幕間 ギルド打ち上げと美少女達のサウナ談義
ギルド団体保険成立を祝う夜、冒険者ギルドの食堂は明るい笑い声と美味しそうな香りに包まれていた。
ジロウの「今日はみんな好きなだけ食べて飲んでいいぞ!」の一言に、ヒロインたちも遠慮なく大盛り上がりだ。
「ジロ兄、これおいしい!」
カナは山盛りの焼き肉を頬張り、口の周りをソースで汚して満面の笑顔。
レムは静かにスープをすくいながら、時々ジロウをじっと見つめる。
「ジロウさん、よろしければこちらもどうぞ」と、ユイは彼の皿に新しい料理をそっと載せて微笑む。
アスカは「別にお祝いなんて……ま、たまには悪くないか」とそっぽを向きつつ、どこか機嫌がよさそうだった。
ひとしきり食べ終えたころ、ジロウはぽんと立ち上がる。
「みんな、俺はちょっとサウナで汗流してくる。ゆっくりしててくれよな」
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ジロウが去った後、ヒロインたちはギルドの女子サウナへ移動。
白い蒸気が立ち込める中、広々とした石造りの湯気の部屋で、みんなでまったり汗を流す。
「ふう~、極楽極楽!」
カナは湯気の中でも元気いっぱい。「やっぱりサウナ最高だね~!」
「たまには、こうやって皆で話すのも悪くないです」
ユイは控えめにタオルで頬を拭いながら、小さく微笑む。
「……今日は、ジロウさん、ちょっといつもよりかっこよく見えた気がします」
ユイのささやきに、レムがゆっくりと相槌を打つ。
「はい。最近、よく夢にも出てきます。……その、保険の勧誘をされる夢ですけど」
「それ、ちょっと違うんじゃない?」
アスカが思わずツッコミを入れ、蒸気の向こうでカナが「えー!私もジロ兄とサウナ入ってみたかったなぁ!」と無邪気に叫ぶ。
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それぞれの胸の内では――
アスカ
(みんな、ジロウのこと結構好きなんじゃ……。
でも、私がいい所で声かけたし、剣士としても負けるつもりはない。
あいつ、いつも鈍感だけど、今度はちゃんと気づかせてやるんだから)
レム
(ジロウさん……優しいし、強いし。みんなが頼りにしてる理由、私も最近よくわかる。
けど、どうしたらこの気持ちを伝えられるんだろう……。保険じゃなくて、恋の“契約”があればいいのに)
ユイ
(ジロウさんに出会って、私も強くなれた気がする。
他の人に取られちゃったら、きっとすごく寂しい……。でも、堂々と想いを伝えるのは、私にはまだ勇気が足りないかも)
カナ
(ジロ兄ともっと遊びたいな。みんなで一緒にキャンプしたり、おいしいもの食べたりしたい!
それだけじゃなくて、なんでドキドキするのかな……?みんなと同じ、これが“恋”ってやつ?)
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湯気の中、4人はそれぞれの胸の内に小さな火を灯しながらも、あえて“本音”は口に出さず――
「ジロ兄って、本当にモテるよね~!」とカナが無邪気に言うと、
「そ、そんなこと……」「別に、そういうんじゃ……」「……まあ、否定はできませんね」
全員が顔を赤らめながら、微妙な距離感でけん制し合うのだった。
そしてサウナの扉の向こう、ひとり汗を流しながら「なんか、みんな仲良さそうでよかったな~」と
まったく気づかぬジロウであった。