王都騒乱(2)
「ただいまもどりました。」
玄関ドアを開けて入ると奥の部屋でゴソゴソという音がする。
「ドーラ、どうしたのですか?」
とフードをとり、からまった長い金髪の髪を振りほどく。そして上着を脱ぎながら奥の部屋に進むと入ってきた私にようやく気づいたドーラが応えた。
「ああ、サリー。良かったです、何か変なことはありませんでしたか」
と立ち上がり慌てた様子で聞いてくるので戸惑いながらも特に何もなかったことを伝える。
それに安心したカーラが息を吐いた。私はドーラの短く切られた髪が少しばかり乱れているのに気がついた。気を取り直したカーラから告げられた一言で私の時が止まった。
「あの者がついに動きます。」
私は背後で暗闇が蠢いたような気がした。いつかこの日がくることはわかっていたが、いざとなると衝撃は隠せない。常にうごめき続ける殺しても殺しきれないほど憎い存在。しかし同時に私が今ここでこうして暮らしていられる理由でもある。
息を飲み込み、私は問いかける
「では」
「ええ、逃げなければなりません。あの方のためにもあなたは死んではならないのですから」
言われ続けた言葉だ。
その言葉に従い逃げなければ。
「準備はしておきました。ひとまずカロリングにお行きなさい。そこでカロリング伯に会うのです」
「分かりました」
そう言って、荷物を確認し逃げるための服装に着替え始めた。動きやすいように街の男の子達が履くような麻のズボンを履き、日に焼けていない白い肌を暗闇に隠すように黒い厚手のローブを着込む。護身用に習った手に馴染みのある短剣を持ち、鞘から抜き出し刃を確かめる。
その時、ドンドンと戸を叩く音がした。ハッと思いドーラと顔を見合わせる。
私が出ます、とドーラが向かう。
見つからないように玄関からは見えない位置に立つ
「逃げなさい!」
とドーラの叫びが聞こえた。
それを聞くやいなや私は裏口を目指し駆け出した。
闇が迫ってくるの感じながら。
読んで下さりありがとうございました。
王道ファンタジー目指しさらなる精進をします。
次話もよろしくお願いします。