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裏切り者の剣士さま!  作者: 三日月カヌレ
「新」異世界生活
9/21

オーク軍長


────激しい地響きが鳴り、辺りは地震でも起こったかの様に揺れる。

立つのも難しい程の激しい揺れは、収まる素振りを見せない。


クソっ、どうなってんだこれは………


続々と、さっきスライムを倒した時にできた渓谷の様な地割れからなまこの様なシルエットの動物が飛び出していく。



「─────勇者!!よくも俺の住居を荒らしてくれたなァ!!!」


揺れが収まり目の前を見ると、そこには珍妙な光景が広がっていた。

モグラ────のような下級の魔族が列を無し、その真ん中に一際大きいオークが居たのだ。

オークは怒り狂っている様で、つばを飛ばしながら勇者とその仲間を口汚く罵っている。


────どうしよう。なんかマズい事しちゃった。


俺は冷や汗を滝の様に流しながら、勇者に振り向いて、震える声で質問した。


「私、またなんかやっちゃいました……?」


異世界転生物の定番セリフが、本当に言葉通りの意味で使われるとは、なろう作家も思ってはいなかっただろう。

今、俺は明らかに怯えた子供みたいな顔をしている。


「俺はしらん。うちの剣士がやった事だ。」


勇者はしばらく俺の目を見つめてから、俺とは逆方向に目を逸らし、オークへとそう返答した。


売りやがったアイツ!!!仲間を売りやがった!!本当に勇者なのかよお前は!!!


いや………裏切り者だから仕方無いんだけどさ。

少しセンチメンタルな気持ちになりながら、でかいオークへと振り向き、目線を合わせる。

───ごめんオーク。同じ魔族で仲間だけど、どのみち殺される為に配属されてるような物だし………

腰に引っさげていた鞘から剣を引き抜き、剣先をオークへと向けた。


「お前が剣士かァ!!!この俺が、俺が()()()()()と知ってのロウゼキか!?」


オーク軍曹………?オークの中でも位が高いのかな。

でも魔族は基本的に群れないはずだけど………


そう思っていると、列に並んでいたもぐらが目を強く瞑り、オークの目の前に集合した。


「許さねェェェェ!!!!雑魚ども!!!!俺の経験値になりやがれ!!!!」


オークは仲間だと思われるもぐらの魔族を、手で叩き潰していく。

この世界にはゲームシステムの様な物がある。

ステータスを見る事はできない物の、魔族を殺す事によってその分だけ強くなれるのだ。

そのルールは同じ魔族も例外では無い。

魔族を殺せば殺す程、その魔力が自分の中に流れ込み強くなっていく………基本的には強い魔族である程強くなれるので、もぐらの魔族なんて毛ほどの経験値も無いはずなのだが────────

─────あの数ならば、それなりの経験値は入るだろう。


「ねぇ、なんか凄い強くなってる気がするだけど────アタシ達勝てるかな………?」


不安げな表情を浮かべ、フィーシャは俺の方へと寄ってきた。

確かに目の前のオークは強くなった、さっきまでとは雰囲気が少し異なり、普通のオークの3倍から5倍は強いだろう。


だが、それまでである。3〜5倍強くなった所で、仲間を殺してはそれは弱さなんだ。

なんてキザっぽい事を言いたいなぁ。


「だ、大丈夫です。早く倒し─────」


そうだ。なんで忘れていたのだ。

俺と勇者は終盤でもやっていけるポテンシャルが既にあるが、フィーシャとメーナはまだ初心者、俺が手助けして経験値を渡してやらなきゃいけない。


「あ、あの………勇者様、どちらに経験値を………」


そっぽを向き続けていた勇者に、俺はそう尋ねる。

勇者はその言葉で気付いた様な顔をすると、俺の方へ向き直って答えた。


「ふむ、メーナの援助をしてやれ。」


メーナは渋々、と言った表情で俺の横に並び立つと、魔法の詠唱を始めた。

魔法使いは基本的に動けない。それは剣士が超人的な動きをできる原理を、魔法使いは魔力の関係でできないからだ。

だから魔法使いは単独ではほぼ無力。前衛がさっかりやらなきゃ、どっちも死ぬ事も珍しくない。


「────俺に勝てると思ってんのかァ!!!」


野太い咆哮(ほうこう)を上げると、オークは俺の方へと走って向かってくる。


良かった。ターゲットは俺に向いてる。


後ろ足を少し引き、重心を下げて腕を曲げ、剣先をオークへと向ける。


「────邪竜牙突き(ドラゴナイト・スピア)!!」


剣先は鋭く、空気を裂いて前へと突き技を放つ。

刀身にはドス黒い邪悪なオーラが纏われる。

邪竜騎士(ドラゴナイト)だけが使える剣術の数多ある内の突き技が、今俺が放った技なのだ。

名前に騎士、とある様に、基本的に邪竜騎士は剣と盾を使用して戦う為に、本能的に剣術が扱えるようになっている………とは言え、純粋な剣術では無く、魔法も混ざった物なのだ。

ゆえに、邪竜なオーラが剣身に纏われているのだが。


「そんな小細工叩きつけてくれるわ!!」


俺が放った突きに応戦するかの様に、目の前のオークは棍棒を力の限り振りかざし、俺の剣を真正面から叩き折ろうとする。


剛力岩砕(オーク・ストライク)!!」


オークの棍棒に魔力が纏われ、その硬さは更に増す。並の剣士ならこのオークに負けていただろう。


だが、俺は並の剣士では無い。四天王クラスなのだ。


剣先と棍棒が衝突すると、一瞬にして剣にまとわれた邪悪なオーラは先端に集約し、ふすまを破るようにして棍棒は縦に引き裂かれ、完全に崩壊してしまい、そのままオークの喉元に剣が突き刺さる。


「あぎゃぁぁぉぁっ!!!!!」


さっきまでの威厳のある声の持ち主とは思えない程の情けない悲鳴。オークはすぐさま俺から逃げ出そうと背を向けて全力逃走。

だが、やはりオークはオーク。体が大きすぎて、速度は遅い。


「────肥沃なる大地に戒めを造ららし神の御力よ。」


「今、汝の舌に宿り、我を戒め、堅実なる契りを以てして眼前の敵を穿て!!」


咄嗟、メーナは脚を前に突き出し、棍棒の様な杖をオークの逃げる方へと向ける。

表情は凛々しく、普段は絶対に聞かないだろう、と言う程に声を張り上げ、呪文を詠唱している。

空中には巨大な岩石が形成された。


「─────岩弾狙撃(スナイプ・ロック)!!」


魔法の名を唱えると、それが合図と言う風にして岩石は凄まじい速度で射出された。

正しく、それは現代世界の弾丸の如き速力でオークへと向かい、そして数秒と経たずオークの腹を岩は貫く。

彼女はその瞬間を双眸(そうぼう)で見据えては、(きびす)を返して勇者の元へと歩いていった。


ひとまず、これで一安心………メーナには経験値が入ったし、俺の仕事のできっぷりも買われたはず…!


初仕事の出来に達成感を感じていると、ふとメーナが俺に寄ってきた。


「前衛がいてくれて助かった。剣術も魔法みたいになるのだね。」


メーナは、その体に合わない大きな魔女帽を深く被ると、俺にそう言って、少し小走りで勇者の元へと、また走り出した。

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