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EP:6 世界最高会議【ラダマンティス】

世界評議会最高会議、通称〝ラダマンティス〟。

ここで決められたことは覆すことなき決議となり世界評議会関係者、場合により加盟国国民へ知らされる。年に一度しか開催されない貴重な会議だ。

ラダマンティスの出席者には評議会大幹部の面々。

加盟国各国からは各国の首脳、国務庁、財務省、環境省、科学省そして国防省の責任者が出席を義務付けられている。その議題は多々あるがその中でも西方大陸からの侵攻が議題の中心である。


世界評議会最高会議ラダマンティスの開催時期になり、うちの隊長とアリアさんもレグルスに向かった。俺たちは留守番だ。


「今回の会議はどんな議題があるんですか?」

シェリルに尋ねてみる。


「まあ、毎年あまり変わらないけど、今の世界情勢がこんな感じだから、西方大陸の侵攻、つまり、国防に関することが中心だと思うが・・・。あとは幹部だけでいろいろ話はしているとは思うけど。」


「ふーん。まあ、俺らには関係ないけどな。」

興味無さそうなブラッド。


「まあ、俺たちは自分たちの任務を全うするしかないけどな。」



☽☽☽


——————その頃、聖地レグルス、裁定の間では。

加盟国の首脳と各省庁の長官(隊長もここでは国防省長官となる)、秘書官も含めると50名程度に加え、世界評議会の大幹部数名を加え実に80名以上が集まると圧巻だ。

ただ、各国首脳陣もただ単に情勢を伝達しに来るだけではない。そこには各々が握る情報を探りあっている。世界評議会など体のいいこと言ってはいるが一枚岩ではない。

当たり前のことだが、結局のところ自国のことが優先事項だ。それは誰もが分かっている。でも今は世界を安定させるため、共闘していくしかない。


「それでは各国の現況の報告を。」

若い評議長の言葉で唐突に最高会議ラダマンティスが開催される。


各省からの現況報告が続き、最後に国防の報告に入る。

各国民には西方大陸からの侵攻は抑えきれていると伝わっている。各国に攻め込まれる前の水際対策でなんとか抑えている状況だ。


バン!と突如、机を叩き、立ち上がる評議長。大きく息を吐き、出席者を見る。


「よし。そろそろ、報告は以上かな。」

評議長は笑顔で話し、下を向く。そして顔を上げると目つきが変わっていた。


「毎回毎回こんな報告を受けても仕方ない。そろそろ、本音で話しましょう。各国の代表の皆さん。」

ざわつく会場。


「なんの話だ。各国の現況は報告通りだろ。」

どこかの首脳が発言する。


「まあまあ。首脳陣の方々。あなた方が聞いているのはそういう現況かもしれません。しかし!」


「西方大陸からの侵攻はここ数年、各国からの報告によればその勢いは抑えこめ、減少の兆しがあるなど、虚偽の報告を受けているのではないのでしょうか。その辺について各国の国防省長官、つまり隊長の皆さんはいかがですか。」


「何を根拠にそのようなことを、評議長。」

バトラーは表情一つ変えず、答える。


「パシフィス、メラガニアの2国から常に西方大陸との境、アーセラル島付近に人間を派遣しているのはぜですか?確か世界評議会の規約に西方大陸へ近づいていいのは評議会が許可したものに限るとなっていたはずです。あなたたちは加盟国の第1国、第2国だ。模範となるべき立場でしょう。その辺はいかがですか?」

評議長は続ける。


「まあ、いいでしょう。われわれ加盟国のためです。現状、そこでかなりの数の白兎たちを退けているのでは?」


「それが事実だとして、何が悪いと?」


「バトラーさん、ここ裁定の間で行われている、最高会議、ラダマンティス。ここでの虚偽は重罪ですよ。良い悪いではなく報告の義務はあるでしょ。少なくとも評議長の自分の耳にも入ってこない情報があるのは健全な議会とは言えないのでは。」


