ぽんこつパーティー
「あっ、そう言えば、他のメンバーはもう集まってるんですか……?」
俺が最初だったりして……なんて思っていると、
「………ほらよ」
勇者が右に避ける様にして移動した。後ろでこそこそと僧侶と魔法使いらしき人物が俺を見ているのが見える。
体を大きくはみ出している僧侶、僧侶の体を押し戻そうとしている魔法使い。隠れているつもりなのだろうが、勇者の体で遮られていない今、その姿ははっきりと見える。
人間は第一印象が大切だと言う話はあまりにも有名だが、この場合、勇者パーティーのメンバーの第一印象は「ぽんこつ」だ。
本当にこのパーティー、大丈夫なのだろうか。
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「アタシは僧侶のフィーシャ。宜しく!」
緑色で、ふわふわとした柔らかい髪を後ろに括っている。紺一色の、まるで神父様が着ていそうな服を身にまとった元気ハツラツな子だ。
年齢は17歳くらいだろうか、まだまだ若々しくて将来があってよろしい!
「メーナ=クロムナーゼ。魔法使い。得意魔法は黒魔術。」
黒いローブに黒い魔女帽子。髪も床に着いてしまうくらい長くて、それでいて黒色。
同郷なのだろうか、髪が黒色の人種は珍しい。
「────剣士、タチバナです……」
自分でもびっくりした。
予想以上に声が出ていないし、緊張で目が合わせられない。営業の時は仕事だと割り切れていた物の、異世界だとどうやらそうでもないらしい。
人見知り、臆病─────その二つに並び立ち、俺が直したいけど直せない悪癖ランキング第二位独占中の常連さんである。
周囲の反応も乏しい、やはり元気な方が良いのだろうか、心無しか失望されているような気もする………実際はそんな事無いのだろう…………無いと良いね!うん!
「皆の顔合わせも済んだし、パーティー結成の祝いでもやろう。」
顔合わせの時に話していて分かった事なのだが、普段はザ・ダウナー系と言う人格で、テンションが恐ろしく低い彼は、意外にもこういう祝い事を率先して提案したり、メンバー同士の仲を取り持とうとしている。
旅は過酷だ。道中で危機に陥った時、メンバー間の信頼が無かったら危機的である。
だからなのか、パーティーメンバーを危険に遭わせないと言う堅い意志があるかの様に見えた。
同時に、そこにはお祝いを期待する気持ちもないような気もする。
自分でも分からないまま、打算的な男と言う印象を彼に抱いてしまう──────アルベル・アルベアルと言う人間を、俺はまだ理解できていなかった。
「いっ………良いですね、いきましょう……はい…」
やっぱり、人と話すのは怖い。営業の時は仕事と割り切れていた事も、異世界と言う異例の環境では上手く機能しない………と言うよりも、種族の性格が影響しているのだと思われる。
強い魔族は基本的に臆病だ。それこそ、本来は知能が無い泥の邪竜騎士は凄まじく臆病な魔族。そこに前世の俺の性格も相まって、想定以上に怖がりになってしまったのだろう。
だが、俺と勇者以外のパーティーメンバーは陽気だったり、根が明るい。
客観的に見て、俺は打算的な勇者よりも不気味、浮いている存在であるのだろうな。
「アタシも賛成〜、まぁ下戸だけど。」
僧侶らしからず、舌を出して怪獣の様に下品な笑い声を発し、自らの手を激しく叩いている。
何が楽しいのか分からないが、俺は愛想笑いをしておくことにした。一番無難で、一番敵を作らない方法だ。
「僕は荷積みをしなきゃいけないから。勝手にやってて。」
メーナ。彼女は随分とマイペースな性格らしい。
ノリは案外良い……とフィーシャからは聞いているのだが、出発前と言う事で、自室へとそそくさ戻っていく。
フィーシャとメーナは幼馴染らしく、お互いを良く分かっている様だ。勇者パーティーに入る前はコンビのパーティーとして活動していたらしい事も耳にした。
「3時。酒場に集合だ。」
勇者が集合時間を纏めると、各々が散り散りになり、最後には俺と勇者だけが残った。
勇者もそろそろ出ていくらしく、もう扉を締めていた。
ただ、帰り際に意味深なセリフを言っていた。
何かの伏線なのだろうか知らないけれど、確かこう言っていた様な気がする。
「─────今回で終わらせる。」
そう、憎しみを噛み締めた様な声で。




