あの子は年下の男の子
パレードの途中トイレに行きたくなったユリナンテは、1人で城の中を駆け回り、勘だけでトイレに行き着いたものの帰り道がわからなくなり、
城内をさまよっていた。
「……ママ」ユリナンテは、泣きべそかきながら、母エミリアを探す。
「どうされましたか?」ユリナンテのうしろから声がした。
振り返るとユリナンテと歳が変わらなさそうな少年が立っていた。
「これをお使いください。お嬢さん」少年はユリナンテにハンカチを手渡し涙を拭う。「貴女のようなお嬢さんに涙は似合いませんよ」「ありがとう。あなたは、だぁれ?」少年は、身だしなみを整え貴族の格式高い挨拶をする。「失礼しました。僕……私は帝国書記長アルストリア・フォン・グラゼロの嫡子であるエスペル・グラゼロと申します」
「エッ!あのっ……えぇ」ユリナンテはビックリして目をパチクリさせる。
エスペルは、にっこり微笑むとユリナンテに手を差し出す。「どうかしましたか?」
「ううん。なんでもないの。私は、ユリナンテ・ウィシュターニアです……わ」ユリナンテはぎこちなくスカートの裾を上げる。
「ウィシュターニア公家ですか?」「ママ……お母様が公女様なの」「なんと、女傑公女エミリア様のご息女でしたか!」「うん」ユリナンテは嬉しそうに頷く。
エスペルは、ユリナンテの手を取りテラスまでエスコートする。
「お手をどうぞ」エスペルが手を差し出す。ユリナンテは頬を赤らめる。「ありがとう。エスペルくん」ユリナンテは、エスペルの手を取りテラスへ出る。
「淑女をエスコートするのは帝国貴族の役目だと父から教わりましたので当然ですよ」「エスペルくんっていくつなの?」
「私ですか?先月4歳になりました」
「なら私の方がお姉さんなの!」ユリナンテはエスペルの手から離れ嬉しそうにステップを踏む。
「こらっ!ユリナンテ!」エミリアが怒りながら、こちらに向かってくる。
「ママ!」「勝手に抜け出さないの」
「ごめんなさい。エスペルくんがエスコートしてくれたの」
「エスペル?貴方は確かアルの子息でしたか?娘がお世話になったようで、感謝致しますわエスペルくん」エミリアはエスペルに微笑む。
「公女閣下に拝謁できて光栄の至です」
「父君にして利発そうですね。しかし女性に興味を持つのは早いですよ」
「べっ……べつぼ、僕……私は」エスペルは顔を真っ赤にして慌てる。
「まぁ貴方の父も子供の頃はそんな感じでしたわ」エミリアは優しく笑う。
「エスペルくん!またね!」ユリナンテはエスペルに向かって手を振る。
「はい。ユリナンテ殿」エスペルも手を振り返す。
「父君が心配するでしょう貴方もパレードに戻るのですよ」「はっ、はいっ!」エスペルは慌てて城の中に駆け出す。
「ユリナンテ」手を繋ぐエミリアがユリナンテに優しく話しかける。「なぁに?ママ」ユリナンテはエミリアに体を向ける。
「もしかするとあの子は、アナタのフィランセになるかもしれませんね」
ユリナンテは難しい顔をする。
「フィアンセって美味しいの?」「それは、アナタ次第ですよ」ユリナンテの頭を撫でながら、エミリアは優しく微笑んだ。




