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EP:2 突きつけられる現実 ザックとブラッド

第2話になります。

ザックが現段階の立ち位置を知ることになります。

ぜひお時間のある方、少しでも読んでいただけると幸いです。

隊長たちと国務庁まで一緒に向かい、俺は入庁の手続きを行った。

いよいよこの後、配属先である国防省へ向かう。

国防省に着いた。青銅の重厚な扉を開け中に入り、改めて挨拶をしよう。最初が肝心だ。


「おはようございます。本日よりお世話になりま・・・!?」

「おはようございます。本日よりお世話になりま・・・っ・・・あっ?」


横を見る。見覚えのある顔がそこにある。と思った瞬間に相手の口撃が始まる。


「おまえ、国務庁に入れたのか?どうした、初日からケガしてんのか?ここでやっていけるか?」


「は?お前こそ、なぜここに。評議・・・。」


「黙れ。今日が初日だ。お前の話などどうでもいい。」

つかつか中に入り、一人の女性の前に立つ。


「あのー何か御用でしょうか。」

女性はこの男に困惑している。


「安心してください。この学院一の剣士、ブラッド・メネシスが配属になりました。もうあなたに危険は及びません。」

ブラッド・メネシス。こいつの自信は学院の頃から変わらずだ。


「おい!お前、いい加減に・・・。」


「ワッハッハッハッハッハッハ——————————————————————————。」

奥から豪快な笑い声が聞こえる。


「お前ら、黙れ!隊長も笑ってないで注意してください。」

気が付くと目の前に女性が立っていた。隊長もこの女性もさっき会ったばかりだ。


「まあまあ、いいじゃないか。こんなに元気な奴らそうはいない。ザック、ブラッド、本日より、よろしく頼む。俺はサドラーズだ。こっちにいるのがシェリル。あっちに座っている女性がアリアだ。あとはひとり遠征任務している奴がいるが帰ってきたら紹介するな。見ての通り人手不足だ。すぐに戦力になってもらうぞ。」


各国の部隊の幹部は4名から7名程度。エンバ―は特に西方からの侵攻が多いことからサドラーズ隊長が俺たちを引き取ってくれたってのが現実だ。


「本日よりよろしくお願い致します。アリアです。何か困ったことがあれば何でも聞いてね。」

アリアの天使のような笑顔に思わずこっちも笑顔になる。


「何、ニヤニヤしてるんだ。早急に心を入れ替えてもらう必要があるな、お前たちは。」

シェリルは美人系だがいかにも清く正しく厳しい先輩という感じか。


「先輩、怒りは美容によくありません。落ち着いて。美人が台無しです。」

ブラッドが遠慮なしに言う。


「くぅっっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」

顔から滲み出る怒り。瞬間的に殴られるブラッド。いい気味だ。


「減らず口を叩いてないでさっさと席に座れ!」


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「痛い!先輩、痛いです!」


「騒ぐな。早く座るんだ。」


何はともあれ、こうして国務庁員としての初日は始まった。

俺たちは自分たちの席を与えられ、身の回りの整理をした。

アリアさんに施設の案内をしてもらい国防省の執務室に帰ってきた。

全員が席に着いたところでサドラーズ隊長が話始める。


「国の混乱と言っても様々あるが今、国民を悩ませているのが西方大陸からの侵攻だ。我々はこの侵攻から国民を守るために組織された。この侵攻のために加盟6ヵ国で組織したのが世界評議会だ。世界評議会は国民の安全と国政の安定を目的としている。我々国務庁の中の国防省は西方大陸からの侵攻から国民を守ること、これが最大の使命だ。特に我々はその前線で任務にあたる【世界特別国防隊】に属している。侵攻勢力者を世界評議会は白兎【ホワイトラビッツ】と呼称している。彼らから国民を守り、彼らを捕え、世界評議会へ引き渡すことが主な任務になる。」


「一体、西方大陸のやつらは何が目的なのですか?」

ブラッドが聞く。


「さあな。それは評議会がいろいろ調べている。実際のところ、首謀者もわかっていない。世界の問題はこれだけじゃないのにな。まずは国民に被害が出ないように守り抜く、それに集中するんだ。」

サドラーズ隊長のありがたい社会講義は1時間程度で終わった。


「とりあえず、この後は省内の案内をアリアに頼んでいる。午後からはお前たちの実力を確認するためにシェリルに稽古つけてもらえ!実戦経験のある剣士との手合わせはとても意味のあることだ。な!シェリル、加減をしっかりな!」


「シェリルさんとですか?なんていうか・・・一応俺たち、学院でもトップクラスの成績でしたので・・・。隊長、是非お手合わせお願いします。」


ブラッドは遠慮なくずけずけと言うがこれに関しては俺なりにも考えがある。隊長は確かに異次元の強さだったが。言ってもシェリルさんは女性だ。負けてられないだろ。

しかし、この後、大きな後悔をすることになる。


「お前たち、自信があるのはいいとこだ。しかし俺たちだってお前たちよりも何年も多く生きている。その分、数多の死線を潜り抜けているってこと、それが国防省員ってことだ。」

