EP:10 西からの使者
——————聖地レグルス大星堂、権力の間にて
「ところで今年残った者たちはどうだ。」
「今年は例年になく6人も残りました。この人手不足には大助かりですが。」
「そんなこと聞いているわけでない。素質のことだ。」
「まだまだ、これからですかね。少しずつ西方大陸への遠征組に入れてみて能力は確認してみますが、やはり素質はかなり高いと思いますが。」
今、評議長の目の前にいるのは世界最高権力者“6顕星”である。この6人がこの世界評議会の中で最も発言力のある権力者であり、女王の側近だ。
「わかった。早くその素質を見極めて例のものか確認しろ。」
評議長は黙ってその場を後にした。
「まったく、あの老いぼれどもめ。好き勝手言うんじゃねーよ。」
「評議長、権力の間はすぐそこです。あまり失言をしないように。」
秘書官が評議長を宥める。
「それはそうと、今年の6人だが・・・。」
「かなりの潜在応力を持っていると思います。特にダリア・ロナは学院時の成績に違わぬ実力の持ち主かと。レムリアの件で上官との衝突はありましたが・・・。」
「ミラーとの件か。報告は受けているが大した話じゃない。むしろ真っすぐでいいじゃないか。バトラー隊長には穏便に済ますよう伝えている。」
「すぐに上官に盾突くのはいかがなものかと思いますが。まあ、こういった仕事です。ある程度は仕方ないかと。」
「なんてことないさ。これから先、まだまだあるさ、こういったことは。」
2人は今年本加入した6人の資料を見ながら話している。
「まずはそのダリアに遠征に行ってもらうかな。」
「それでは早速次回の遠征組の選抜を行いましょう。」
「なんにしてもパシフィス、メラガニア中心だが。レムリアの侵攻を考えるとこっちも留守にするわけにはいかないからな。積極的に新人も選抜することになるな。」
2人は数時間をかけ打ち合わせを行い、遠征組の草案が作られた。
そして、数か月後、最悪の報告が評議会に入ることになる。
☾☾☾
——————一方、別室(新任者控室)
任命式を終えた6人は再び、ここ別室へ戻ってきた。ここで、現地解散する流れだ。
ダリア、フリージア、ローズの3人は早々に帰国の途に就いた。
リアムと俺は控室にてダラダラしていた。その時ブラッドは別件で評議会に所属している父親に呼ばれていた。
その時、後方の扉より只ならぬ“アウラ“を感じた。
後方より入ってきた男たちは徐に施錠する。
「どうも、初めまして。君たちの力の確認に来ました。」
二人の男たちは俺たちの前に立つ。一人は小柄で童顔、もう一人は大柄で体つきのいい男だ。
「誰なんだよ、おめぇは!」
リアムは男たちに対し怒鳴りつける。
「まあ、落ち着け。」
もう一人の男が答える。
「あなたたちはどこのどなたなのですか。」
俺はダメ元で聞いてみる。
「名乗るほどのものではありません。あえて言うのであれば・・・。」
小柄な男がいうと、大柄の男は制止する。
「余計なこと言う必要はない。やるべきことだけをやるだけだ。」
「・・・・・・。」
「今から君たちの力を見せてもらいます。」
「ザック君とリアム君、相手しますよ。」
「・・・・・・・。」
大柄な男はリアムと対峙する。
いきなり大柄の男はリアムに襲いかかる。リアムもそれに合わせてすぐに臨戦態勢に入る。
「ほぉー、さすがに反応してくるか。」
「あんまり、人を見くびるなよ。これでもくらえ!」
リアムもすぐに自らの拳に“アウラ”を込めて攻撃をする。
リアムの連撃は相手の都合など構わず繰り出される。
「よそ見してないでこっちに集中してください。」
気が付くと目の前に相手の刃が目の前まで伸びていた。
それを間一髪交わすがすぐに相手も間合いを詰めてくる。相手のアウラは槍を形成し攻撃態勢に入る。
かなりの手数が俺を襲ってくる。白兎の戦闘能力とは桁違いだ。
しかし俺たちだって一年間、実戦、鍛錬に励んできた。対応できる。
「さすがここまで残った幹部候補生ですね。少々ギアを上げますか。」