「では、この会議に出てこないものもいる。それはなぜだ。それこそ最高会議の意味を考えるべきでは。そもそも西方大陸へ近づ・・・。」


パシッ!と手を合わせる一人の秘書官。


「はい、白熱してきましたがここまでにしましょう。バトラーさん、あとで個別にお話をお願いします。いいですね。」

彼女は評議長の最高秘書官、ラーミアス・バレンタイン。


「・・・。」


「それでは後ほど。それでは閉会します。」

裁定の間は異様な空気のまま、解散となった。


☽☽☽


別室にて。呼び出された2国の国防省長官。


「なぜ今年に限って、あのような発言を。」

バトラーは感情無く聞いてくる。


「まあ、ある筋からのリークです。リークされた以上議題に出さないわけにはいかないでしょう。その辺も踏まえ・・・・・ここは窮屈だ。また話しましょう。」

評議長は笑みを浮かべながら2人の隊長を見る。




一方、裁定の間では。


「なんなんだよ、アーセラル島への派遣って。年々、西からの侵攻が減少しているのは西の勢いがなくなったのではなく、水際で食い止めていただけってことか。まあ、それでも東の平穏が保たれるのであれば、いいのではないか。」


どこかの国の首脳が話しているが何もわかっていない。

今の話はアーセラル島への派遣が問題なのでないだろ。


「サドラーズ隊長、大丈夫ですか?表情が・・・その・・・怖いです。」

アリアは少し怪訝そうにこちらを見ている。


「ああ、すまない。ちょっと、最後の話がな。詳しくあいつらに話を聞かないと・・・。情報収集が必要かもしれない。アリア、あそこに行って話聞けるか。いつもすまないな。」


「大丈夫です。次のオフの時にでも話しに行ってみます。」


他の隊長たちに話を聞いてもいいが、まあ、知っていても話さないだろう。

ここは加盟国が集まって作った世界評議会なんてただの形式だ。各国の問題は各国で解決していかなければならない。そこに共存共生などの考えは多くの国の首脳にないといっても過言ではない。こっちはこっちで探り入れておくべきか。なんにしてもまずあいつらの帰りを待つか。


「サドラーズ君、大丈夫ですか?」

エンバー首脳が声をかける。


「すみません。できる限り正確な情報を集めてみます。」


首脳は黙って頷く。大丈夫、この人は信用してくれてる。


「よし、アリア、エンバーへ帰ろう。」


今年の世界最高会議は只ならぬ雰囲気のなか、自国へ戻ることとなった。


☾☾☾


「ただいま戻りました。」


「おかえりなさい、アリアさん。あと隊長も。」

ブラッドが入り口まで迎えに行く。


「あとってなんだ、あとって。」


「すみません、隊長。ついつい。」

この明るさがブラッドのいいところだがサドラーズくらい寛容でなければ受け入れ難いくらいすぐに距離を詰めてくる。


「シェリル、あとでちょっと話いいか。俺の部屋まで来てほしい。」

シェリルは頷きながら、ブラッドを殴りにいく。


隊長室にてサドラーズとシェリルが話している。


「・・・というわけだ。いよいよそんな話が最高会議に出てきている。評議長も何か掴んでいそうだし、俺も俺なりにアプローチしてみるが、アリアにもお願いしている。一緒に行ってやれるか。」


「あそこに行くのはあまり気が進みませんが、アリア一人で行くより二人で行ったほうがいいかもしれませんね。」


「頼む。あいつらも入ってきたし、いろいろ周囲の変化もあり、時が満ちてきている感じだな。」


「どうでしょうね。何にしても国防が私たちの仕事です。そのために必要な情報は収集しておかないと。」


「そうだな。あれこれ考えずにひとつずつ対処するしかないな・・・。あいつはまだか・・・。」



今回は加盟国が集まる世界最高会議の話になります。

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