うらぎり発覚
「「「乾杯!!」」」
「かっ…乾杯…」
勢い良く発せられる、俺を除いた他三人の乾杯。と言う声。
その勢いに気おされ、遅れて俺はその言葉を口にした。
一気に酒を呷るアルベルとメーナ。もう俺の横で倒れてるフィーシャ。
意外な事に、アルベルとメーナと言う大人しい二人は酒豪であるらしく、俺が一杯を飲み切る合間に3杯、4杯と次々飲み干して行く。
まるで掃除機みたいで、その飲みっぷりは見ていて爽快だった。
…………フィーシャ、お前は情けない奴だな。
まぁ、俺もそうなんだけどね!!!
一杯目を飲んだ後、喉が焼ける様に暑くなり、脳に空気が行かない感じがして、一気に平衡感覚が失われ、テーブルへ伏す様に倒れる。
前世じゃ普通の方だったから行けるかな。と思ったけれど、今世じゃとんでもない下戸らしい。
薄れゆく意識と、高揚したテンションが、俺を夢へと誘った。
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「起きろ。おい。タチバナ。起きろ。」
強く体を揺さぶられる感覚とともに、勇者の声が聞こえる。
重い瞼を開け、周囲を見渡すと、どうしてかパーティーメンバーの全員が俺を取り囲む様にして立ち、俺は手と足を拘束されていた。
「…………お前は相当に口が緩いらしい。いや、寝言ばっかりはしょうがないか。」
メーナが呆れ返った様にして言葉を放つ。
勇者も同じ様な態度で、フィーシャは部屋の端で爆笑していた。
「お前、魔王軍四天王で勇者パーティーの裏切り者として送られたんだってな。寝言が多すぎるのも難儀な物だ。」
アルベルが聞き逃してくれたらどんなに良かっただろう………
俺は寝言で全てを白状してしまったらしい。いや、そりゃメーナも呆れ返るよな。俺だって今そんな気持ちだ。
いや、フィーシャは笑うなよ。
「じゃあ……私は殺され────」
裏切り者の処刑は必定だ。
せっかく転生したのに、俺はこんな凡ミスとも言えない様な事で今世とさよならするのか…
「────いや。タチバナ。お前は殺さない。」
俺の言葉に割って入る様にして、アルベルが強く言葉を放つ。
なんで?俺は困惑を隠しきれずにいた。
事実、勇者であるアルベルが俺を殺さない理由なんてのは無いはずなのに。
そんな困惑を解消するがの様に、彼は説明を始めた。
「単純だけど、お前は四天王で強いのに対し、俺達はまだ弱い。もしもの為の保険としてお前は使える。」
「どうやら魔王も、まだ俺を殺せない理由もある様だしな。」
事実。それは勇者パーティーにとって一番利益の出る案だった。
勇者パーティーをある程度放っておくのは、強くなった勇者を魔王様が倒して得た経験値で更に強くなる為。
だから勇者パーティーの付近から魔王城に近づく程、魔族は都合良く強くなっていくのだ。
…………まぁ、先代魔王はその方針ではなかったらしいので、たまに強い魔族も居るガバガバ仕様なのだが。
「………じゃあ、私がっ……私がそこで強さを発揮すれば良い訳…ですね…?」
途中で噛んだり、吃ったりしたが、強気な態度で俺は行く。
結局の所実力を見せて利用価値を示せば良いのなら、容易い事だ。
コミュ力はともかく………この世界では俺はまぁまぁ強いのだから。




