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EP:3 初任務

「エンバ―に向け、西方大陸侵攻者・白兎【ホワイトラビッツ】を確認したのですぐ対処に向かうよう、評議会から連絡が入りました。」

アリアは皆に告げる。


「よし、お前ら準備しろ。いくぞ。」

サドラーズが皆に指示を出す。


準備をして外に出る。上空には対象を発見する。初めて対峙する、その標的に身震いがする。それは決して怯んでいるからではない。この3か月の訓練の成果も確認したい。


「前方1500メートル付近にエネルギー反応。標的は5体。中央広場付近へ降下中。白兎確認。」

アリアさんが皆に伝える。


「はい。」

5人で向かう。


「お前ら、初めてでも緊張するな。シェリルの訓練通りやれば大丈夫だ。聞いていると思うが評議会へ引き渡すからその辺も踏まえて戦えよ。」


「了解。」

俺とブラッドは答える。


これで二度目の対峙だ。西方大陸からやってくる標的、白兎といっても普通の人間型だ。名前の由来なのか白いアウラを纏っており、特に左側の胸の部分が濃く光源が出ているように見える。表情は深いフードで見えない。こいつらが俺たちの敵。


「アリアは後方で支援を頼む。シェリル、あっちの2体はいけるな?俺はこっちをやる。ザック、ブラッド、後方からくる2体を各々頼むぞ。いけるな。」


「了解!」

隊長の命令に各々返事をする。


俺は冷静にシェリルの指導通りアウラリンクする。自分の潜在意識へのアクセス。冷静に制御しなければならない。対象である白兎への間合いを詰めていく。3か月前、力不足で自分の力では救えなかったが今は違う。一発二発と打撃を与える。警戒して、打撃を与えては距離をとる。随分慎重になってしまったかもしれない。動きが良く見える。過信ではなく、こんなもんかと思ってしまうほどだ。

それはそうだ。評議会屈指の剣士、シェリル・クラウドを相手に毎日鍛錬しているわけだ。改めてシェリルさんの強さが分かる。3発目の打撃をいれる。相手の反撃もよく見える。

とにかく相手との間合いを取りながら、攻撃をかわしていく。体が軽い、動ける。繰り出される幾多の攻撃をもらうことはない。そこでカウンターを繰り出し、相手は気絶したのか、倒れて起きない。周りを見ると皆、終わっていた。


「随分慎重な交戦じゃないか!」

ブラッドがにやにやしながら近づいてくる。


「うるせえよ!」

俺とブラッドは初めての実戦を終えた高揚感からか自然とハイタッチしていた。


自分にとって配属後、初めての実戦だ。上々だろ。

初めての実戦を終え、安堵の気持ちで安心しきっていた。その時、突如背中から異常な悪寒がした。振り返ると評議会から白兎の回収班が到着する。奥にいるのが世界評議会、国防部門大幹部、最高司令官ハーディス・シガーだ。つまり俺たち国防任務者の最高権力者だ。これが評議会大幹部の力【アウラ】。


「サドラーズ、お疲れさん。迅速な対応だったな。ここからはこちらで回収していく。新人2人もお疲れさん。」

ハーディスに目線を向けられるだけで背筋が凍る思いだ。


「了解。あとは頼みます。よし、お前ら引き上げよう。」

サドラーズは対象を引き継ぎ、俺たちに向かって歩いてくる。


「なんか手柄を盗られている感じがするよな。まあいいけどさ。それより、あの**って・・・・。」

ブラッドが独り言を言っている。


「ん?なんて?」


「いや、何でもない。帰るぞ。」


初の任務は無事に終えた。町の被害もそんなに多くはない。及第点といったところか。

サドラーズが俺たちに近づき肩を組み、声をかける。


「初任務、ご苦労さん。なあ、あの人達の顔を見てみろ。」

そう言って、エンバーの人たちの笑顔に顔を向ける。


「みんなの安堵の表情や笑顔で溢れているだろう。これが俺たちの仕事だ。これから幾度となく、あの人たちを救っていくことになる。誇りに思え。大変なのはまだまだこれからだ。」


俺はみんなの笑顔を見て清々しくなった。自分が必要になんだと思える瞬間だった。あの人たちに悲しい思いをさせるわけにはいかない。きっとブラッドも同じ思いだろう。

後ろから頭を軽く小突かれる。


「あまり調子に乗らず、精進しろ。」

シェリルは厳しい言葉をかけてくるが表情は明るかった。きっと、ほんの少し認めてくれたということかもしれない。


☽☽☽


任務が終わったころ、エンバ―の中央広場にある大聖堂の上から見下ろす男。

ザックたちの任務を見ると満足そうな表情を浮かべている。


「やはり、きたか・・・。しかし・・・まだこれからだぞ。」



その後、建国祭までの間、何度か白兎の侵攻があったが俺たちエンバー国防省は大きな問題もなく任務をこなしてきた。

そして世間は建国祭に向けて着々と準備を進めている。


☾☾☾


建国祭は加盟国である6ヵ国の国民に向けたもの。

100年前の世界評議会設立と同時に6国が加盟国となり同盟を結んだ記念の日。

6大陸の国民でその日を祝い、また、まだまだ続く西方大陸の侵攻に向け、加盟国間で連携を強化する意味も込められている。

建国祭は数日間続くが、その中でも6加盟国の象徴的存在であり、加盟国を束ねる権威であるセレン女王にお目にかかることができる貴重な祝日だ。

国務庁員も女王に謁見することが許される日だ。この日以外は一切表舞台に出てくることはないセレン女王。国民に向け、そして我々に向けどのような言葉を与えてくれるのか。各国が集まるんだ。会ってみたい人もいる。聞いてみたいこともある。


そして迎える建国祭当日。


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