英雄達の行進
「お馬さんパカパカ!!」
公女エミリアの腕の中でお子様三人衆筆頭のビオーネが、俄然に広がる光景に興奮していた。「流石は、帝国が誇る英雄達ですね。勇ましい限りです」軍事国家グラディウス帝国の摂政を務めるイルマ・ドラコニフ・グラディウス・スタンベルが、帝城のテラス席から見下ろしながら微笑む。今日は、帝国の主力である各師団、近衛騎士団、公軍、貴族達の大規模なパレード【帝国馬揃え】がおこなわれている。先頭のガルム参謀総長率いる第一師団から師団の後ろから続いていく各師団が綺麗に等間隔に隊列を組み、同じ方向に一糸乱れぬ足並みで進んでいく。「この大陸において、これほどの大軍は存在しないでしょう。まさに帝国の強さを象徴する行進ですね」エミリアは、ビオーネを抱っこしたままイルマの隣に腰掛けて、眼下に広がるパレードを眺めていた。
「……ですがこれ程の英雄達を私は、戦地に送らなければならないのですね」イルマは、顔を伏せる。するとユリナンテがイルマに駆け寄ってくる。「お姉ちゃん悲しいの?」ユリナンテが頭を撫でる。
「こら!ユリナンテ、イルマ陛下に失礼ですよ」「よいのですよ。公女エミリア。慰めてくれてありがとう」イルマはユリナンテに笑顔を向けた。「お姉ちゃん元気出して!」ユリナンテは、イルマの頭を背伸びして撫でた。「ふふふ、ありがとう」エミリアが微笑んむ。「ママ!あれなぁに?」興奮して指さすユリウスのその先には、赤地に茨薔薇の軍旗を掲げる鉄の車が連隊を組んでいた。「あれは、アリア公女が開発した戦車っていう乗り物よ。馬より速くて強いのです」「ふーん。おっきいねー」ユリウスは、目を輝かせている。「まだ戦線には出せない代物と聞いています。あれが、戦線に投入されれば戦況は、大きく変わるでしょうね」
イルマは、アリエルの言葉に耳を傾ける。「ねえ、イルマお姉ちゃん、あれってみんなアリアお姉ちゃんが作ったの?」ユリウスが尋ねる。「そうですよ」イルマは笑顔で答える。
「おねーちゃんすごーい!!」ユリウスとユリナンテも目を輝かせる。リターニア公率いる戦車連隊の後方からは、今度は黒地に獣の牙の軍旗を掲げるボルケーニア公軍である。「ボルケーニア公も流石ですね」「ママ、あれなぁに?」ユリウスが無邪気に指をさす。「あれは、ボルケーニア公軍の旗よ。獣のように力強いわね」
ボルケーニア公は、勇猛果敢な指揮官として名高い。その武勇は他国にも鳴り響いている。「ほら、あの方が、母の従弟にあたるゼフ・ボルケーニア公ですよユリウス」視線の方向には一際大きな馬に跨る水牛の兜を被った男の姿があった。「ママ、あのおじちゃん強い?」
「ええ。とてもお強い方よ」
ユリウスは、ゼフの姿に目を輝かせる。続いて行進してきたのは、青地に馬の軍旗を掲げるバルトーニア公軍である。「ママ、あのおじちゃんも強い?」
「ええ。とてもお強い方よ。母の伯父にあたるメイビス・バルトーニア公です。そして帝国軍が誇る騎馬隊があの鉄騎隊なのですよ」バルトーニア公は、優雅に銀の鬣の馬に跨り行進する。そして、最後に黄色地に剣の軍旗を掲げ4つの隊列を組む「ウィシュターニア公軍だ!!」ユリウスは、興奮した声を上げる。「あれは……説明無用ですね。我らがウィシュターニア公軍です」
4人の大隊長を先頭にウィシュターニア公であるウィズが白馬に跨り行進する。「ママ!!皆かっこいい!!」ビオーネが公軍を指差し興奮気味にはしゃぐ。「そうね。皆、カッコいいわね」イルマが優しく微笑む。「……あれ?ユリナンテは?」エミリアが周りを見渡すも姿がない。「うんとね!おトイレ行くって言ってた」ビオーネが元気よく答えた。「あの子、1人で大丈夫でしょうか」アリエルの不安な表情をして心配する。