サドラーズ隊長は笑顔こそ崩さなかったがその奥から滲み出てくる恐ろしさを少し感じた。

「まあ、そう言わず、行って来い。俺もいつかきちんと相手してやるから。アリアはこの後、省内の案内を頼む。その後は評議会との会議の同行な。」


「隊長、承知しました。ザックさん、ブラッドさん、訓練頑張ってくださいね。」

癒してくれる天使。


「午後からの訓練は心しておけよ。」

圧をかける悪魔。


アリアさんの省内の案内は天国のような時間だった。なんて優しくて可愛いんだ。はぁー、午後は憂鬱だなー。

そして午後を迎える。はぁー。

準備を終えて、表の訓練場に向かう。3人。


「ま!当然、俺からいくぞ。学院随一の実力を初日から誇示しシェリルさんに納得してもらう必要がる。」

ブラッドがこちらの話も聞かず続ける。


「そうだな、お前が先にいっていいぞ。」

俺は隊長に言われたことが気になっていた。


この後、このバカな二人は現実を突きつけられる。

一人ずつ訓練してもらった。結果的に言うと手も足も出ない。シェリルという人間と対峙しただけでわかる、この迫力。スピード、スタミナ、パワーすべてにおいて桁違い。自分たちだって、決して出来損ないではない自信があったが、全て打ち砕かれる。最大出力で放たれる自分たちの攻撃すら、片手で受け止められてしまう。30分間も手合わせしても、まったく息が上がっていない。感覚でわかる。この人はこれっぽっちも力を出し切っていない。これが、世界評議会加盟国が組織している部隊の一員の実力なのか。圧倒的敗北だ。


「もういい!二人同時に来い!訓練にならないだろ!」


「意地見せろ!」「言われなくても!いくぞ!」


もうつまらないプライドなど捨てよう。一矢報いるのだ。俺の拳が、ブラッドの剣がシェリルに襲いかかるも赤子の手を捻るかのように片手で軽々といなされてしまう。格が違う。


「やめだ。今の実力はよくわかった。二人とも、鍛錬を怠るな。明日からも覚悟しておけ。」


もう言葉はなかった。悔しくて言い訳もできなかったが、もう清々しく感じるくらい手も足も出なかった。


それから、実戦的なことはシェリル、座学的なことは隊長やアリアが二人を指導していた。朝から晩まで厳しい訓練が続いた。学院とは違う、超実戦的訓練とも言えるリアルな訓練が毎日行われる。シェリル・クラウドという人間の強さは嫌というほどよくわかった。自分たちの今現在の立ち位置がよくわかる。だからこそ、このままでは終われないという思いだけで食らいつく。過信していた自分たちの気持ちをリセットしてくれたシェリルに感謝する。それなりに成果が上がってきている実感があった。が先輩は合格点をくれるわけがない。


訓練は実技だけではない。隊長とアリアさんからアウラリンクについて教わる。

ここでアウラリンクについて解説する。アウラとは個人が持つ、潜在意識、潜在能力のこと。この個人がもつ個性をあらゆる能力に転用する能力をアウラリンクと総称している。戦闘能力や治癒能力、身体能力向上など使い道は様々だ。アウラリンクは個人の潜在意識にアクセスする行為だ。自我を冷静に制御する必要がある。ちなみに学院に入るにはこのアウラを使う素質があるものが選考される。アウラの戦闘転用については大きく3種類がある。アウラを使い近接で戦う第1世代、アウラで遠隔戦闘に特化している第2世代、近接・遠隔ハイブリット型の第3世代とある。これは時代の移り変わりにより進化していて、個人個人で相性がある。ザックは第3世代能力者だ。もちろんこれ以外にも使い方はいろいろある。俺は入庁からいろいろなことを学び、鍛えられ、あっという間に3か月が経過していった。


「あの二人はどうだ?使えそうか?」


「まだまだ力不足です。ですが、驚異的なスピードで成長していることは間違いありませんが・・・。」


「そうか、シェリルが言うのだから間違いないな。なんとか建国祭までには形になったか。一日でも早く戦力になってもらわないとな。」


「だから、まだまだだってば。」


「まあまあ、お前は厳しいから。」


「あなたは優しすぎます。あいつらは少し厳しいくらいでちょうどいいと思われますが。」


「まあ、そう言うなって。素質があるのは間違いない。それを生かすも殺すも俺たちの仕事だからな。あいつらはここに来たんだ。この運命に導かれるように。だったら、俺たちはそれをサポートしてやろうじゃないか。」


翌日。その日は急にやってくる。国防省に評議会から伝令があった。



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