この童顔の男はこれまでの攻撃とは違うスピードで攻撃してくる。反発も攻撃を受け、俺はその場に膝をついてしまう。
「もう終わりですか。やはりこの程度なんですね。その程度じゃ、10年前のあなたのお兄さん・・・。」
兄貴の話をされた瞬間の記憶がない。怒りとかそういうものを超越した感情が体の芯から溢れ出てくる。その瞬間、目の前の童顔の男に襲いかかる。もうそこからはどういった攻撃をしたか覚えていない。相手にも相当な攻撃を加えたが倒すには至らなかった。
「ほぉー、感情を力に乗せてくるタイプなんだな・・・。」
童顔の男の顔が歪む。
「いきなりすみません。失礼なこと言って。あなたたちの潜在能力はよくわかりました。ただ、力は正しく使うべきです。そしてあなたのお兄さんのことですが・・・。」
「それはいいだろ。早く俺たちのところに来い。レベルを上げて、確認に来いよ。俺たちが西にいるわけを。」
大柄の男は言う。傍らにはリアムが倒れている。
「西から来た?お前ら、俺たち加盟国に対し白兎を率いて潰しに来てるんだろ。目的は何なんだよ。」
「そうか、わかってないのか。まずは世界の深淵にたどり着くことだ。先入観は捨てろ。いいな。」
「じゃあ、私たちは騒動になる前にこの辺で失礼します。このことは他言無用で。」
童顔の男はその場に転移魔法陣を展開し、消えていった。
その時、サドラーズとブラッドが入ってきた。
「お前らここで何があったんだ。ひどいケガじゃないか。」
他言無用とは言われたが隊長にだけは伝えておこう。その辺も理解してくれるはずだ。
サドラーズに事の経緯を説明した。
「わかった。どこの誰だかわからないが、手がかりは西にいるといったんだな。」
「はい。」
「とりあえず、このことは誰にも言うな。俺が今後のことは判断する。ケガはリアムとのケンカとでも言っておけ。リアム、お前もわかったな。」
納得はできなかったが、まあ事情は理解できる。いきなり正体不明の人物に襲われ、しかもそいつらが西から来たなんてことがわかれば、一気に評議会は混乱する。
「とりあえず帰るわ。ザック、言うも言わないもどうでもいいが、俺たちはあいつらをぶっ潰すまで死ねねーぞ。」
悔しさからか顔が紅潮している。プライドが高いリアムのことだ、悔しかったに違いない。
その場から黙って出て行ってしまった。
そして俺たちはエンバーに帰還した。
「もう!任命式当日にいきなりケンカなんて、もう評議会の一員として任命されたんですからもう少し自覚してくださいよ。」
俺はケンカなんてしてないのによりによってアリアさんに何でこんなこと言われなきゃいけないんだよ。
初日から俺の運は終わってる。
ブラッドは大きく頷き、ニヤつきながら俺の肩を叩く。
「アリアさんはケンカするようなガキは好みじゃないと思うぞ。後は任せろ。」
何をだよ!こいつは完全に俺のことをバカにしてる。
——————その日の夜
「なんだよ、こんな時間に話って。」
俺はシシバさんを呼び出していた。
「今日、西から来た謎の男たちの件は聞いてますよね。」
「聞いてるさ。仕方ない、経験の差だ。」
「確かに経験の差はあったかもしれませんが圧倒的な力の差を感じました。」
俺は続ける。
「俺・・・俺は全く歯が立ちませんでした。」
悔しすぎる感情に無意識に目から涙が出ていた。
「そう、慌てるなって・・・しかしな、お前の気持ちに答えてやらんこともない。覚悟はあるのか。」
いつもお茶らけているシシバが真っすぐに語りかけてくる。そしてこう切り出す。
「覚悟。この言葉に向き合うってことは死が隣り合わせにあるってことだ。俺たちはそうゆう立場にある。」
シシバの言葉に俺は心が振るわされる。それは恐怖ではない。それを乗り越えた未知の感情だ。そして俺はこう答える。
「よろしくお願いします。」
「よし!明日から始めよう。ブラッドも連れてこい。」
覚悟は決まった。
この後、ブラッドに声を掛けよう。どうせ、悪態をつかれるに決まっているが。
でも俺たちは強くならないといけない。




