EP:9 任命式
いよいよザックたち6人は世界評議会に正式に任命されることになり、新たなる真実を伝えられることになります。
この仕事に着任してから無我夢中に任務つき、またシシバ、シェリルとの厳しい鍛錬も続いていた。
鍛錬といってもシシバとシェリルとの実戦することだった。何度挑んでも適わない。彼らは肩で息することでもなく余裕で俺たちを相手している。
「イヤー、慌てるなよ。強くなりつつあるよ。」
シシバは表情を変えて続ける。
「ただ、アウラを高めて闇雲に攻撃しても限界があるぞ。力を一点に集中するように・・・。まっ、慌てるな。じっくり行こう。」
目の前にいる二人に少しでも近づきたい。その思いだけで厳しい鍛錬、任務をこなした。
そして1年の任務を乗り換えたものは改めて正式に世界評議会の認める国務省国防省員となる。
言わば今は仮加入状態だ。
明日、その日を迎える。聖地レグルスにてその任命式が行われる。なんてことはない。隊長と行って、正式に任命書が授与される。軽く考えていた俺たち(おそらくブラッドも何も考えていない)は聖地レグルスにてまた、新たな世界の真実を知ることになり、もう引き返せない状況に追い込まれていく。
翌日
「おーい、ザック、ブラッド、準備できてるか。レグルスに向かうぞ。アリアー転移魔法陣の準備を頼む。」
サドラーズが声をかける。
「承知しました。外で準備しておきます。」
アリアは魔法陣の準備のため出ていった。
俺たちはエンバー国務省の正装であるジャケットを着用し、準備した。
「よし、向かうぞ。」
転移魔法陣にてパシフィス北部、聖地レグルスにある世界評議会本部へ向かう。
聖地レグルスには今日、正式に世界評議会に加入し、各国の国務省国防省員となる6人が集まっていた。
——————聖地レグルス大星堂内控室
各国の隊長が評議長の招集で集められていた。
カーリアン・バトラー 第1国パシフィス国防省長官(特防隊隊長)
ジェネラス・イニエスタ 第2国メラガニア国防省長官(特防隊隊長)
ファビュラス・ラ・フィン 第3国レムリア国防省長官(特防隊隊長)
ウィスカー・ガードン 第4国ヴァナヘイム国防省兼科学省長官(特防隊隊長)欠席
ランド・クライン 第5国アースガルズ国防省長官(特防隊隊長)
サドラーズ 第6国エンバー国防省長官(特防隊隊長)
「今年は6人も残るなんてさすがですね、皆さん。例年国防省への新人加入はなく人手不足だった。彼らにはこれから即戦力として頑張ってもらいましょう。ここに引き寄せられてきた運命を受け入れてもらいますか。」
評議長が続ける。
「今日、彼らには任務の全容を話します。一刻も早くやらなければならないこともあるので。動き出している力もある。」
「それはそうと最近各国への侵攻において敵数が増えている。」
バトラーは続ける。
「今までのように限定的ではなく西への遠征は増やすべきでは。」
「そう。その通り。なかなか許可が出ないので、こちらで動くしかないですね。まあ、大丈夫でしょう。」
評議長は楽観的に答える。
——————一方別室(新任者控室)
「よう、ザック、よくあの落ちこぼれがここまで残れたもんだな。」
リアム・アヴァテラ 第5国アースガルズ所属 幼少期よりアースガルズで育ち、詳しい出生は不明。誰にでも好戦的で学院の頃からの悪名高い。
「相変わらず、よく喋るな、リアム。落ちこぼれって、お前もだろ。俺以外全員凡人なんだから。」
ブラッド・メネシス 第6国エンバー所属 親は世界評議会の幹部。とある理由から里親に出され、エンバーで育つ。プライドが高く、自信家。
「隊長が言うように男って、低知能そして野蛮ですね。少し静かにできませんか。」
フリージア・メーネ 第3国レムリア所属 幼少期よりファビュラスたちに大切に育てられる。
「・・・・・いつまでここにいればいいの・・・。」
