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第六章 はじめてのギルド団体保険

町に活気が戻り、ギルド本部では「団体保険制度」の設立会議が始まっていた。

支部長や歴戦の冒険者が集まり、ジロウの説明に熱心に耳を傾ける。



「――この“団体保険”は全冒険者をまとめて契約対象とし、事故や死亡時の補償と蘇生魔法の援助まで含めます。

報酬から自動的に保険料が天引きされ、チーム全体で安全努力をした場合は割引も受けられます」


ジロウの声にざわめく場内。その中、ひときわ目立つ少女が腕を組んで前に出た。



「どうせ、またお堅い“条件”を並べるだけじゃないの?」

赤みがかったロングヘア、高めのポニーテール。すらりとした肢体に動きやすいジャケット姿。

鋭い蒼い瞳は、まっすぐジロウを射抜いている。


「やっぱりアスカさんは黙っててもオーラが違うな」

「そりゃそうさ、“天才剣士”アスカ様だぜ。年はまだ十五なのに、剣の腕も度胸も一級品」

「そういや身長ももう大人並みだろ? 165センチはあるんじゃないか?」


「うるさいわよ、ガヤは黙ってなさい!」

アスカは照れ隠しにツンとそっぽを向く。その横顔に仲間たちの憧れが滲む。



「それで、保険で“仲間の甘え”まで面倒見てくれるって? ――私は反対よ。

事故の責任まで団体でカバーするなら、真面目にやる人が損するだけじゃない」


ジロウはすぐさま説明を加える。


「団体契約でも“誓約”と“証拠”が必要です。

たとえば――

・仲間を守って戦った証明があれば補償額アップ。

・逆に手抜きや裏切りがあれば保険金は下りません。

個人の責任と絆のバランスが、保険の力を最大限にします」



その夜、町外れで魔獣の急襲事件が発生。

アスカは真っ先に現場へ駆けつけ、剣を閃かせて仲間を救う。


「みんな、下がって! ここは私が抑える!」

彼女の背中を見て、他の冒険者たちも勇気をもらう。


「さすがアスカ!」

「やっぱりリーダーはあんただよ!」


だが仲間の一人が負傷――その時、保険契約書が青白い光を放ち、ジロウが現れる。


「大丈夫、契約発動だ!」


淡い光が負傷者を癒し、命をつなぐ。

仲間たちは初めて“契約”の意味を理解し、アスカの胸にも静かな感動が灯る。


(私はひとりじゃない――仲間と誓い合うことで、もっと強くなれるんだ)



ギルドへ戻ったアスカは、仲間たちと笑い合いながら契約書にサインをする。


「ジロウ、認めてやるわ。……“絆”を守る力、悪くない」


仲間たちの憧れと信頼を背負い、アスカの笑顔が町に新たな風を吹き込んだ。

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