第十一話 「天才児ゆえの罪」
怒りを抑えきれないまま、お父様の部屋へ向かい、扉を強くノックした。
すぐに返答が返ってくる。
私は一度、胸の奥に溜まった感情を押し込めるように息を整え、扉を開いた。
そして、うゆくんについてのことを、真正面から問いただした。
お父様はひどく戸惑っていたが、
私の圧に負けたのか、やがてあっさりと口を開いた。
そして——
聞かされた内容は、案の定としか言いようのないものだった。
やはり、うゆくんの両親は彼に虐待をしていた。
特に義母のそれは、目を覆いたくなるほど酷い。
大方、うゆくんが語っていた内容と大差はなかったが、
ところどころに、さらに非道な事実も混じっていた。
実の父親はというと…
己の体裁を守ることを優先し、ただ傍観していただけだった。
——同罪である。
そして、その事実を偶然知ったお父様が、うゆくんの身元を引き受ける決断をしたのだという。
思えば、私はうゆくんに
「勉強を教えてあげよう」などと呑気に構えているが、
彼は原作でも、そして私のいるこの世界でも、
年齢に似つかわしくない才を持つ子供だった。
それが、義母にとっては、かえって癪に障ったのだろう。
嫉妬と劣等感が、理性を焼き切った。
自分の腹から生まれた子供よりも、
どこの馬の骨とも知れぬ女が産んだ子供の方が優れている。
その事実を、彼女は何よりも許せなかったのだ。
だが——
だからといって、
私の““大切な存在””を傷つけていい理由には、決してならない。
生まれてきた子供には、何の“罪”もないのだから。
そして、その「天才」という事実こそが、
うゆくんが私のお父様に選ばれた理由でもあるというのだから。
正直、複雑な気持ちになった。
きっとお父様は、
どれほど酷い目に遭っていたとしても、
彼に光るものがなければ、ここまで深く関わろうとはしなかっただろう。
つまりそれほどまでに、
彼は“他人である父の目に留まるほどの才”を持っていたということだ。
私たち家族には甘い人だ。
けれど、世の中の子供すべてに、
無条件で手を差し伸べるほど、愚かな人ではない。
——それほどに、彼の才は、他者の運命すら狂わせるほどだった。
さらに話を聞けば、
彼の両親たちは我が子の様子を確認するというふざけた理由で、しれっと金銭的援助を申し出てきたらしい。
どうやら、会社の経営が傾いたことが原因らしいが。
……思わず、頭が痛くなるような話だった。
お父様が、彼らに援助を許可するはずはない。
だが念には念を入れ、正式に“援助禁止”の指示を出してもらった。
お父様は私の剣幕に少し驚いた様子だったが、
やがて穏やかに笑って、こう言った。
「鈴乃が、誰かのために本気で怒れる子に育ってくれて嬉しいよ。
好きにしなさい」
……少し照れるから、やめてほしい。
元々お父様は、私には甘く、協力的だ。
その信頼に甘える形ではあるが、
私は“あること”を実行に移すことにした。
我ながら、なかなかに良い作戦だと自負している。
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