ローズ・ディアーナ 第2国メラガニア所属 幼少期よりメラガニアで育ち国務庁入り。普段は周りに心を開かず、おとなしい性格。
「あなたち少しはおとなしくローズみたいに座っていられないの。それで国防の任務が務まるわけ?」
ダリア・ロナ 第1国パシフィス所属 学院を首席で卒院し、国務庁へ。プライドは高いがそれに見合った実力の持ち主。
これが俺の同期の5人だ。まあ、ここまで残れるような人間にまともな奴なんていない。変わり者ばかりだ。
その時、世界評議会、評議長の秘書官が入ってきた。
「あなたたち、これより任命式および評議長からの通達があるので移動します。着いてきなさい。」
俺たちは秘書官に案内され、聖地レグルス大星堂内大広間に通される。
そこには俺たちの隊長を含め、大幹部たちが揃っていた。
「それでは任命式を始めよう。」
評議長が口を開く。見た目からして相当若いのでは。シシバさんと同じくらいか。
任命式はなんてことない。首席のダリアが代表して着任の宣誓を行い、世界評議会認定の証のバッジをもらう、それだけ。本題はここからだった。
「よし!任命式も終わったところで君たちにはこれからの任務について説明していこう。」
評議長の説明に対し、リアムがしゃべり始める。
「任務も何も今まで1年間もやってきたからわかってるぜ。」
リアムが言うと評議長はこう答える。
「今までの任務も非常に重要ではある。しかしあれはあくまでも君たちの力を試す言わばテストだ。」
評議長は続ける。
「国防も大切だが守ってばかりいても今の現状は打破できない。そこでだ。」
ここで秘書官より、6人に資料が配られる。
「それに目を通してほしい。」
表紙をめくるとそこには1枚の男の写真。そして、そこにはこう書かれていた。
“世界特別指名手配”“世界的大犯罪者集団の指導者”と過激な言葉が。
「そう、我々はその男を捕らえてくること。それが真の任務だ。世界評議会が特別指名手配犯として追っている男。エンディ。」
初めて見る、その手配書に写っているエンディという男。資料によるとこう記載されている。
エンディ 世界評議会特別指名手配犯
罪状
・女王誘拐
・世界評議会施設の襲撃、破壊行為40回以上
・東方諸国の実効支配及び加盟国の壊滅1国
・傷害罪、件数確認できず
「かつて女王の誘拐を画策し実行した男。反世界評議会集団を組織し、世界転覆を目論んでいる世界的大犯罪者。女王の誘拐後、幾度となく争いが行われ、世界評議会の手によって女王は保護されたが現在までエンディの捕縛には至っていない。」続ける。
「今もなお、西方大陸を占拠し、加盟国への侵攻を指導していると思われる。
加盟国への破壊活動、施設の破壊活動など行った犯罪歴は無数にある。」
激しい活字が躍っている。あまりにも刺激が強すぎる。
要は評議会に真正面から向かってくる反逆者というわけだ。今まで、漠然と西からくる白兎から国を守っていたわけだがあまりにも唐突に根源を突きつけられる。
これを知ってしまったらもう引き返せないという気持ちで押し潰されそうになる。
「この男を捕縛することが我々の最大の使命というわけだ。現在、不定期に我々が選抜した人員による西方大陸への遠征を行っているが、先日のレムリアへの侵攻をみると相手も侵攻勢力を拡大してきている。防戦一方ではいつまでたってもこの問題は解決しない。一刻も早くこちらも動き出す必要がある。まあ、お上への上申も必要だが・・・。」
評議長は続ける。
「そこで、今後は6国の加盟国より選抜し、西への遠征を増やしていく必要がある。」
評議長の説明が終わり、俺は説明できない感情に襲われていた。これは恐怖の類ではない。
とにかく、西への遠征に選ばれれば、この世界の状況がわかるかもしれない。そうすれば、兄貴にも。
もう俺たち6人は誰にも知らされていない世界の真実を知ってしまったわけだ。
もう引き返すことはできない。
「君たちの活躍には期待している。」
評議長は俺たちの目を見て締めくくった。




