強い眼差し。

そのとき、急に義母の目が吊り上がった。



「なによ、このクソ餓鬼……ッ!!」



乾いた音が鳴る。


——ばちん。


会場の空気が、音を失い。

鮮烈な衝撃音が響いた。


……頬が、痛む。

お父様にも、お母様にも。

それに前世の両親にも。

私は一度だって、叩かれたことなんてないのに。



「……あ」



声が出ない。

義母は自分がやったことに気づいたのか、

一気に顔色を変えた。



「……ち、違うんです……!

私は……!」



しかし、そんな彼女の言い訳ですら、

今の私にはもう、どうでもよかった。


私はただ、ぼそりと呟いた。



「……そう」



唇が震える。



「うゆくんは、ずっと…これに耐えていたのね……

いつも、こんな苦痛を我慢して…今まで生きていたのね。

“躾”と称して、何度も何度も……繰り返されてきたのね」



私はうゆくんの頭に、ぽん、と手を置いた。

「もう大丈夫よ」

そう優しく笑いかけると、

その瞬間——うゆくんの瞳に、ほんのわずか光が差した気がした。


そして私は、ゆっくりと顔を上げる。

目の前にいるのは、

言い訳すらまともに出来ないまま、ぶるぶると震えている“相手”だった。


……当然の結果だ。


私の()()()()()に手を出したのだから。

それだけではない。

この私にまで手を上げたのだ。

お父様が、黙っているはずがない。

——けれど。

その姿は……あまりにも、滑稽だった。

私は静かに、口を開いた。



「いいこと。

あなたたちが手を出したのは、“ただの子供”ではありません。

“西園寺家の息子”——そして、()()()()()()()よ」



私は微笑んだまま、言葉を続けた。



()()()()()()()()()()()()()()

もし近づけば、その瞬間。

あなたたちは、この世界で生きていられると思わないことね」



私はきっぱりと、容赦なく言い放った。


すると——

無表情の父が、すっと彼らへ歩み寄った。

私は、お父様のあんな表情を見たことがない。

背筋が、ぞわりと粟立つ。

恐らく……不本意でも私の頬を叩いた事実が、よほど癇に障ったのだろう。


父は彼らへ近づくと、淡々と“何か”を耳打ちした。


それだけで、うゆくんの元両親は顔面蒼白になり、震え始めた。

一体、何を言ったのだろう。

…考えたくもない。

直後、彼らは警備に取り押さえられ、

そのまま夜会場から連れ出されていった。


。.ꕤ………………………………………………………..ꕤ.。


父が他の当主たちへ、丁寧に礼を述べる。

すると彼らは口々に「鈴乃ちゃんは大物になりますな」と笑い合い、談笑を始めた。

——夜会は、再び華やかな空気を取り戻していく。


そんな中。


うゆくんが心配そうに近づいてきて、

私の頬にそっと冷たいタオルを当ててくれた。

その冷たさに、ようやく現実へ引き戻される。

私は、うゆくんに深く頭を下げた。



「うゆくん……ごめんなさい。

あなたの晴れ舞台に、泥を塗るようなことをしてしまったわ」



そして、言葉を選びながら続ける。



「……それに。

あの人たちは、あなたにとっては“親”と呼ばれる存在なのに。

何の相談もなく、勝手にこんなことをしてしまって…本当にごめんなさい」


「鈴乃……お姉…」



うゆくんは何か言いかけて、言葉を止めた。

小さく眉を寄せて、真剣に考えるように視線を彷徨わせ…

やがて意を決したように、口を開く。



「…そ、そんなに悪いって思ってくれるなら……」



頬を赤らめながら、うゆくんは照れくさそうに言った。



「これから……二人きりの時は、

す、鈴乃って呼んでもいい許可が欲しいです……」


「え……!?

い、いいけど、その…怒っていないの?」



うゆくんは少しだけ目を伏せてから、

まっすぐに私を見つめて言った。



「正直、……スッキリしました。

僕のことをそこまで考えてくれて…

すごく嬉しかったです」



そして——

微笑んだ。



「鈴乃、ありがとう」



——ぐはっっっっっっっ。

(呼び捨ても……悪くないわ)

萌えに浸っていると、

お父様たちは話し終えたのか、来客を見送り始めた。



そのあと、私たちは三人でお茶をした。

夜会の喧騒が嘘みたいに、部屋には静けさが戻ってくる。


そして、父が衝撃の真実を告げた。


それは——



「結真くん。君は、あの二人の実の子じゃないんだ」


「えと……その、知ってます。

父が別の方との間に設けた子供だと、お義母様が言っておりましたので」


「そうじゃない。

……父親も違うんだ。正確には“叔父”なんだが」


「え……」

「え……」



思わず、うゆくんと私の声が重なってしまう。


父は机の引き出しから、白い皮の本を取り出した。

それを開き、うゆくんの前に差し出す。



「この二人が、君の本当のご両親だ」



そこに写っていたのは……

幸せそうに小さな子供を抱き上げる女性と、

その女性を後ろから包み込むように抱きしめる男性。

——まるで、絵本の中の家族みたいに。


私は、その写真から目を離せなかった。

なぜなら、そこに写る“幼き子供”は……

今のうゆくんと、()()()()()で笑っていたのだから。


ここまでご覧いただき、ありがとうございます。

よければ評価・ブクマ・♡で応援していただけると励みになります。

感想など頂けましたら泣いて喜びます…!


うゆくん編シリアス回はやっとこさおしまいです☺︎

お付き合いいただきましてありがとうございます!

また、平和な日常編に戻れますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