エピローグ 安心という名の未来へ
夜明けの街は、これまでにない静けさと温かさに包まれていた。
ジロウはギルドの屋上から、再び動き出した人々と、子どもたちの笑い声を眺めていた。
ドアの向こうから、アスカが顔を出す。
「おーい、ジロウ。みんな待ってるぞ! 今日は町中のお礼回りだってさ」
「そうだな……本当に、よくここまで来たよ」
アスカは照れたように、だが少しだけ勇気を出して言った。
「私は……やっぱり、ジロウがいたから最後まで戦えた。お前の“保険”も、“安心”も、嫌いじゃないよ」
「ありがとう、アスカ。お前がいたから、みんながあきらめなかったんだ」
照れ隠しにそっぽを向くアスカの背中に、ジロウもまた温かい気持ちを覚える。
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町の広場では、ギルドや住民たちが集まって“再出発の式典”が始まっていた。
ヒロインたちも新しい衣装で集まり、それぞれが少しだけ大人びた表情で、ジロウに声をかける。
「ジロウさん……これからも、私をそばで守ってくれますか?」(ユイ)
「私、ジロウさんがいたから、少しだけ自信が持てました」(レム)
「ジロ兄、次は一緒に大きいキャンプしようよ!」(カナ)
ジロウは照れながら、みんなに笑いかける。
「もちろん、みんなを守るよ。
そして……この町だけじゃなく、これからは“世界中”に“安心”を広めていきたいんだ」
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セラも人知れず広場を見下ろしていた。
「人間の町も、悪くないな……」
彼女の口元にも、わずかな笑みが浮かんでいた。
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やがてジロウは、ギルド本部の壇上で町の人々を前に宣言する。
「これから“異世界保険機構”として、
みんなの安心をもっともっと広げていきます。
誰もが“もしも”に怯えず、生きていける世界にするために――」
人々の歓声と拍手の渦。
ヒロインたちの視線も、町の笑顔も、すべてが新しい希望で満たされていた。
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夜。静かなギルドのサロンで、ジロウは久々に一息つく。
テーブルには、仲間たちとの団らんの名残と、
保険証書の束、新しい町への“支部設立申請書”が山積みになっている。
(……さあ、ここからが本当の勝負だ)
誰かのために生きること、信じること、その力がまた一つ、世界を変えていく。
月明かりの下、ジロウは新しい冒険への一歩を踏み出した。
第一部 完