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社畜は現在ミステリー中!!  作者: たぬきち25番
会員制高級旅館殺人事件

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21 真相(1)

 旅館の西側に『キクイモ』そして、旅館の東側に『どくだみ』北側に『クコ』と南側に『スギナ』が見つかった。


「ん~これで、あの絵に書かれた植物は全て見つかったけど……」


 部屋に戻り、それぞれの群生していた場所を手書きで紙に書き出す。


「巧さん、もしかして、戻時草って、薬草をブレンドした物ではないでしょうか?」

「ブレンド……ブレンド?!」


 巧が大きな声を上げた。


「確かに……『戻時草』の効果と、これらの薬草の効果は一致している部分もあるが……ただブレンドしただけで、あの古文書に書かれた効果が得られるだろうか?」

「そうですね……」


 伊月たちは、換気のために少し窓を開けていた。すると、水を汲み上げるモーター音が聞こえた。


「ああ、もうこんな時間か……そろそろ朝食だな……」

「水? そうだ!! 巧さん、水ですよ!! ここには3種類の温泉が楽しめて、シリカの混じった水もあるんですよね?! 例えば、コーヒーなんかでも水が違えば、味や香りも変わるっていうし……もしかして、水も関係あるんじゃないですか?」


 巧が、焦点の合わない瞳で立ち上がった。


「水……そうか……水か………」

「あ……」


 巧のこの状況を、商品開発部の人々は、巧の覚醒と言って、こうなった巧には誰も近付かない。dそして、巧は、目にも止まらぬ早さで紙に何かを書き出した。

 これから、朝食だが、こうなってしまってはもう巧は止められない。


 通常の夕食は全員参加になっているが、朝食は、少し配慮してもらえる。

 伊月は仕方なく、自分はみんなと食事を済ませて、巧の分は部屋に持ち帰ることにしたのだった。


 朝食を食べるために食事処に向かうと、香だけが席についていた。カウンターの中には京介の姿はなく、館主だけだった。


「あら? お一人ですか?」

「はい」


 香に尋ねられて、伊月が小さく答えた。


「あの……巧さんの分は部屋に持ち帰ってもいいですか?」

「はい。では、後ほどお伺いいたします」

「お願いします」


 館主に巧の朝食を頼むと、伊月は少しほっとした。

 伊月はなんとなく、先ほどの京香の話を思い出してしまって、香の顔が見れなかった。

 食事が終わりに近付き、「少々失礼いたします」と館主が席を立つと、香が口を開いた。


「先ほどの京香さんのお話……気になりますか?」


 まさか、当の本人からその話を振られるとは思わなかったが、伊月は素直に頷いた。


「そうですね……」

「私……他に結婚を約束するほど大好きな人がいたのですけど……弱みを握られてしまって……脅されて、奥野と結婚したんです」

「……え?!」


 驚いたのは、伊月ではなく、伊月の後ろから聞こえた。

 振り向くと、京介が怖い顔で立っていた。


「香……脅されたって、どういうことだよ?!」

「京介?!」


 香が青い顔で椅子から立ち上がった。

 2人の視線が氷のように周りを凍らせるような緊張感を出していた時……。


「あ、いたいた、伊月さぁ~~ん」


 巧が最悪のタイミングで食事処に入って来た。


「ちょ……巧さん!」


 伊月は、急いで巧の背を押して、一旦食事処から出た。


「香!! 脅されたってなんだよ?! あいつのことが好きになったって言っただろ?!」


 すると食事処の中からは、京介らしくないひどく感情的な声が聞こえて来た。


「京介……ごめんさい……私は、一度もあの男を好きだなんて思ったことなんてないわ」

「そんな……俺……お前のために……」


 京介が床に崩れ落ちるように座り込んだのだった。


「京介、どうしたの?」


 伊月と巧は顔を見合わせると、食事処に入った。そして、巧が声を上げた。


「もしかして……今回の事件には、あなたが絡んでいるのですか?」

「……」


 京介が無言で顔を上げると、伊月は、目が隠れていたカツラを取った。


「悪い……京介」

「もしかして……お前……宗近……?」


 京介が伊月を見て、目を丸くした。

 

「実は、お前と奥野さんが倒れていた場所の近くに芝生が落ちててさ……奥野さんが亡くなった時、誰もロープウェイに乗っていないから、アリバイが証明されたけどさ……お前なら……パラグライダーで移動可能だろ?」

「え?」


 香が驚いた顔で、京介を見た。


「京介……どういうこと?」

「……」


 黙り込む京介に向かって、伊月が声を上げた。


「帰りは、ロープウェイの下の荷台部分にパラグライダーを取り付けて上に戻り、みんなの元に戻ればいい」

「京介!! お願い!! 何があったの?!」


 香の必死な言葉に、京介が自嘲気味に笑った後に、瞳に痛いほどの憎しみを浮かべて叫んだ。


「許せなかった……香がいるのに、他の女に手を出すあいつが!! だから、こんなことはやめろと言いに行ったんだ。だが……あいつは」


 京介が唇を噛み締めた。



 ☆==☆==




 ――奥野が亡くなる数分前。


 京介は、館主夫婦がいない間に、どうしても奥野と2人で話がしたかった。

 そこで、毎朝奥野が携帯などとチェックに行く時間を狙って、パラグライダーで、駐車場へと向かった。


「おや? なぜ君がここに?」

「奥野さん、もう浮気は止めて下さい。あなたには素晴らしい奥様がいらっしゃるはずだ」


 奥野は、鼻で笑いながら言った。


「君には関係のない話だ。なんだ? お前……妻を抱きたいのか? くっくっくっ。では、こうしよう。君の目の前であれを抱いてあげよう」

「そんな香を冒涜するようなこと言うな!!」


 京介は思わず、奥野に掴みかかろうとしたが、奥野は逆に京介の手を押さえた。


「香だと? なぜ名前を知っている? 彼女の本名は、どこにも出さないようにしていたはずだが?」


 奥野に首を絞められて京介は、力の限り抵抗した。


「止めろ!!」


 その瞬間、奥野が後ろに倒れた。

 京介はまるでその状況がスローモーションに見えたのだった。








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