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ファルコ伯爵

やばい、これは危険だ。アリエルの兄であるファルコ・フォン・バルベルデ伯爵から呼び出されている。バルベルデ伯爵家は、西部地方の貴族で一様はウィシュターニア公家の寄子にあたる。

まさか殺しはしないだろうが、やばい事には変わりない。必ず裏がある。「旦那様、先方からのお話では、ご家族を連れて来るようにとの事でしたが……」

「ああ」

クレアもおかしいと思っている。おそらくアリエルとの事だろう……アリエルもその辺はわかっているのだろう。連れて行く事に異論はないようだ。

「そうだ、ビオーネを連れていこう」

「ビオーネちゃんをですか?」

「流石に子供の前で殺しはしないだろ?」「まあ、そうですよね……」

「それにいざという時の為だ」

「わかりました。ではお連れいたします」

さてどうなるか……。とりあえず朝食は食べないとな……。

食事を済ませて準備をしていると、すぐに迎えの馬車が到着したようだ。クレア達と共に玄関で待っていたが、来たのが執事ではなくて女の騎士だった。そして御者台にはアリエルの兄ファルコ伯爵が立っていた。俺を睨みつけて、口はへの字だ。

「久しぶりだな、アリエル」

「ええ……お久しぶりですね……お兄様……」

なんだこの気まずい感じは……。以前はこんな風ではなかったのに……。兄妹の仲が良さそうな会話は聞けないのだろうか?馬車に乗ろうとしたら、ファルコ伯爵から話しかけられた。「久しいなウィシュターニア公。見ないうちにデカくなったな」ファルコ伯爵は、相変わらずイカつい顔をしている。

「は、はいファルコ伯爵もお変わりなく……」「クレア嬢もお変わりなく」馬車では、ファルコ伯爵の前に座る。無言の圧が凄い……。

ビオーネは、キャキャとクレアの膝元ではしゃいでいる。

「このおじさん変な顔〜!!」やめろ!!あまり刺激するな!ウィズは、ビオーネの口にお菓子を突っ込んで黙らせる。

「美味しーい!!」喜んでるから悪ではない。「そ、それにしても護衛の方が女性の騎士とは珍しいですな!」馬車の外で馬に乗る騎士を見る。

「あれは、私の娘だ」なんと!

「ウィズくんは、な〜んも知らないんだから」知っていたなら教えろよ。「あとでちゃんと挨拶させよう……」ファルコ伯爵はビオーネを見つめている。「私は、ファルコ・フォン・バルベルデ。アリエルの兄だ。以後よろしく頼む」

「ビオーネです!」ビオーネは、お菓子を食べながら挨拶した。

「そうか」ファルコ伯爵はニヤけながら答えなかった。なんなんだ……。この顔が怖い……。そうこうしていると馬車が停まった。着いたようだ。どうやらアリエルの実家のようだ。ウィズはいつ来ても立派な館だなと思う。馬車から降りるとファルコ伯爵は、騎士と共に館に入った。そのまま客間に案内される。クレアとビオーネは、別の部屋で待機している。ソファーに座り待っていると、アリエルの母がやって来た。「お初にお目にかかります。アリエルの母ローレルでございます」

「ウィズ・フォン・アルベルト・ウィシュターニアです」ウィズは立ち上がり頭を下げる。そしてソファーに座るように促された。

「この度はわざわざお越しいただきありがとうございます」

ファルコ伯爵も座っていたが、無言だ……。そして俺の横にはアリエルが座った。反対側には、ファルコ伯爵の奥方が座っている。

「それでご用件はかわかってらっしゃいますね?」アリエルの母である、ローレルが聞いてきた。アリエルの兄であるファルコ伯爵は、俺を睨みつけている。

「はい、今回の事ですと、私とアリエル嬢との結婚を認めてもらいたくて参上いたしました」

「私は認めないぞ!!君にはクレア嬢が、いるではないか!」ファルコ伯爵が大きな声を出した。俺は驚いて顔を向けると、ファルコ伯爵の怒りに満ちた表情があった。やはり、怒ってらっしゃるようだ。ローレルは困った顔をしているが何も言わない。

「兄様……」アリエルも困った顔をして兄を見るが何も言うつもりはないようだ。「お兄様、ウィシュターニア公は、わたくしの結婚相手に相応しい方ですわ」「なんだと!!」ファルコ伯爵は声を荒げる。「ウィズくんと一緒になれと言ったのはお兄様ではありませんか!」アリエルも言い返す。

「それは……そうだが……」「ウィズくんが好きなんだから仕方ないじゃない!」「お前……わかってて言っているだろ?」ファルコ伯爵はアリエルを睨んだ。「兄様……」アリエルは悲しそうにファルコ伯爵を見る。

「はぁ……もういい」ファルコ伯爵は大きなため息をつくと、席を立った。「兄様!!」アリエルも立ち上がるが、そのまま出て行ってしまった。

残された俺達は気まずい雰囲気の中、ローレルに話しかけたが、無言で下を向かれてしまったので俺も黙ることにした。しかし数分後にこの沈黙を破ったのは、ローレルだった。「あの!」俺とローレルは見ると目が合う。

「あの……ウィシュターニア公は……その……本当にクレア嬢が好きなのですか?」突然の質問だった。クレアが好きか?好きに決まっている!!「もちろんです」俺は即答した。するとローレル夫人の表情が緩むのがわかった。

「そうですか……」ローレルは小さく微笑むと再び下を向いてしまった。一体何が言いたかったのだろうか?それから一時間ほど経ってアリエルも戻ってきたので、詳しい話をすることになった。今回の婚約の件は全てファルコ伯爵が言い出したらしい。ファルコ伯爵は、俺とクレアの仲を引き裂きたいようだ。

「兄様は、わたくしが結婚する事に反対なのですか?」アリエルは悲しそうに聞くが、ローレルは黙ってしまった。ローレルも本心では、認めたいと思っているが、娘が選んだ相手だ……簡単に賛成するわけにもいかないのだろう……。「とりあえず私の要件を伝えないとな……」俺はそう言うと、ローレルを見る。「私がここに来たのはアリエル嬢との婚約を認めてもらうためだ」俺の言葉にアリエルは驚いているようだ。ファルコ伯爵も驚いているが、何も言わない。クレア達は別室で待機しているためこの場にはいない。

俺は、真っ直ぐローレルを見て言った。ローレルはしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。

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